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あの本を書いたあの人が教えるキャリアの極意

なりたてマネジャー入門
講師:木村政雄氏

部下の扱い方って難しい アメとムチのサジ加減、どうしたらいい?

昨日までの同僚がいきなり部下に。飲んで騒いで同じグチをこぼしていた自分に、明日からいきなり上司が務まるのか? 話がわかる同僚から、ナメられず、反発されずチームを率いていける上司に脱皮したいオサムさんに、木村氏が授けた秘策とは?

木村政雄/1946年京都生まれ。同志社大学卒業後、吉本興業入社。横山やすし・西川きよしのマネジャーを8年半務めた後、1980年に吉本興業初の東京事務所を開設。MANZAIブームに乗り数多くのタレントを売り出す。制作部長、取締役、常務取締役などを経て2002年に退職。現在は「木村政雄の事務所」を設立し、在野の個性あふれる一般人の交流の場である「有名塾」を主宰している。
生徒:オサム/32歳。営業第一線で活躍する営業マン。突然のマネジャー昇格の内示を受けて喜びも半分、不安も半分の日々。昨日まで普通の社員だった自分に上司が勤まるのかどうか、揺れ動く日々。

昨日までの同僚が部下に……
どう接したらうまく動かせる?

―― 7人いる同期の中で、4月の異動でマネジャーに昇格するのは僕だけ。昨日まで同僚だったヤツが、4月1日からは部下に変わります。もし僕がその立場だったら、素直にいうことを聞く気になれず、反発してしまうと思うんです。逆にこちらも弱音を吐いたりなんて絶対できないというプレッシャーもある。これからどうやって付き合ったらいいんでしょうか?

あまり気負わなくていいと思いますよ。30代って先頭を切って走る時期だから、今までどおり自分で突っ走りながら判断を下していけばいいんじゃないかな。私は「20代は人に使われる時期、30代は自分が先頭に立って走る時期、40・50代は人を使う時期」だと思っているんです。オサムさんは32歳でしょ? 誰よりも先頭に立って走って見せることが、オサムさんならではの上司像をつくることになると思いますよ。

―― 木村さんは30代で吉本興業東京事務所の責任者になったんですよね。木村さんはどんな30代上司だったんですか? やっぱり突っ走り系?

すごいスパルタ上司でしたよ。部下は大変だったと思いますね。というのは、新設を任された東京事務所は私と部下の二人だけで、それも新入社員。私は「入社して3年は休むな」とか「きつくて辞めたいなら辞めれば?」と公言していましたから。あるとき、39度の熱があるから休ませてくれと電話がかかってきたんですが、「39度って平熱ちゃうの?」と言い返して「違います!」と怒られたことがありました(笑)。でも、私は40度の熱が出ても休まないというくらい、自分は誰よりも頑張ったと言えますからね。

―― す、すごすぎる。それぐらいやっていたから、部下も自然とついてきたんでしょうね。私もそれくらい身を粉にして働かないと、やっぱり部下の不満をねじ伏せることはできないのかな。

別にねじ伏せる必要なんかないでしょう。いい例があります。私が横山やすしさんのマネジャーをしていたときのことです。従来、タレントのマネジメントといえば「汗と涙とヨイショとウソで気持ちよく仕事をしてもらおう」という世界でした。それに違和感があった私は、「マネジャーたるもの、タレントの売り出しや付加価値アップの戦略を立てて、自分描いたプランどおりにタレントを動かさなくては」と思っていたんです。ところがどっこい、横山やすしさんという人は……。

天才やすしの歩いた後を整備する
マネジメントの極意は指導ではなくフォロー

―― やっぱりすごかったですか……。

すごかったですよ(笑)。ぜんっぜん思い通りになんてならない。漫才コンビ・やすきよの価値をもっと上げるにはどうすればいいかと考えに考えて、あれこれ戦略を立てたり、出演してもらう番組を選びに選んだりしているというのに、横山やすしさんは平気で仕事に遅れてきたり、最悪の場合には来なかったり。番組の中でもあの破天荒な発言を自由になさるんで、もう現場は大変でした。プロデューサーに売り込んだこっちとしては、やすしさんを脱皮させるどころか、必死で頭を下げて回るしかない。戦略も何もなかったですね。悪気はないんですよ。だけどやっと軌道に乗ったと思ったらあんな事件起こしちゃうし(笑)。

