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一年間に転職する人の数、300万人以上。
その一つひとつにドラマがある。
なぜ彼らは転職を決意したのか。そこに生じた心の葛藤は。
どう決断し、どう動いたのか。
そして彼らにとって「働く」とは—。
スーパーマンではなく、我々の隣にいるような普通の人に話を聞いた。
第37回 (後編) 山口友義さん(仮名)45歳/営業
44歳、一貫性のないキャリア スカウトメールがこなくても タイミングさえつかめば 希望の転職は必ずかなう!

外資系商社の営業として活躍していた山口友義さん(仮名)は、体調を崩した妻を看病する時間を確保するために退職し、さまざまな仕事をこなしてきた。その後、工業用機械メーカーに幹部候補として入社。業務改革を託されたが、どんな提案をしても社長はなぜか行動を起こそうとはしなかった。やるべき仕事がなく、時間だけが過ぎて行く日々にむなしさを感じ、入社からわずか半年で再度の転職を決めた。

多種多様な仕事の経験が
「一貫性がない」と受け取られてしまう
 

 いざ転職活動を始めるときになって、山口さんは立ち止って考えてみた。44歳という年齢を考えると、次の転職が最後になるだろう。今の会社に転職してまだ数カ月しかたっていないのだから、「安易に転職を繰り返す人物」とみなされることは覚悟しなければならない。知識・経験・能力・結果などあらゆることが求められる年齢だからこそ、どれだけ自分にマッチした会社に出会えるか、そして出会えたときにいかに無駄なく自分自身のスキル、熱意を伝えられるかがカギ。それを十分認識して転職活動を始めなければならない——。

 心の準備を整え、いよいよ具体的に動き出すことにした。まずはネット検索でひっかかった【人材バンクネット】へ登録、キャリアシートを匿名公開した。これまで、さまざまな仕事をしてきた山口さんのキャリアシートは非常にボリュームのあるものになった。しかし、スカウトメールは2通しか届かなかった。

「携わってきた業界もいろいろだし、職種も実際に経験したものとしては営業、マーケティング、人事、プログラマーなど多岐にわたります。私自身としては営業からスタートし、会社運営について段階的にスキルを積んできたつもりですが、『業種も職種もバラバラで一貫性がない』と思われたのかもしれません。スカウトメールで紹介された求人は、私のキャリアの一部としかマッチしていないもの(※1)でした」

 文面だけで自分をわかってもらうことの難しさを感じた山口さんは、このままではまずいと判断し、頻繁にキャリアシートに手を加え、更新するようにした。少しでも多くのコンサルタントの目に止まるように、そして少しでも正しく自分のキャリアを伝えるためだった。

自主的に考え行動できる人材を求める会社に
お互いに求めるものが一致していると感じ応募へ
 

 求人検索も頻繁に行い、気になる求人情報があれば積極的に人材バンクにアプローチした。その過程で応募したのが工業部品メーカーの求人だった。求めているのは次代を担う幹部候補。会社運営についても一定のスキルを磨いてきたと自負している山口さんにとって、魅力的な求人だった。

「求める人材像として『自主的に考え、行動できる方』という一文がありました。私が転職先に求めていたのは、『自分の裁量で仕事ができること』。考えが一致しているとピンときて、すぐに応募しました」

40代の人材にかける期待を感じ
「自分の力で会社を大きくしてみせる」と決意
 

 1次面接の相手はいきなり社長だった。選考のための面接というよりは、世間話に近い会話が続いた。話の内容はこれまで経験した仕事のことや工業部品を取り巻く業界の状況など、ビジネスに関することが中心。気がつくと1時間半が経過していた。

「経験やスキルを確認するのではなく人柄を見ているのかな、と感じましたね。自然な形で会話ができたので、充実感がありました。仕事に関しては基本的なことを覚えた後は自由にやって構わないと言われたので、とても魅力を感じました」

 1週間後に2次面接を受けることが決まった。面接で、その会社は若手が少なく、管理職はほとんどが50代だということがわかった。だからこそ、さまざまな経験をしてきた44歳の山口さんに対する期待は大きかった。

「これからは20・30代の若手社員の採用を積極的に行っていくので、40代のあなたが間に立って若手社員の力を引き出してほしい。会社を成長させていってほしい」

 その言葉を聞いたとき、この会社はまだまだ大きくできるはずだと確信。「この会社で自分の力を発揮してみたい」。山口さんの心は決まった。

 面接が終わり、会社を後にして10分とたたずに携帯電話が鳴った。内定の知らせだった。

「よし!」

 山口さんは小さく、しかし力強くガッツポーズをした。

 44歳という年齢、4回という転職回数、一貫性に欠けるこれまでのキャリア。スカウトメールも2通しかこなかった。厳しい展開を予想したが、ふたを開けてみれば2カ月でのスピード内定。今回の転職活動を振り返って、転職活動中の人へのメッセージとして、山口さんはこう語ってくれた。

「一歩踏み出す前に、自分自身を冷静にかつ客観的に判断した方がよいと思います。闇雲に急いでもいいことはありません。また、今回の転職成功はひとえにタイミングです。求人企業の希望と私の適性がマッチした点もタイミングです。なにごとも一期一会です。そのタイミングを逃さないようにすれば希望の転職はかなうのではないでしょうか」

 
プロフィール
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埼玉県在住の45歳。大学時代に父親が他界したのを機に外資系商社に就職。建築資材の輸入、食品容器の開発などを手掛けた。妻が体調を崩したため会社を退職し、飲食店勤務や運送会社の仕事をしながら生活の立て直しを図った。その後、商社に入社し業務改善を手掛けた後、加工機械のプログラマーとして独立を果たした。3年ほど事業を続けたが、製造業の景気に左右される仕事に見切りをつけ、業務用機器メーカーに入社。会社の体質改善を任されていたのだが、どんな提案をしても社長はまったく動こうとしなかったため、会社ですることがないという状況に陥ってしまった。

山口さんの経歴はこちら
 

私のキャリアの一部としかマッチしていないもの(※1)
「キャリアシートにはこれまでの経験をできるだけわかりやすく書き表したつもりですが、飲食店の店長候補とか、キャリアのごく一部としかマッチしていない求人ばかりで、ちょっとがっかりしましたね」

 
取材を終えて

「転職するなら若いうちに」というのが定説ですが、40代になって転職する方も結構いらっしゃいます。山口さんは紆余曲折があったとはいえ、年齢相応の経験とスキルを持ち合わせた実力者。そうした方が転職先に望むのは、業界や職種、年収などではなく、「自分の裁量で仕事ができる」という「働き方」だった点が印象的でした。

 実力があっても厳しい壁にぶつかるときもあります。それでも、なんとかその壁を突き破ろうと、さまざまな点で努力されたことが、山口さんの転職成功のポイントだったように思います。

 採用側のニーズは多様なので「転職したいけど年齢が高いから無理」と考えている方もあきらめずに行動してみる価値はあるのではないでしょうか。また、山口さんの体験は20・30代で転職を目指す方にとっても、今後のキャリアを考える上で大いに参考になると思います。

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