田之上コンサルタントをはじめ、複数のコンサルタントの力を借りながら、転職活動をスタート。しかし、武田さんの転職活動は大いに難航した。派遣を含めて勤務経験社数が多く、しかも1社ごとの勤務期間の短かさが、企業側にはマイナスと映ったのだ。
「大手企業での経験が多かったので『ブランド企業好きなんじゃないのか?』とか『辞めグセがついているんじゃないのか?』と思われたようです。正社員になりたいと思っていたからこそ、期間限定の派遣の仕事をしていたわけなのですが……。でも、上司の人間性が悪かったとか、社員のモラルが低くて嫌気がさした、なんて話をしても『そんな会社あるわけない』と受け取られ、私の印象が悪くなるだけ。直前職の転職理由は説明のしようがなく、本当に困りました」
約半年かけて20社に応募したが、面接に進めたのは半分にも満たなかった。面接を受けてもうまくいかず、悶々とした。
「転職マニュアル通りにするとコミュニケーション力がないとみなされてしまう。逆にマニュアルから離れると、あまり評価してもらえない。30代の人間としてどういう受け答えをすべきか、毎回悩まされました」
転職活動が長引くほど経済的にも苦しくなり、派遣の仕事ならたくさんあるのだから、もう正社員はあきらめようか(※2)と心が揺らいだ。そんな胸の内を田之上コンサルタントに相談すると、こんな一言が返ってきた。
「あなたを採用しない会社は転職しない方がよかった会社なんですよ。本気でそう思いますよ」。
心から武田さんを励まそうとする田之上コンサルタントの言葉に、心の底から熱いものがこみ上げてきた。
「もう一度だけ、頑張ってみよう」──そう決意した。
武田さんは前の会社の営業職で声が出なくなるほどの精神的ストレスを受けたのにもかかわらず、再度営業職を希望していたのには理由があった。
「前職を中途半端な状態で辞めざるをえなかった事が悔しくて、次も営業で!と思っていたんです。声が出なくなった後遺症で人と対面で話ができなくなっており、とても面接を受けられる状態ではなかったのに(笑)」
しかし、対面は無理でも電話でのやり取りなら可能なのではないか。そう気づいて、田之上コンサルタントに伝えた。すると生命保険会社のカスタマーサービス部門の求人情報を紹介してくれた。多くの女性が活躍している会社(※3)ということだったが、それも長く働ける職場を見つけたいという武田さんの思いを汲んでのことだった。すぐに応募を決め、説明会に臨んだ。 |