―― わぁぁぁっ。いうことを聞かない部下どころじゃないですね(笑)

そうそう。だけどね、あるとき発想を転換したんです。私がやすしさんの道を作ってなぞらせるんじゃなくて、やすしさんが歩いた後に道筋をつけていこうって。だってアノ人は天才ですから。

仮に天才じゃなくても、そもそも他人を思い通りに動かそうなんておこがましいんです。プロデュースして、思うように動かそうと汲々とするより、よさを認めてフォローした方がうまくいく。部下もそうじゃないですか? いうことを聞かせようとすると反発するけど、こっちがフォローしようと待ち構えているのがわかると、案外、素直に相談にきたりしますよね。 オサムさんは部下として、どうです?

―― うん、そう。そうですよね。高圧的に来たらもちろん反発するし、逆にこっちに媚びて顔色を伺われても「お前には判断力ないのか」とバカにしてしまう……。うーん。でも上司って後始末しかできないのかな? プレイングマネジャーって無理なんでしょうか?

率先して「お祭り」を実践
仕事を楽しむ仕掛けを作れ

いや、30代は自分が先頭に立って走るプレイングマネジャーでいいと思いますよ。ただ、先頭を走りすぎてふと後ろを振り返ったら誰もついてきていなかったとか、気がついたら会社全体が向かっている方向とは逆へ走っていたというのでは、ダメですが。

プレイングマネジャーにできることといえば、お祭りのテーマ作りなんですよ。つまりね、「この部署はこれだけ儲けて、会社の中でここを担うんだよ」とか「これを売ることで将来の会社のベクトルをこっちに向けるんだよ」と、方向を示してあげるわけです。しかもできるだけ、それを達成することを楽しめる仕掛けを作ってあげると、みんながついてくると思いますよ。

―― うーん、たとえばどうすればいいんだろう? 楽しむ仕掛けって何なんですかそれ? それに、僕に盛り上げるチカラあるのかな?

例えばね、私がやったのは「吉本新喜劇、やめよッカナキャンペーン」というもの。要はリストラです。長くいるけど時代に合わなくなってきたタレントさんにうまく引退してもらい、新しい若手を導入して刷新しなくては吉本新喜劇がいずれ終焉を迎えてしまうと思った。そこで私は、このリストラを「やめよッカナキャンペーン」とお祭りに仕立てたんです。マスコミや周囲からその祭りを盛り上げて、自然と自分から卒業していってもらう方向に持っていったんですよ。若手お笑い芸人の登竜門であるM1グランプリも、新人発掘という地道な作業をお祭りにして盛り上げて注目を集めた。かかわった吉本興業社員たちもいっしょに楽しんでくれましたよ。

―― たとえば、私の場合だと、営業NO.1争奪キャンペーンとか? ◎◎沿線の会社受注強化月間を企画し、沿線地図を作って、お客さんを落とした駅に受注した営業マンのフラッグ立てたりしても面白いですよね。

まず、同じ方向を向いて走れる仕掛けと面白くする仕掛けを作る。そのうえで、成果を上げた部下をほめて評価する。それができれば、十分に上司としての役割を果たしているといえるでしょう。しゃちこ張って堅苦しく考えて、自分のいうこと聞かせようとすると、とたんに破綻する。誰よりも真剣に、自分が先頭を走りながら盛り上げるのが30代上司じゃないのかな。

木村政雄氏から学んだ、胸に刻んでおきたい3つのこと

1.誰よりも熱く先頭を走るのが30代上司

2.楽しめる仕掛けを作って仕事をお祭りにしよう

3.デキるヤツはガンガンほめて伸ばせ

だんだん上司になるのが楽しみになってきたオサムさんに、次回、本物の大人になるための知恵を伝授。
「意味のある失敗ができるのは、30代のうちだけ」って、いったいどういうこと?

昇格はうれしいけど こんな自分にマネジャーが務まるのか?

自分で判断して失敗したら、責任どう取るの?上司なんてポジション、やっぱり無理!?

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