キャリア&転職研究室|魂の仕事人|第3回 野田義治さん-その2-応援してくれる人、スタッフ、そしてし…

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魂の仕事人 魂の仕事人 第3回 其の二 photo
堀江しのぶが亡くなったときは つらさのあまり会社を畳もうと思った でも応援してくれる人、スタッフ、そしてしのぶのためにも続けようと心に決めた
 
7年にわたっていしだあゆみさんの担当を勤め上げた後、いよいよイエローキャブを立ち上げた野田社長。しかし設立当初は収入もなく、不安の日々。そしてこれからというときの堀江しのぶさんの死。彼女と共に頑張ってきた野田社長はひどい喪失感で働く気力を失ってしまう──。
  サンズエンタテインメント代表取締役 野田 義治
 
不安とともにスタートした新会社 考えて動き回ることで突破口が開けた
 

 1980年にイエローキャブを立ち上げたばかりのころは毎日必死でした。どうすればこの業界で生き残っていけるのか脳みそを絞るようにして考えていましたが、展望はまるでなし。机の前でうなってるばかりでもしょうがないので、とにかく毎日つてをたどって売り込みに動き回っていました。でも何の実績もない弱小プロダクションに仕事をくれるところはなく、いつも門前払い。当然収入はゼロなので、資金もみるみるうちになくなっていく。同時に自信もすっかりなくしてしまい、毎日これからどうなってしまうんだろうと不安で眠れない夜を過ごしていました。

 でも動き回って人に会っているうちに、少しずつ仕事がもらえるようになってきました。そしてあるとき雑誌に売り込みをかけることを思いついたのです。当時まだグラビアページに水着のアイドルを乗せている雑誌は数えるほどしかなかったので、そこに目をつけました。いきなりメジャー誌ではムリだから、創刊間もないマイナー誌から攻めていき、そこで人気が出て部数も伸びたらメジャー誌へというふうにステップアップしていきました。

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 売り込んだタレントは堀江しのぶ。イエローキャブを設立して、新人を発掘したいと考えていろいろな場所へ足を運んでいたところ知人に紹介されたコでした。胸のデカさより明るくて性格がよさそうなところが気に入り、彼女自身の「やりたい」という意志を確かめてからすぐに御両親に会いに行きました。高校を卒業してからの芸能活動を承諾していただくためです。未成年の娘さんを預かるわけですから、こちらも真剣。自分がどんな人間で、どんなことができて、これからどんなビジネスをやっていくつもりか熱意を持ってお話したところ、親御さんも分かってくれて私に預けてくれました。

 当時小さな会社を立ち上げたばかりで海のものとも山のものともわからない私を信じてくれたんだから、その思いに応える意味でも私は「しのぶを人気タレントにするために頑張らなければ」と思ったし、彼女も精一杯努力してくれた。私が組んだ超ハードスケジュールにもイヤな顔ひとつせずについてきてくれました。しのぶはとても素直で、頑張り屋で芯の強い、人間的にとてもいいコだったんです。ファンだけではなく、スタッフや裏方の人間にまでとても愛されていました。

これからというときに亡くなった堀江しのぶ 極限のつらさで一時は会社を畳もうとも……
 
 そのしのぶがガンに蝕まれていると医師に告げられたときには、文字通り頭の中が真っ白になりました。会社を大きくしていこうと懸命に一緒に戦ってきた、いわば同志でしたから。志半ばでというのがなんともやりきれなくて……。しのぶの死は、私の人生の中で一番つらい出来事です。このつらさは例えようがありません。会社をつぶす一万倍……いやそれ以上につらい。このつらさに比べたらイエローキャブの社長を辞任したことなんて、蚊に刺されたようなものです。(注1)会社を不本意な形で辞めたり、つぶしたりしたって、今まで以上に頑張れば何度でも立ち直れるけど、人、それも愛する同志の死というものは頑張ってもどうしようもないんです。代わってやることもできない。

 注1 2004年11月イエローキャブの代表取締役を辞任。一部報道では「株主と経営方針をめぐって対立し、事実上の解任」「イエローキャブ分裂か?」などのニュースも流れたが、野田社長は自身のブログ「巨乳ビジネス概論」2004年12月4日の日記で「内紛だ、タレントの分裂だ、クーデターだとか、いろいろ騒がれましたが、そんなことではなく、ただ私がやめただけのこと」と語っている

