キャリア&転職研究室|ITエンジニアのおにぎり|第45回 「バカ枠」

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ひげぱわーって誰?

1964年生まれ/大阪在住

・小学校高学年あたりから、学業そっちのけで自分はプロのミュージシャンになるという妄想を抱き続ける。
・大学卒業間近に妄想力尽き就職する羽目になる際に適当にIT業界を選ぶ。
・知らぬ間に1000人企業の支店でシステム部統括マネージャと言われてしまう。
・現在社員数10名ちょいのベンチャー会社マネージャー

 童顔を隠すため無精ひげを生やし「若干不良が交じったイケてるアントンプレナー風」を演出してみるが昨今は年齢もあって普通におっさん化してるような気がする。
たいした技術力はないが、笑って仕事ができる環境を作り上げる技術力はきっとあるんじゃなかろうかと思ってるし、寧ろそれが本当の技術力と豪語したりしてる。

バカ枠

 今年春の大卒内定率が68.8%(2010年12月1日現在)と非常に悪い状態になっているらしい。
 これはIT業界にいると想像に難くない。新卒でIT業界にエンジニアとして入るとまずやる事は、やはりソフトウェアを作る作業なわけだが、元々景気が悪い上に、その工程がどんどん海外に流出しているから、新卒の方に経験を積んでもらうべきソフトウェア製作の仕事がない。
 千人強の社員を抱える某SI会社の人事課長と採用について話していても、完全に買い手市場の今、自社の新卒採用活動は建前で、実際に採用するのは中堅の即戦力エンジニアが中心になると言っていた。
 データはないが、たぶん大卒内定率130%ぐらいだったであろうバブル絶頂期に社会人になった私としては、こんなIT業界にしてしまって不甲斐ない、申し訳ないというしかない。

 映画「ソーシャルネットワーク」を観た。
この映画は有名なSNSサイトであるFacebookを創設したマーク・ザッカーバーグとその周辺の人達を描いた映画なのだが、このSNSサイトが元々傲慢なオタク(Nerd)でモテないザッカーバーグが、女性に対する復讐をするかのごとく、Facemashという大学の女子学生の顔写真の品評会サイトを作ったのが原点にあるということに驚くと同時に、アメリカにはそういった、ちょっとしたバカ学生の発想でも、ちゃんと大企業にまで育つというルートがあるという事に感心した。
 そういえばマイクロソフト、アップル、グーグル、ヤフーなんかの世界的なIT企業も、元々は学生の趣味みたいのが原点だ。

 振り返ってみれば、日本の企業ってそういった
"怪しげだがもしかすると大化けする可能性のある人材"
を見出す能力ってあるのだろうかと、ふと思った。
結局は
「一流大学、成績優秀、受け答えはハッキリ、やる気に満ちてる」
という非常に没個性的な採用基準で、学生を画一的にフィルタリングしているだけなのではなかろうかと思う。

前述の人事の方と話していても、
・偏差値ランクXX以下の大学の人は採らない
・適性検査等の試験でXX点以下の人は採らない
・面接でハキハキ話せない人は採らない
という基準データを持っているようだ。

 確かに、コンプライアンスとか内部統制とかセキュリティとかでガチガチになっている昨今の企業としては、そういったテンプレートに沿って学生を集める事で、非常にお行儀のよい、安定し、統制のとれた会社は作れるだろう。
 だが、市場が活性化する時に全面に躍り出る、革新的な商品、技術や発想でメタモルフォーゼする企業にはなれないような気がする。

 佐々木倫子さんが書いている「チャンネルはそのまま」というマンガが好きで読んでいる。地方テレビ局に"バカ枠"で採用され、報道部に配属された主人公が、周囲を巻き込みながら様々な騒動を起こすというお話。
 この"バカ枠"とは
"一流大卒・成績優秀・やる気満々"というテンプレートのような採用基準だと絶対合格しないけど、なにか捨て置けないキラリと光るものがある逸材を採用する為の枠の事。

 私の友人にもこの"バカ枠"な男がいる。
中卒だか高校中退かで、一時ニートをしていたとかそんな低学歴で、Twitterのツイートは「いかにして大根を美味しく炊くか。」という自分の自炊献立の考察ばかりで、毎日大阪城周辺をジョギングし、普段はもの静かだが酔うと街の看板をぶっ壊して回るという、それこそ大企業に応募しても履歴書が速攻ゴミ箱行きの人物だが、実はありとあらゆるプログラミング言語に精通し、多分携帯アプリだろうが大企業の業務アプリだろうが何でも作り上げる事ができるスーパープログラマーである。
 それだけではない。何かと物議をかもし出す、掲示板2ちゃんねるなんかを見ていても、時としてとんでもない画力やプログラミング能力をもったニート?に出会う事がある。
こういった方達もきっと"バカ枠"候補だと思う。

 この超就職氷河期にあえて企業にお願いしたいのは、この「バカ枠」で人を採ってみてはどうですか?・・・いや、というより、この「バカ枠的人材」を見出す能力を持ち、そして採用する気概を出してみてはどうですかという事。

 この"バカ枠"はなかなかバクチ性の高い採用だとは思うのだが、コンプライアンスとか内部統制という名の下テンプレートに当てはめただけのように決まった仕事しかしない会社にとって、少なくとも新しい空気と少々のカオスと、もしかすると会社の本業さえ変えてしまう社史に載るレベルの革新を起こしてくれそうな可能性を秘めていると思う。

 まあ企業がこぞって、こんなイレギュラーバウンドな採用をしたところで一気に内定率が上がる事はないだろうが、もしかすると、こんな一見破天荒に見える人事が、将来的に今の暗い日本企業の活性化を促し、それこそFacebookとかGoogleのような日本のIT業界を湧き立たせる企業の出現を実現したりするのかもしれないと思ったりしている。

 最悪結果が伴わなくても、不況だからと下向いてウジウジやってるより、そんなバカたちと一緒にバカやってる方が、給料上がらなかったって、刺激的で面白そうではないか。

(2011.1.24)

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