なさっていたこと。特に運輸の現場と営業の仕事の両方をこなし、さらにメディカル関係の子会社に移られてからは、ゼロからのクライアントの開拓、マネジメントまでなさっています。このような多様な業務を経験されている点は注目に値するものでした。
というのは、今、物流業界は大きく変わってきており、相手のニーズに的確に対応し、具現化できる人材が望まれています。ただ倉庫の物を運ぶ仕事というイメージではもはやなく、今は経営レベルで流通のコストダウンができるシステムを作り上げることで急成長しています。そのなかで中村さんのような経験をされている人こそが望まれる人材だからです。
また中村さんのキャリアシートを拝見すると、各部署での仕事内容のよくわかる的確な表記だったので、論理的な思考ができる人だとも想像できました。
しかし問題は、せっかくそれだけのキャリアを積んでおきながら、留学のためにあっさり退職なさっている点でした。その目的・意図が、キャリアシートからでは図りかねました。そこで、まずは一度お目にかかりたいと打診をしたのです。
ご本人の帰国を待って実際に会ってお話をうかがってみると、ご本人にとって留学は重要な意味のあることという話でしたが、できれば留学経験を武器に外資系企業など条件の高い転職を希望されていました。またそのためにはこれまでの経験業界や職種とは違う仕事も視野に入れているとのこと。しかし中村さんには、物流業界でのキャリアがあります。ご自分を一番高く評価してくれる物流業界でキャリアを再構築することをご提案しました。キャリアについてはリセット型ではなく、雪だるま型の転職をするほうがよいと判断したからです。ただ、ご自身の「市場価値」を客観的に判断し、自ら納得した人生の選択をしていただくため、ご自分で考えておられる他の選択肢についても比較検討されることを見守りました。
結果として、転職された企業では、新しい発想のできる戦力として高い評価を受けていらっしゃるようです。留学経験で得た語学力や国際感覚を、今すぐに生かす場はあまりないようですが、将来的には期待がもてます。ご本人もそういうことで納得されておられるようです。
中村さんのように、順調にキャリアを積み、さらに上に進むチャンスも抱えながら、あえて退職されるというのは、やはりそれなりにリスクが発生すると言わざるを得ません。それが留学といった前向きなものであっても、その後の転職に必ずしも好結果を生むとは限らないのです。中村さんの場合は、留学の成果と転職を結びつけることにこだわることなく、ご自身の価値を客観的に判断されたので、結果として一層の将来性を秘めた転職ができたのだと思います。
多くの人が転職を考え、転職が特別なことではなくなっている時代になっても、転職事情はひとそれぞれ。その方の個性や考え方をじっくり聞いて、一緒に考えていくというプロセスが欠かせません。そのなかで、高い資質はあるものの、ある意味でユニークな道のりを歩まれた中村さんのような方の転職をお手伝いできたのは、常に1対1で対応することを心掛けている私たちのやり方が正しかったのだと確認できることでもあります。その意味でも、中村さんのこれからの活躍を願ってやみません。 |