「私はまず、自分の経歴を話し、語学以外にこれといって得意なものなく、経験もないということを素直に伝えました。これは正直なところですし、また、ほかの企業でも同様に説明してきたことでした。すると、中島さんは、少し考えて、メンタルな部分も含めて何かアピールできる点はありませんかと尋ねました」
そこで「性格的には我慢強い方だと思います」と答えてはみたが、小学校のお受験でもないのに、こんな抽象的な話ではしかたないな、と少し恥ずかしい気持ちがした。しかし、中島コンサルタントは笑いもせずに、「何か長く続けたもの、エピソードはありますか」と聞いてきた。
「そういえば、とお話ししたのが、アルバイトのことです。といっても近所のファミリーレストランの厨房で働いていただけだったのですが、学部生のころから大学院を卒業するまで6年間続けてやっていたことを告げると、中島さんは、にっこり笑って、それは十分説得力のあるアピールポイントになりますよと言ってくれました」
物事を長く継続できることは、会社員として働く上で重要な適性のひとつだ。気分が変わったり、ちょっとした障害に当たったりしただけで会社を辞めてしまうような人は、雇う側としては受け入れることができない。そう説明されれば確かにその通りだが、たかがアルバイトの経験だけで、企業にアピールできるものだろうか。上原さんには少し意外だった(※3)。
「意外なことといえば、その会社の募集の条件が営業経験3年以上となっており、私にその経験がないことを承知で、応募を勧めてくれるのにも驚きました。そのことを尋ねると、中島さんは全く問題にされていない様子で、その点は、私が押してみましょう、とおっしゃいました。企業がどんな人材を捜しているかは把握しているので、募集の条件にぴったり当てはまっていなくても、それに相当する能力があれば問題ないのだとおっしゃるのです。私ひとりで就職活動をしていたら到底見つけられない求人でした。なるほど、幾人もの転職相談を受けているプロなんだなと感じました」 |