一般の消防士もレスキュー隊員も、どちらも災害の現場に行くのは同じ、そして人の命を救う、燃えているところを消そうという気持ちも同じです。ただ、違いがあるとすればその役割ですね。
レスキュー隊は、消防の第一目的である人命救助の現場で、先頭に立って行くっていうことですね。例えば、火災の現場でポンプ隊員が燃えてる建物の入り口でホースを持って待機してたら、そのホースを活用して、即座に判断し、進入するのがレスキュー隊。燃えているものの近くまで行って、順序良く水をかけなきゃ炎は消えない。遠くから水をかけても効果ないんです。どこに当たってるかわからないですから。
やっぱり、普通のポンプ隊だと、煙が充満してて、真っ暗で先が見えないところへはなかなか入れないんですよ。どうしても躊躇しちゃう。暗闇の中だと、5メートルが10メートルにも15メートルにも思えますからね。
そこをレスキュー隊は、真っ暗で、ライトで照らしても足元しか見えなくても、体全体を使って感じ、最善策を考え、進入します。でも、ポンプ隊が行けないところに行けるというのではなくて、ただ経験の差だけなんです。
私も若い頃に、先輩が先頭に立って行くぞって言ってくれたから、その後について行けたんです。レスキュー隊として最前線にいられるっていうのは、その「行く、行かない」を数多く経験できるってことなんですよ。ポンプ隊員は、その経験が多い人もいれば少ない人もいる。若くて全く経験のない人もいる。それだけの違いなんですよね。
真っ暗闇の煙の中に入っていくような経験をどれだけ先輩からさせてもらっているか。そういった先輩からの継承、経験の蓄積っていうのが自分を作ってるんじゃないかと思います。最初からやれっていっても無理です。
例えば、木造建築の火災の場合、建物や燃え方の状況によっては、消火中に2階の床が抜けることがあるんです。その、床が抜ける限界がどのくらいなのか、ここまでは大丈夫、ここから先は危ない、というのは、周りの状況を把握できないとわからないんですよ。こういう場合は壁沿いに行けば大丈夫とか、そういう判断は自分の体験が元になってます。
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