その会議は本当に最悪だった。
現在運用中のプログラムの改善についての話し合いのはずが、話しているのは社長ただ一人。会議に出席しているほかのエンジニアたちは、自分も含めて、全員が疲労をにじませた顔をして、むっつりと黙り込んでいる。
(この忙しい時に、仕事を増やすなよ)
(プログラマが足りないんだから、思い通りにいくわけないだろ)
(どうせ「改善」しても、満足しないくせに)
誰も口に出していないのに、そんな不満が、エンジニアたちの頭上に渦巻いているのが目に見えるようだ。
「……という状況なので、この点は維持しつつ、バグの発生率を抑えるようにしたい」
——だから、それは何カ月も前に、提案事項も含めてオレが指摘したじゃないか——
冷めた目で社長を見ながら、進藤さんは心の中で舌打ちした。忙しい業務の合間に検証して打ち出した提案を、ロクに聞きもせずに却下された時の悔しさが、じんわりと胸に広がる。
ふと、進藤さんは会議室全体をぼんやりと見渡した。静かな会議室を支配しているのは、緊張感などではなく、倦怠と諦めと自暴自棄。エンジニアたちのしらけきった表情と態度が、不意に進藤さんの頭と胸にズンと圧し掛かった。
——オレ、なんでこんなところにいるんだろう……。いや、こんなところにいちゃいけない——
進藤さんの心の中で、それまであやふやだった気持ちが一気に固まった。
転職しよう。今度こそ、しっかりと成功させよう。
|