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TOP の中の転職研究室 の中のあの本を書いたあの人が教えるキャリアの極意 の中の第11回 昇格はうれしいけど こんな自分にマネジャーが務まるのか?[講師:木村 政雄氏]

あの本を書いたあの人が教えるキャリアの極意

なりたてマネジャー入門
講師:木村政雄氏

昇格はうれしいけど こんな自分にマネジャーが務まるのか?

いつまでも現場を駆け回っているわけにはいかない。でも、上司として鉈を振るう自信も資格もない気がする……。もう一段上に上るには、どんな覚悟やスキルが必要なのか。吉本興業東京進出の最初の布陣を構えた木村氏が語る「上司の条件」とは。

木村政雄/1946年京都生まれ。同志社大学卒業後、吉本興業入社。横山やすし・西川きよしのマネジャーを8年半務めた後、1980年に吉本興業初の東京事務所を開設。MANZAIブームに乗り数多くのタレントを売り出す。制作部長、取締役、常務取締役などを経て2002年に退職。現在は「木村政雄の事務所」を設立し、在野の個性あふれる一般人の交流の場である「有名塾」を主宰している。
生徒:オサム/32歳。営業第一線で活躍する営業マン。突然のマネジャー昇格の内示を受けて喜びも半分、不安も半分の日々。昨日まで普通の社員だった自分に上司が勤まるのかどうか、揺れ動く日々。

昇格はうれしいけれど
現場を離れてしまいたくはない!

―― この前、上司に呼び出されて、4月にマネジャー昇格の内示を受けました。もちろん抜擢はうれしいです。でも今まで部下の指導経験はあっても、部署全体を見渡してのマネジメントや管理はやったことがない。なによりも管理職になると、数字の管理、人材配置、役員からの予算取りなど、現場から一線引いて離れてしまうのが心残りで……。現場以上のやりがいが、管理職にはあるんでしょうか?

オサムさんは現場が好きなんですね。確かに営業最前線はやりがいがダイレクトに返ってくる醍醐味がありますよね。

―― はい。昨年と比べてどう伸びたかが数字でわかるので手ごたえは十分です。それに、自分でいうのもなんですが、営業成績のかなりの数字を引っ張っている存在なので、僕が最前線にいなくなると部署が回っていくかどうか……。管理職ではなく第一線においておいた方がいいのでは? と自分でも思うのですが。

それだけの実績を上げているとそう思うのも無理ないけれど、そんな心配はありませんよ。

―― ううっ……。でも、他の人では難しいようなクライアントも多く、信頼関係を築くのは一朝一夕じゃなかったんです。管理職になって部下に引継ぎをしても、あいつら、うまくやれるかどうか。

大丈夫ですって(笑)。「自分がいないと会社が回らない」と、以前は私も思っていたんですよ。 だけど、人が一人いなくても、会社は回っていくものです。私が自然にそう思えるようになったのは45歳で制作部長から、取締役制作部長になったとき。頭を切り替えるとある出来事があったんです。

あえて現場を見ないでいたら
「部下をほめられる」上司になった

―― 第一線を走り続けてきた木村さんが頭を切り替えられた出来事って何なんですか?

十二指腸潰瘍になったんですよ。どうも体調が悪いので医者に行ったら「1カ月ハワイに行くか、3週間入院するかどっちか選べ」といわれて、入院を選んだんです。3週間を2週間に値切って(笑)。入院中は現場を見ることはできないから、正直心配でしたよ。自分がいなくなっても現場は回るだろうかって。でも、退院してみると、まったく問題なく回っていました。

―― それって寂しくないですか?

寂しいですよ。ショックでした。でも、一人くらい人がいなくても会社は回る、という当たり前のことに気づいた瞬間でもあったんです。その後は、わざと現場を見ないようにしました。見始めたら気になるし、口も出したくなる。部下もいろいろと頼ってくる。だからあえて離れよう、社内にできるだけいないようにしようと、外の人たちとのお付き合いを増やしていったんです。すると、内心「自分なしでも、大丈夫だろうか」と思っていた部下も、ちゃんと自分で判断して仕事を動かしていた。私がしていたときと同じようにね。

―― うーん。木村さんの場合は部下がかなりデキる人だったから、つつがなく仕事が成り立ったのでは? 私の部下になるはずの連中はイマイチキレが悪くて。

それって、内心、部下に嫉妬してるんですよ。私も取締役になるまでは、自分の方ができる、勘は俺の方がさえていると、どこかで部下と競っていたところがあった。だけど、現場を離れ、距離を置いて眺めると、会社という大きな枠組みの中で自分が何をすべきかがわかってきたんです。現場で必死に制作そのものにかかわっていたときには、周りが見えていなかったんですね。すると若い子に嫉妬しなくなり、素直に「頑張れ」と応援したり、「すごいな、やるな」と心からほめることもできるようになりました。

今の仕事を手放すことで
より大きな役割を見出せる

「部下が育たない!」と口にする上司がいますが、どこかに自分を超えさせたくない、部下に育って欲しくないという気持ちもあるのだと思います。でもそれだと、いつまでたっても本当の上司の器にはなれない。オサムさんもそういう上司だったらやりにくいしイヤでしょ。いつまでも小さい器のまま、部下と張り合う上司になりたいですか?

―― イ、イヤです! 確かに、上司が自分の仕事を手放さない人だと部下はやりにくいかも。

でしょう? 今オサムさんは、自分ひとりのスキルを磨く時期から、次に継承する時期にさしかかっている。その資格があると見込まれたんですよ。スキルやノウハウを一人で抱え込んで、一代限りの名人芸にしちゃいけないんです。意識を切り替えないと。現場に固執してばかりいると、それ以上の器になれないし、大きな仕事はできない。それでもいいんですか?

―― あ、そうか。一人でやれる大きな仕事しか、眼に入っていなかったんだ。大きなクライアントを担当したいなど個人レベルのビッグじゃなくて、もっともっと視野を広げて会社に歴史を残せるような仕事にチャレンジできるチャンスなのかも。

そうですよ! よく気づいた。私も現場を離れた当初は寂しかったですよ。例えば、取締役になると番組のエンドロールで、「制作プロデューサー 木村政雄」というテロップが流れなくなるんです。だけど、もう現場に戻るわけにはいかないのです。

現場を離れることが寂しいのは仕方がない。でもそれは、次のもっと大きなステージに行くためのトランジットなんですよ。そこを経ないと、いつまでも組織の中の手駒でしかない。不安でも手を放したら、次にもっと大きなものがくると信じなくては。

―― そうか。今、手に持っているものを離さないと、もうひとつのやりがいは持てないですよね。お、思い切って手を離す勇気も必要だっていうことですね。

木村政雄氏から学んだ、胸に刻んでおきたい3つのこと

1.いつまでも現場に固執していると、それ以上の器にならない

2.上司になるなら、まず部下への嫉妬心を捨てろ!

3.今のやりがいを捨てなければ、次の大きなやりがいは手に入らない

現場を離れ、上司になる意義がやっと見つかったオサムさんだったが、実はまだ悩んでいることが……。
昨日までの同僚がいきなり部下になるけれど、自分のいうことを聞いてうまく動いてくれるかどうかが不安。
次回、木村氏はこれにどう回答する!?

部下の扱いって難しい アメとムチのサジ加減、どうしたらいい?

自分で判断して失敗したら、責任どう取るの?上司なんてポジション、やっぱり無理!?

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