高校進学に比べて、大学進学のときはあっさりというかのんきだったですね。東京大学を受験したんですが、特に理由はなく、東京にいたからわざわざ地方へ行くこともないし、実家から通えるからいいかなと思ったくらいです。東京大学ひとつだけ受けて、ダメだったら大学進学はやめて、実家の酒屋を継ぐ道もあるかなと思っていましたから。それで別に悲壮感もなく、東京大学の理科2類を受けてみたら、たまたま運よく受かってしまった。
1、2年は教養課程で全般的に学びますが、3年生になるときに進路選択を迫られます。まず理学部か工学部か、当然理学部を選択するわけですけど、その中でも純粋物理学とか地球物理学とか天文学とかいろいろな学科に分かれてるんですね。まあそれほど強いこだわりもなく、どれでもよかったんですが、気象観測をしていた経験があったからでしょうかね、地球物理学科を選びました。同じ学年で入ったのが13人くらいでした。
地球物理学を選んだ強い理由は特にこれといってなく、自然が好き、自然現象のことを研究してみたいと思ったくらいですかね。同級生の中には物理学科に進む人が数としては多かったのかな。でも物理や化学ってなんとなく実験室に閉じこもって朝から晩まで実験をやるっていうイメージがあって。そういうのは嫌だっていうのがあったのかもしれないです。
その点、地球物理学は、フィールドワーク主体であちこち観測に行ったり、野山を駆け巡るというか、そういうのがオープンで楽しいと思ったのでしょうね。高校のときの地学部が楽しかったのが強い印象として残っていたのかもしれません。
地球物理学に入って3〜4年して大学院に進むときに、今度は地震学、地球力学、気象学、地球電磁気学といった教室を選ばないといけないんです。
大学で学ぶ地球物理学は地球を対象にする学問って感じでまだ漠然としているんですね。地震学から海洋学から、いろんなものをひととおり、広く浅く学びます。そこから大学院に進学するときに、自分の好きな専門学科を選ぶということになるんです。
その当時、実は気象学に進もうと思ってたんです。気象が一番人気があったんですよ。気象とか海洋ってのは、なんとなく学問的だったんです。流体力学の方程式とかで、いわゆる天気予報をするなど、非常にスマートに見えたんですね。私の同級生でも気象教室を志望する人が多かったです。でもそのときみんなと同じことをやってもしょうがないかなっていう、ちょっと反骨心みたいなのがあったんですよね。
一方、地震などは、地球の内部で起こることですからなんとなく地味な感じがして、人気がなかったんです。当時は世の中から注目もされていませんでしたし、地球物理学科の中でも一番地味な学問だったんですよね。だからあんまり人がやらないところに行くのもいいんじゃないかって思ったんです。
もちろん興味もありましたよ。要するに地震って地下で起こる現象で、地球の中を地震の波が伝わってくるのをキャッチして、地球の中の構造がどうなっているのかを調べるという非常にアカデミックで地味な学問が地震学だったんですね。そういう、地球の内部で起こっている観測データをコツコツためて、地震のメカニズムを解析するというのが、推理小説じゃないですけど謎解きみたいで楽しそうだと思ったんですね。地震教室に入ってみたら同級生は私のほかにひとりしかいませんでした。だから、最初から「何が何でも地震をやりたい」といった強い希望や志があって地震の方向に進んできたわけじゃないんですよ。
|