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あの本を書いたあの人が教えるキャリアの極意 あの本を書いたあの人が教えるキャリアの極意 Vol.26
幸せなキャリアを築くための、人材バンクの賢い使い方
転職は「目的」ではなく「手段」 まずは自分の価値軸を見つけよう
最近よく見聞きする人材バンク。でも人材バンクってどういうところ? どんなことをしてくれるの?──そんな疑問をもつ人のために、文部科学省のキャリア官僚から人材バンクのコンサルタントに転身したばかりか、自ら『人材コンサルタントに騙されるな!』という衝撃的なタイトルの本を書いた山本直治さんが、「幸せなキャリアを築くための人材バンクの使い方」を教えてくれた。
Y
山本 直治氏
人材バンクに行く前に、
考えておかなければならないこと
 
―― 私はこれまで直接企業に応募する方法で3回転職をしているのですが、3回とも失敗だと感じているんです。だから今も転職を考えているんですが、もう33歳なので年齢的にも今度こそ失敗したくありません。先日、同じく転職を考えている友人と話していた際、近頃CMなどでよく見聞きする人材バンクってどうなんだろうという話になりました。そこで『人材コンサルタントに騙されるな!』という本を書いた山本さんに人材バンクのかしこい使い方を教えていただきたいのですが。
 
 
Y  

ちょっと待ってください。まず、人材バンクうんぬんよりも、転職する前に「なぜ自分は転職したいのか」「転職によって何を実現したいのか」ということをよく考えてほしいんです。つまり、転職はそれ自体が目的ではなく、あくまで手段なんですよ。あなたは転職という手段を使って、何を実現したいと思っているのですか?

 
―― そう問われると、なんて答えていいのか、正直答えに詰まりますね。そこまでは考えてなかったかも。転職理由としては、今の仕事にいまいちやりがいや楽しさが感じられないとか、仕事の割に給料が安いとか、そういう理由でしょうか。でも考えてみれば、それって現状に対する不満なんですよね……。
 
Y  

それが絶対に悪いというわけではありませんが、「その先」つまり、「転職で何を実現したいのか」が自分の中にないと、人材バンクを使おうが、直接応募だろうが同じことの繰り返しになってしまう可能性が高いと思いますよ。

 
―― なるほど。これまでの転職を考えても確かにそうかも。でも正直、転職で何を実現させたいかが自分の中でいまいちはっきりしてないんですよね。どうすればそれを明確化できるんでしょう……。山本さんの場合はどうだったのですか? 人材バンクのコンサルタントに転職する前は、文部科学省のキャリア官僚だったそうですね。山本さんは転職によって、何を実現させたかったんですか?
 
Y  

そもそも私は、公務員時代から公務員の民間企業への転職をサポートしたいと思っていたんです。公務員の民間企業への転職というとどうしても天下りのイメージが強い。それに、公務員は民間に転職しても「使えない」と思っている人も多い。でも、実際には必ずしもそうではないんですよ。私の知る元公務員で、今は民間企業で活躍されている人も少なからずいますから。

今は政府が「新・人材バンク」を作って天下りを規制しようという動きがあるけれど、私はもっと草の根レベルで公務員の転職について事実を知ってほしいと考えていて、そのために活動したかった。偏見をなくすことで、官から民への人材流動化を促進することができるのではないかと考えたんです。

そのためには自ら人材・転職業界に飛び込んでいって、転職を希望する公務員が本当に民間企業から必要とされているのかを知らなければならないと思いました。だから文部科学省を辞めて、人材バンクのコンサルタントに転身したんです。

自分だけの価値軸を確立しよう
 
―― なるほど。人材バンクへの転職は「公務員の転職をサポートするビジネスを立ち上げる」ための第一ステップだったんですね。
Y  

そのとおりです。もっと深掘りすれば、まず自分にとって何が自己実現なのか考えました。それは「分かりやすい文章で、世の中のためになる情報を伝えること」で、同時にそれを自分の価値軸においていました。私は公務員を辞めた後に、『公務員、辞めたらどうする?』という本を書いているんですが、今まで誰も書かなかった「公務員が転職したらどうなる?」というような情報を分かりやすい文章で書いて、広く世の中に知ってもらうために書いたんです。

 
 
 

結果、「誰もが言いたくても言えないような実情をよくぞ書いてくれた」といった応援メッセージもいただき、私なりに少しは社会の役に立てたかなという実感が持てるようになりました。それは2冊目の『人材コンサルタントに騙されるな!』でも同じです。だから現在は自己実現という意味では公務員時代以上に達成できていますね。まず自分だけの価値軸を見つけて、その実現手段を得られたことが幸運だったと思います。

 
―― 自分だけの価値軸ですか……。それは私にはないかも……。でもそれに従って行動すれば、納得の行く、幸せなキャリアが築けそうですね。では、その価値軸は、どうやって見つければよいのでしょう?
 
