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あの本を書いたあの人が教えるキャリアの極意

幸せなキャリアを築くための、人材バンクの賢い使い方
講師:山本直治氏

紹介転職といえども自己責任の意識は重要 コンサルタントをその気にさせるコツ

人材バンクのコンサルタントは転職希望者の味方になってくれるとはいえ、コンサルタントに全部お任せでいいなんてことはない。中には首をひねりたくなるようなコンサルタントも存在する。しかしやっぱり大事なのは「自分で考えて、自分で決める」ということ。転職は他の誰のものでもない、あなたの人生の一大事なのだから。

山本直治/1974年長野県生まれ。中央大学法学部、同大学院修了後、国家公務員採用Ⅰ種試験(法律職)に合格し、旧文部省へ入省。キャリア官僚として6年間勤務した後、2005年に「公務員から民間への転職支援ビジネス」に挑戦するため人材紹介業界に飛び込む。IT・ハードウェア業界専門の人材バンクを経て、2006年、ロード・インターナショナルに転職。現在は同社シニアコンサルタント。
日本初の公務員向け転職支援サイト「公務員からの転職支援 役人廃業.com」を主宰。
生徒:吉田育夫/中堅建設機器メーカーに勤める33歳。これまで企業の求人に直接応募する方法で3度転職したが、いずれも失敗だと感じ、現在も転職を考え中。人材バンクに興味をもってはいるが、実情がわからないため踏み出せないでいる。

こんなコンサルタントには要注意!

―― 前回はいいコンサルタントの見分け方を教えていただきましたが、今回は逆に「こんなコンサルタントには気をつけろ」というポイントを教えてください。

コンサルタントの説明に対して、理解できないことや不安に思ったことを質問した際に、真相をごまかしたり、口を濁そうとするコンサルタントには要注意です。強引さやあやしい動きをするコンサルタントに対しては言われるままに流されないことが大切です。

―― 「あやしい動き」というのは具体的にどういう動きでしょう? なにせコンサルタントと面談したことがないので、イメージできなくて……。

例えば、応募してみようかなと思う会社があったとして、その会社について質問したときに、根拠もなくその会社のことを否定あるいは肯定したりするとか、本人が納得していないのに強く応募することを勧めてくる、などです。とにかく都合の悪いことを説明したがらないコンサルタントには注意が必要です。転職希望者が納得のいくまで説明しようという姿勢がなく、煙に巻く対応をしがちなコンサルタントに対しては、相手のペースに乗らないようにしましょう。もしなんとなく納得できないまま、相手のペースに乗って転職させられたら後悔することにもなりかねません。そういう意味では家を買う場合に似てますね。

転職を繰り返すことの危険性

―― え? どういうことですか?

家を買うときは契約前に、宅地建物取引主任者から「重要事項説明」を受けます。不動産は高額商品なので説明不足や事実誤認によって取引をひっくり返すことのないように手順を踏んでいるのです。だから買う側は少しでも疑問に思ったら、納得するまで突っ込んで質問する必要があります。一生に一度になるかもしれない高い買い物ですからね。

基本的には転職もそれと同じだと思うんです。確かに「失敗してもやり直しがききやすい」という意味では家を買うよりは気軽かもしれません。しかし、「転職してもダメならまた転職すればいい」という考え方はあまりにも安易で危険です。転職回数が多いと、我々人材バンクのコンサルタントや会社の人事・採用担当者に「こらえ性がない」「何かあったらまたすぐに辞めてしまうんじゃないか」「根無し草体質か」などと思われてしまい、転職そのものが難しくなるからです。

―― なるほど~。転職回数が多いと企業から敬遠されがちというのはそういうことなんですね。

そうなんです。だからこそ、転職希望者はすべてをコンサルタント任せにするのではなく、自己責任で取捨選択していかなければならない。そのために、コンサルタントに納得いくまで質問することを勧めているのです。

どんな些細なことでも、「こんなことを聞いたら恥ずかしい」とか、「初歩的なことだから知ってて当たり前だ」、などと思い込まないようにしましょう。良いことも悪いことも包み隠さず真摯に答えてくれるのが良いコンサルタント。その逆が悪いコンサルタント。コンサルタントを選ぶ段階でそう思って準備していれば、面談時でも気後れしないで済むはずです。

過去の失敗を生かす

―― そうはいっても、今まで人材バンクを使ったことがないので、「少しおかしいな」と思っても「そんなものかな」と思ってしまいそうなんですけど……。

そういうときは過去に失敗した経験を質問のネタにしてしまうんです。例えば「前回の転職では、事前情報はこうだったのですが、実際に入社したらこのように話が違いました。今回もそうなりませんか?」というように、具体的な経験談をコンサルタントにぶつけながら確認してみてはいかがでしょう。特に業務内容、職場環境、年収など、あなたなりの「ここはこだわりたい」という点に関しては、コンサルタントにより詳しく質問・確認して、クリアにすることが重要です。

―― なるほど。自分の失敗経験を元にすれば判断しやすいかもしれませんね。

失敗して学ぶこともあると思うんです。過去の失敗を思い出すのは誰だってイヤなものですが、あえて今後の糧にしましょう。面談前に今回の転職でこだわる点と前回の失敗だったと思う点を書き出してコンサルタントにぶつけてみるのも有効だと思いますよ。コンサルタントにとって痛い質問でも、面倒くさがらずに答えられるかどうかでコンサルタントの力量・誠意も計れますしね。

