カナダで10年ほど生活した後、家庭の事情で2008年4月に帰国。これまでの経験を生かしてフレンチレストランに転職した。
しかしそこでは永島さんの実績は認められなかった。
「日本人は固定観念というか、先入観が強くて、料理の世界では『フランス帰りならいいシェフだけど、カナダだったらそうでもない』というイメージがあるんです。だからカナダのフレンチレストランで料理長を務めていて、管理職としてもレストランを繁盛させた実績をもつ僕よりも、フランスで皿洗いしかしていなかったような人の方が店では重用されていました」
現場で働いていても、自分自身を認めてもらえない。どんなにおいしい料理を作っても、これがカナダ式だという色眼鏡で見られてしまい、正当に評価されない。
また、働き方のあまりの違いに戸惑った。日本の飲食業はとにかく拘束時間が長い。朝6時半に起きて、夜の1時過ぎに帰宅するという生活を毎日繰り返していた。カナダではその半分以下だった。
「若ければまだ耐えられたかもしれないけど、30代後半で、しかも料理長まで経験しているのに、また下っ端の生活に戻るということにも抵抗感がありました」
そのほかにもあまりにも理不尽なことが積み重なり(※2)、ストレスが限界に達した半年後の2008年11月、永島さんはレストランを退職(※3)した。もちろん、行く先など決まってはいなかった。 |