 
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タイミング的にもまさにこれからというときでした。しのぶは企業CMに起用された初のグラビアアイドルだったんです。当時はどんな会社でもグラビアアイドルをCMに使うなんて社内的にありえないと言われていました。これも彼女の人間的な魅力を企業側が理解したからこそです。そんな前例のなかったことを彼女と私でやり遂げたり、さらにこれまでの活躍を見てくださっていた人からドラマやバラエティの仕事が入り始めたころでした。

業界で私よりつらく悲しい気持ちを味わった人はいないでしょう。とにかくひどいショックで何もできない状態だったので、葬式の準備などもまともにできなかったんですが、いろんな人が支えてくれたおかげでちゃんと送ってやることができました。今でもその人たちには頭が上がりません。

 

 しのぶが亡くなってしばらくはタレントを育ててみようなどという気はおろか、何もやる気がしませんでした。会社も畳むつもりでした。普段の私なら済んだことをクヨクヨ考えるより次のことを懸命に考えるんですが、このときばかりはどうしようもなかったんです。でも、しのぶを応援してくれた人、しのぶと一緒に戦ってきた私を応援してくれる人がいる。そして私を信じてついてきてくれるスタッフがいる。なにより最後まで「仕事がしたい」と言いながら息を引き取ったしのぶがこの状況を望んでいるわけがないと気づいたとき、もう一度立ち上がろうという気力がわいてきたんです。そうすることが、今まで支えてくれた人たち、そしてしのぶの恩に報いることだと。だから今の私にとって、この仕事を続けることが恩返しなんです。まだ返しきれてないですけどね。

失意の底から這い上がった野田社長は新しいタレントを次々と発掘していった。見つけだすだけでなくタレントひとりひとりに適したプロモーションを考え、そのためのレッスンの手配や準備と、再び仕事は多忙を極めていった。そしていつしか「人気巨乳アイドルといえばイエローキャブ」と世間に認知されるまでにブランド力を高めていった。その裏には野田社長の徹底したプロモーション戦略とタレント、マネジャー教育があった。
売れるタレントなんて氷山の一角 タレントもマネジャーも教育が大事
 
 しのぶの死からなんとか立ち直り、かとうれいこや羽田美智子といった才能と巡り合ったことで、今後もなんとかまたやっていけるかもしれないとの希望を得られました。彼女達にも売れるポイントがあって、それぞれが違ったイイ部分を持っていたので売り方を変えました。かとうれいこはイエローキャブでグラビア強化、羽田美智子はサンズで女優路線といったふうに。その後も一から発掘したり、知り合いの事務所から「ウチじゃ無理だから」と頼まれる形で続々と女の子が加入してきました。ちなみに、今ウチで売れてるコはすべて後者です。どんなイモねぇちゃんでも料理の仕方次第ではごちそうになる。そこが芸能マネジャーの腕の見せ所です。

 タレントは見つけだすのと同じくらい育てるのが難しい。やり甲斐はあるけどいつも大変です。このコにとってどんな活動、売り出し方がベストなのか……。数学みたいにひとつの正解があるわけじゃないですからね。

 
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 イエローキャブ時代、次々に人気アイドルを輩出していたように見えて、その影では消えていくコがたくさんいました。売れるコなんて氷山のほんの一角ですよ。努力してもそれが結果に結びつかない場合も少なくない。1〜2年かけて踊りや歌のレッスン受けて、色々なオーディションにチャレンジして、それでも売れないコがたくさんいるんです。そんな頑張っているコに「もうウチでアイドルを目指すのはあきらめたほうがいい」と引導を渡すのは本当につらい。今まで信じてついてきてくれたのに申し訳ないという気持ちでいっぱいになります。だからそういうコには次の行き先(事務所)をちゃんと紹介して、相手先にも事情を説明して「どうかよろしく」と頼むんです。

 反対に、ちょっと人気が出てくると、今売れているのは自分の才能と努力のおかげだと天狗になるコには厳しく言い聞かせます。今売れているコは、消えていった多くのコたちの上に成り立っているということを分かっていなくてはダメなんです。数多くの失敗から得たノウハウ、知識を生かして、成功できているのですから。

