やりがいのある仕事と高い年収。周りからは若くして最高の職業人生を送っているかのようにみえた。しかし、やりがいを感じれば感じるほど、物足りなさもより強くなっていった。
「私は“仕事は人の生活を変えることのできる道具”だと思っているのですが、そのためにはよりエンドユーザーに近い仕事、直接消費者の役に立てる仕事でなければなりません。転職した会社は、確かに1社目よりは顧客との距離は縮まりましたが、所詮は対企業。理想にはほど遠かったんです」
確かに社内からは高く評価してもらっている。しかし、その評価ほどには自分の仕事が社会で生活する人びとに直接役立っているとは思えない。むしろ「企業ため」が最優先になり、「生活する人のため」とはほとんど考えられない。さらに自分の仕事が自分の生活ともあまりにもかけ離れている──。そんな思いが徐々に宮崎さんの中で大きくなっていった。
「仕事のやりがいが大きいからこそ、もっと消費者に近づきたいという思いも強くなっていったんです。仕事中はとてもやりがいを感じているのですが、終業後、一歩会社を出ると自分の携わった仕事が全く見えないし、周りの知人も私がどんな仕事をしているのか全く理解できませんでした。そういった、やりがいと物足りなさの葛藤が日を追うごとに強くなっていったんです」
転職してちょうど1年後、プロジェクトの終了をきっかけに辞表を提出した。今度こそより消費者に近い仕事を目指して。
「そもそも、最初のソフトウェア開発会社に在籍していたときから、次の転職先は異業種にしようと考えていました。しかしその思いにまだ確信が持てなかったので、知人に誘われるまま、同じような業種・職種に転職したんです。つまり、その確信が持てたら即辞めようという転職ありきの転職だったんです。そして1年後に、我慢せずに本当に自分がやりたいこと、“人びとの生活を直接変えることができる仕事”に取り組みたいという思いに確信がもてたので、退職を決意したというわけです」 |