人材バンクを利用するデメリット

―― 人材バンクを利用する際のメリットやコツはだいたい分かりました。でもまだ不安があるんですよね。例えば、紹介してもらった求人はなかなか断われないんじゃないだろうかとか、もし応募して内定が出ればその会社に入社しなければならないんじゃないかとか……。

吉田さんのように思っている人はけっこういますよ。人材バンクを使うことに二の足を踏んでいる人の多くは、コンサルタントという他人が介在することによる「わずらわしさ」がイヤだと感じているようです。

例えば洋服などを買う際でも、商品を見てどれにしようかなと考えているとき、店員が「どういったものをお探しですか?」とか「ご説明しましょうか」と寄ってくることをわずらわしいと感じる人がいます。気にしないで、自分でゆっくり考えて決めれば良いのに、買わなければならないという焦りが先に立って、たいして欲しくもないのに買ってしまうといったような人。

―― それ、すごくよくわかります! まさに私がそのタイプです。そういうときって「買わされた感」が強いんですよねぇ。

吉田さんのような人は必要以上に相手に気を遣ってしまうんですよね。転職に関しても、紹介してくれた企業を受けなかったり、内定を辞退すると、コンサルタントに迷惑をかけてしまうと必要以上に思ったり。

でもね、コンサルタントはそのすべてを最初から織り込み済みなんですよ。人材紹介業界の平均では、相談に来た転職希望者が、紹介した企業に入社する割合は10人の内1人いるかいないかです。

客観的に見れば割のいいビジネスとはいえないかもしれませんが、少なくとも私はそれをわかった上でこの仕事をしているわけです。だから、もちろん紹介された企業がちょっと違うと思ったら応募しなくていいし、内定が出ても辞退してもいい。そりゃコンサルタントだって人間ですから、がっかりはしますよ。でも私は転職はあくまでも転職者本位で行われるべきだと思っているので、コンサルタントに気を遣う必要は全くないのです。

コンサルタントをその気にさせるために

―― そういってもらえると気が楽になりますね。今回の転職では人材バンクも利用してみようと思います。自分に合う会社を紹介してもらう上で、コツのようなものってありますか?

まずはこれまでのキャリア、これからの希望を正直に話すこと。これは信頼関係を築くためにも重要です。相談者とコンサルタントがお互い心を開いて話をするのは、マッチングの精度を上げるためにも大切なこと。秘めた部分を持ちながら入社しても、あとでバレて困るのは本人ですから。

それから、人材バンクには毎日数多くの転職希望者からの相談が舞い込みます。目にするキャリアシートも膨大な数になりますので、その中でいかにコンサルタントの目に留まるか、いかにコンサルタントを「この人の希望に添えるようにサポートしたい」という気にさせるかが、希望の転職を実現させるためのひとつの重要なポイントになってきます。

―― なるほど~。山本さんの場合はどんな相談者ならやる気がわいてくるんですか?

まずは人間的に謙虚、真摯であること。そして自己実現に対する気持ちが強い人。実際に会ったときに「頑張りたい」というオーラの出ている人はぜひともサポートしたいと思いますね。具体的には目的意識をもって頑張っているのに明らかに環境が悪い人。例えば正社員と同じ仕事をして成果も上げているのに、いつまでたっても契約社員のまま……というような、自分ではいかんともしがたい状況の中で頑張っている人です。

不平・不満だけではダメ

―― 自分では何もしていないのに、不平・不満ばかり言っているような人はダメってことですね。

何の努力もしないで、ここではないどこかに自分にふさわしい場所があると夢ばかり見ている「青い鳥症候群」や、移り気で脈絡のないキャリアの積み方をしているような人は難しいですね。今が不安というだけで転職を繰り返す人も同様でしょう。

与えられた状況の中で業務改善や自己研鑽をしつつ、目標を達成しようとしているのになかなかできない。でも職場や立場などの環境を変えることによって実現できる可能性がある、というのならば、そのチャンスを提供するのが我々人材バンクの使命だと思うんです。実際に環境が変わってその人が夢を実現したり、大きく成長できるかどうかは未知数ですが、「伸びるチャンスがあるのにもったいない」と思わせる人には、この人のためにできる限りのことをしたいと自然に思いますね。

それともうひとつ、いずれ来る日のために準備している人には可能性を感じますね。将来の目標のために資格を取る勉強をしている人、IT系で言うと新しい技術を勉強しているような人です。

要するに、目標ややりたいことがあって、「やりたい」と手を挙げているのに状況が整わなくてやれない。やることを精一杯やって、あとは転職しか方法がないという人は次へ行っても働けます。吉田さんは、今、自分から積極的に何かに取り組んでいますか?

―― ギクッ……! そういわれると困ってしまいますね。ちょっと考えが甘かったのかもしれません……。

「現状の不満」だけでは会社を変えても同じことの繰り返しになると思いますよ。

―― 確かに……。また話は最初に戻ったような感じですが、結局一番大事なのはその点なんでしょうね。今日うかがったお話をよ~く考えて、もう一度転職するかどうか、考えてみたいと思います。

きっちり確定しなくても、ある程度の方向性がおぼろげながらでも見えたら、コンサルタントに相談してみてもいいと思いますよ。コンサルタントと話すことで見えてくるものもありますから。

山本直治氏から学んだ、胸に刻んでおきたい3つのこと

1.どんな些細なことでも納得するまで突っ込んで聞くべし

2.都合の悪いことを説明したがらないコンサルタントには要注意

3.やる気と熱意をアピールしよう

幸せなキャリアを築くための、人材紹介会社の賢い使い方

成功に導いてくれるコンサルタントの見分け方

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