「元々私は好奇心が旺盛というか、決まり切った仕事が長く続くとどうしても意欲が薄れてきてしまうのです。ですから、次々に新しい仕事に出会えるこの会社が合っていると感じていました。転勤も多かったのですが全然苦じゃなく、むしろ転勤そのものを楽しんでいたという感じでした」
就職して5年余りが過ぎた頃、本社で新規事業の立ち上げ話が持ち上がった。中村さんは持ち前の好奇心から、創設メンバーの募集に手を挙げる。扱うのはメディカル関係。医療品を病院などへ送る仕事だった。病院を相手にするのは会社としても初めてで、当然手探りでのスタート。これまで経験したことのないマーケティングリサーチを行い、営業を進める。情報を調べ、分析して、実際に行動するというやり方が新鮮であり、興味が深まる。専門知識が増えれば増えるだけ、より深く、細かい対応ができるようになる(※1)。経験を積むことが自らの興味を増幅し、それが結果にもつながる。仕事が楽しかった。気がつけば5年が経過していた。
しかしその後転機が訪れる。会社がメディカル部門を子会社として分離することを決定、それに伴い中村さんも同子会社へ出向となる。しかしその3年後、本社の別の部署への異動を勧められた。そろそろ仕事の要領もつかめてきたころだったので、また新しい仕事をしたいという気持ちから異動を承諾。しかし、異動先で待っていたのは退屈な日々だった。
「食品を扱う部署だったのですが、仕事はもうすでにシステムとして完成されていました。新しく開拓したり改善したりといった余地はほとんどなく、仕事に興味ややりがいを感じることができなかったのです。すぐに、ああ、これは失敗したな、と思いました」
そんな毎日を送るうちに、子供の頃からのある夢がだんだんと頭をもたげてきた。 |