1次面接の相手はいきなり社長だった。選考のための面接というよりは、世間話に近い会話が続いた。話の内容はこれまで経験した仕事のことや工業部品を取り巻く業界の状況など、ビジネスに関することが中心。気がつくと1時間半が経過していた。
「経験やスキルを確認するのではなく人柄を見ているのかな、と感じましたね。自然な形で会話ができたので、充実感がありました。仕事に関しては基本的なことを覚えた後は自由にやって構わないと言われたので、とても魅力を感じました」
1週間後に2次面接を受けることが決まった。面接で、その会社は若手が少なく、管理職はほとんどが50代だということがわかった。だからこそ、さまざまな経験をしてきた44歳の山口さんに対する期待は大きかった。
「これからは20・30代の若手社員の採用を積極的に行っていくので、40代のあなたが間に立って若手社員の力を引き出してほしい。会社を成長させていってほしい」
その言葉を聞いたとき、この会社はまだまだ大きくできるはずだと確信。「この会社で自分の力を発揮してみたい」。山口さんの心は決まった。
面接が終わり、会社を後にして10分とたたずに携帯電話が鳴った。内定の知らせだった。
「よし!」
山口さんは小さく、しかし力強くガッツポーズをした。
44歳という年齢、4回という転職回数、一貫性に欠けるこれまでのキャリア。スカウトメールも2通しかこなかった。厳しい展開を予想したが、ふたを開けてみれば2カ月でのスピード内定。今回の転職活動を振り返って、転職活動中の人へのメッセージとして、山口さんはこう語ってくれた。
「一歩踏み出す前に、自分自身を冷静にかつ客観的に判断した方がよいと思います。闇雲に急いでもいいことはありません。また、今回の転職成功はひとえにタイミングです。求人企業の希望と私の適性がマッチした点もタイミングです。なにごとも一期一会です。そのタイミングを逃さないようにすれば希望の転職はかなうのではないでしょうか」 |