 
Y  

それは経験を積み重ねていくしかないでしょうね。私はたまたま公務員という仕事の中で「こういうコトが好きなんだ」と発見できた。だからまずは目の前の仕事に全力で取り組むことがひとつ。

あとは転職、またはキャリア・チェンジを繰り返している人は、「自分探し」が終わらない人なんだと思います。「自分探し」そのものは必ずしも悪いことではないと思うのですが、一番マズイのは、過去の経験を振り返って検証しないことでしょう。「自分探し」が終わらない人は、ある意味失敗し続けている人とも言えるわけです。その失敗の原因は何なのか、同じことを繰り返さないためにはどうすればいいかと自分に問う必要があります。失敗の反省と対策の糸口は本人にしかわかりません。その中から自分がやりたいと思うことや価値軸が出てくるのだと思いますよ。

「何がしたいかわからない」ではどうしようもない
 
―― 確かに、私も失敗したことから目を背けて、なぜ失敗したのか、これからどうすればいいかを真剣に考えてこなかったような気がします。それが失敗転職を繰り返す原因だったんですね……。
Y  

失敗に目を向けるのは誰だってつらいですし、できれば思い出したくないですからね。そこをうまく検証して次に生かすために、人材バンクを利用するのもいいと思います。

コンサルタントは相談者の失敗を検証し、次に生かすために、ときに突っ込んで質問する場合もあります。過去の失敗に突っ込まれたくないという人は多いのですが、特に転職癖のある人は正直に答えましょう。転職を繰り返す人は「ちょっとイヤだから辞めちゃおう」という癖になっている可能性が高い。癖であるなら治さないと次もまた同じ失敗をしてしまいますから。

―― まずは失敗を振り返って反省してみる。そこから先の手伝いをしてくれるのが人材バンクということなんですね。
Y  

希望業種の求人情報がこれだけあって、転職希望者のキャリアがこうだから……というマッチング作業ならPCにだってできますからね。なぜこの人は失敗したのか、次も失敗しないためにはどうすればいいかという点を一緒に考えることもコンサルタントの大事な職務のひとつだと思っています。

そして、転職希望者は、転職の相談に来る際には、人生という海の上を、どのような航路で進みたいのか、ある程度自分自身で決めておいてほしいんです。「何をしたらよいか分からないんですけど、どうしたらいいでしょうか?」ではアドバイスのしようがありませんからね。

 
 
 

それに、軸がゆらゆら揺れていると、タチの悪いコンサルタントが担当になった場合に思うがままに入社させられてしまいます。それはお互いにとってハッピーじゃないですから。

そういうことを踏まえた上で、次回は実際に人材バンクは何をしてくれるところなのかについてお話しましょう。

 
―― よろしくお願いします!
 
講師:山本直治氏

1974年長野県生まれ。中央大学法学部、同大学院修了後、国家公務員採用J種試験(法律職)に合格し、旧文部省へ入省。キャリア官僚として6年間勤務した後、2005年に「公務員から民間への転職支援ビジネス」に挑戦するため人材紹介業界に飛び込む。IT・ハードウェア業界専門の人材バンクを経て、2006年、ロード・インターナショナルに転職。現在は同社シニアコンサルタント。

日本初の公務員向け転職支援サイト「公務員からの転職支援 役人廃業.com」を主宰。

この本がおすすめ!
『人材コンサルタントに騙されるな!』(山本直治/PHP研究所)
『人材コンサルタントに騙されるな!』
(山本直治/PHP研究所)
 

官庁という違いすぎる業界から転身した山本氏だからこそ書ける人材紹介業界の真実が満載。人材バンクを利用した転職のメリット・デメリットが本音で書かれてあるので、人材バンクに興味のある人、これから人材バンクを利用してみようかなと思っている人、過去に利用して失敗した人などにおすすめの一冊。

生徒:吉田育夫
中堅建設機器メーカーに勤める33歳。これまで企業の求人に直接応募する方法で3度転職したが、いずれも失敗だと感じ、現在も転職を考え中。人材バンクに興味をもってはいるが、実情がわからないため踏み出せないでいる。
photo 山本直治氏から学んだ胸に刻んでおきたい3つのこと
1
転職で何を実現させたいのかを決めよう
2
自分だけの価値軸を見つけよう
3
失敗から目を背けるべからず
次回は12月17日更新予定
「あの本を書いたあの人が教えるキャリアの極意」バックナンバー一覧へ
構成/山下久猛
協力/岡野吉成
写真/mikico
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