 

 自分ひとりでデビューできたわけではないし、仕事が入ってくるわけでもない、まわりで支えてくれる人がいるから活躍できてるんです。だってそんなこと言ってたらバラエティだってドラマだってできませんよ。チームプレイでやってる中で「自分だけ頑張れば他の人はどうでもいい」なんて人間は通用しないでしょ。3回注意しても分かってもらえないコの場合、クビを言い渡します。

 これまでの経験で言えるのは、照明さんやADなど、裏方のスタッフに評判の悪いコは絶対に売れません。一時的に売れたとしてもすぐに消えます。これは間違いない。「自分だけの力で〜」というカンチガイはタレントだけでなくマネジャーも同罪です。「自分のおかげで○○というタレントが売れた」と誤解している場合も辞めてもらいます。

野田社長の指揮の下、次々とグラビア、CM、ドラマ、バラエティなどで活躍する人気タレントを輩出するなど、一見順風満帆に見えていたイエローキャブ。しかし、突然社長辞任という日がやってくる。さまざまな人間の思惑が交錯したであろうその真相に関しては野田社長は多くを語らないが、サンズエンタテインメントで今まで通り手腕を振るう日々が続いている。彼の下にいた人は「ついてきた人」「残った人」の2種類に分かれたが、彼自身が指示や強制などは一切しなかった。
社長辞任は本当につらかった でも前を向いて頑張るしかない
 

 社長辞任が決定したときは、そりゃつらかったですよ。イエローキャブはゼロから作り上げた自分の国みたいなものでしたから。25年の間にたくさんのコたちと喜怒哀楽をともにしましたし……。思い入れも強すぎるほどもっていました。

 でもへこんでるばかりではしょうがないですからね。過ぎ去ったことはもうどうしようもないんだから、頭を切り替えてこれからどうするかを懸命に考え、行動するほかはない。会社を離れるとき、タレントにもスタッフにも自分の人生だから、進む方向は自分で決めなさいと言いました。私は一文無しになる。どっちが安定するかは一目瞭然です。それでも一緒に頑張りたいという人だけ、新しい職場でやっていきましょうと。一方、残った人には「頑張れ」という気持ち、ただそれだけです。

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 イエローキャブ辞任問題では、いまだにトラブルを引きずっていたり、いろんなところでいろんなことを言われたりしています。でもこんなにバタバタしている私のところへ毎日のように「事務所に入れてくれ」ってコが来るんです。本当にうれしいですね。今までやってこられただけでも幸せですけど、次々と新しい才能に巡り合える可能性に満ちているんですから。

 残念だけど業界にはねたみなどで足を引っ張ろうとする輩はたくさんいます。でも引っ張られる足は10本くらいもってるつもりでいます。2本残っていれば歩いていけるんだから、引っ張りたいヤツにはどんどん引っ張らせればいい。ねたみややっかみに委縮していてはやっていけないからね。

 
新しい事務所でタレントのマネジャー業を再開した野田さん。まだ順風満帆とは言えないものの、エネルギッシュな行動力とポジティブ思考で現在も躍進を続けています。次回はそんな逆境にも屈しない野田さんの仕事観、マネジャーという仕事のおもしろさと難しさについて熱く語っていただきます。
 
 
2005.9.5リリース 1.役者からのスタート
2005.9.12リリース 2.堀江しのぶの死に絶望
NEW! 2005.9.19 3.仕事とは人生そのもの

プロフィール
 

野田 義治
(のだ・よしはる)
1946年富山県生まれ。広島市の高校を卒業後に役者を志し上京。数々のアルバイトを経験しながら劇団に所属。モダンジャズ喫茶やクラブでバンドのブッキングなどに携わり芸能界との接点をもつ。その後、大手芸能プロダクションからマネジャーとしてスカウトされいしだあゆみの担当に。1980年にイエローキャブを設立。第1号タレントの堀江しのぶの逝去を乗り越えて、かとうれいこ、雛形あきこ、山田まりや、MEGUMIなどの人気タレントを育てた。2004年11月、イエローキャブを離れ、サンズエンタテインメントの代表取締役に就任。現在でも現場至上主義社長として辣腕を奮う

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