僕にとって働くとは生きることですね。やっぱり人間ていうのは生きるために生まれてきたんだから、生きてる限りは動き、働くことが本来の姿だと思う。だって誰も文句言わないけどさ、心臓なんて生まれたときから動き続けている、人間では絶対作れない精密機械だよね。だから我々も必死に働いてあげなきゃ。
僕は人生って1本の道だと思ってる。よく生と死って二元論でものを考える人がいるけど、僕は「生と死」じゃなくて「生の延長に死がある」と思ってるんだ。
いつでも人生は登り坂なんだよな。この坂を我々は一歩一歩登っていく。その登り詰めたところに死があるっていう考え方なんだ。この登り坂という考え方がとても大事でね、毎日、今日も明日も登らなきゃいけない。一歩登るごとに悔いのない登り方をしてほしいと若い人に思うんだ。
そして登りきったところに死が待っている。そのときには、きっと僕も満足して死に委ねられると思うんだ。怖がらずにね。一歩一歩登って悔いがなく過ごしていけば、あぁ、来たんだな、と思うと思うんだ。
歳をとるとね、いいことがあるんだよ。例えばね、いろんなことを食べながら考えたり、海を見ながら考えたりしてると、すごく良いことを思いつくんだよ。若い時には絶対思いつかないようなことをね。そんなとき歳とるっていいな、と思うんだ。けどね、困ったことにそういうことをすぐ忘れちゃう。何にもならない(笑)。そこでメモをするってことをおぼえたんだ。これが大事なんだよな。
もちろん、遊ぶことも大事。僕ね、遊びも学びだと思っているんだよね。昔から「よく学び、よく遊べ」というけど、僕は「よく遊び、よく学べ」だったな。よくいるじゃない「遊び人」てさ、飲み屋へ行ってヤケドすることもあるけど「いい人生経験だ」っていうでしょ。みんな学びなんだよ。そういう考え方してるから。
江戸時代の儒学者、佐藤一斉の言葉でいいのがあるんだよ。『言志四録』の中の一節なんだけど、
少にして学べば則(すなわ)ち壮にして為すことあり
壮にして学べば則ち老いて衰えず
老いて学べば則ち死して朽ちず
ね、いいでしょう、これ。学ぶことがいかに大切かを説いた一説なんだけど、読めば読むほどいい言葉だよね。
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