どうも私はホテルに滞在するのが好きなようで、仕事の出張以外でもちょっと街歩きするためによくホテルを利用する。先月は帝国ホテル東京に滞在して、浅草とか上野をブラブラと散策した。
　上げ膳据え膳でのんびりできる気持ちよさもさることながら、お客に満足してもらうために、全力を尽くすそのプロの技、立ち振る舞い、動きを見ていると、とても心地よい気分になる。
　まあ、それなりのコストはかかるのだが、それでもチェックアウト時に
「ありがとうございました。ご滞在中に何かご不便はございませんでしたか？」
と爽やかな笑顔で声をかけていただくと、良い時間を過ごせたと嬉々としてお金を払ってる自分がいる。

　バブル崩壊以降、日本はどんどん景気低迷してすっかり落ちぶれたなどという話やニュースを見聞きするが、じつはそんな不景気のケガの功名とでも言うのだろうか、この手のサービス業のサービスの品質がすごくよくなっていると感じる。
　いや、こういったホテルの人的サービスだけでなく、例えば高速道路のSAのサービスとか、公衆トイレの綺麗さ、ファミリーレストランの食材の安定的な品質等、不景気のなかで各企業やお店が生存競争をかけて経営努力をした結果、全体的なサービスの品質が一段上がったと感じる。

　以前にオフショアの仕事で中国の上海に滞在していた時、それなりのレストランで食事を注文をしようとウェイトレスを呼んでメニューを物色していたら、なんとその方は私の椅子の背もたれに肘をつき、私の椅子に寄りかかって注文を取っていた。日本では考えられない無作法な振る舞いだ。
　（いや、若いお姉さんだったので逆にフレンドリーな感じで全然不愉快ではなかったのだが　笑）

　海外にいるとやはりサービスはかなりラフだ。ファストフードの店員はまったく面倒くさそうに接客するし、ちょっと下町にご飯を食べに行くと、食材等かなり危険な香りを帯びてくるし（その混沌っぷりが海外旅行の魅力でもあるのだが）どうも体が落ち着かなくなってくる。

　やはり日本の凛としたサービスは、清潔感と優しさに満ちた、世界一を誇っていい崇高さがある。

　で、週末にそんな気持ちのいい日本のサービスを受けた休暇を過ごしていると、どうしてもIT業界という自分の仕事場に戻ってきた時のギャップに苦しむ。

　視線を合わさずぶっきらぼうに「僕の仕事じゃないですから」とそっぽを向くプログラマー。
残業続きなのはわかるが、ボサボサの頭、だらしない格好に雑で投げやりな立ち振る舞い。
上から目線で上下関係に拘るだけの上司達。

　皆が皆そうとは言わないが、日本のサラリーマンの職場はかなりラフでいい加減な気がする。
まだまだ男社会で、ぶっきらぼうな事が男らしさだと勘違いした方たちが、どうでもいい小さなプライドに固執して火花を飛ばしているというストレスフルな環境が多い。

　まだITという言葉がなかった頃、日本の情報産業はたしかサービス業に分類されていたと記憶している。ITエンジニアはエンジニアであると同時にサービス業に従事する人でもあるのだ。

　IT業界とホテルや旅館のサービスを同列に語るのは無理があるかもしれない。 しかし、お客様にシステムという商品を提供をしてその対価をいただくという業態である以上、私たちの仕事はサービス業といっても過言ではない。

　最近ちょっと投げやりかなとお思いのITエンジニアの皆さまは、プログラムスキルの上達や人脈を広げる事、経営を語る前に、周りを心地よくさせる「清潔感と優しさに満ちた凛としたサービス業従事者」という事を今一度再認識してみてはどうだろうか？

えっ！それって私の事ですか？・・・ううむ、肝に銘じて気をつけてまいります。