それから1週間と空けずにある企業の書類選考が通り、面接へと進むことになった。その企業は、インターネットサービスを扱うベンチャー企業で、ISMS(インフォメーション・セキュリティ・マネージメント・システム)の取得など、ちょうど企業法務部門を強化しようとしている時期にあった。
1次面接では(※4)、法務部門の責任者と役員の2人が応対。職歴など一通りの説明をした後に面接官に、ある用語について質問された。
「『今北産業』というコトバを知ってますか?」
「もちろん知ってます。こういう意味ですよね」
森田さんはがすかさず反応すると、「ほう、そんなコトバも知っているんですね。それならウチの会社でも大丈夫だな」と、会話はそれを基点に急激にうち解けた雰囲気になった。
「今北産業」とは「今来た私にこれまでの流れを三行で説明してください」という意味で、インターネットの巨大匿名掲示板で使われているコトバ。
森田さんは、もともとインターネットでゲームを楽しむなど、サブカルチャー的な嗜好を持っており、話題のWebサイトなどにも馴染み深い。もちろんネット掲示板の存在も古くから知っていた。
その企業には、ネット文化に親しみの深い社員が大勢おり、職場でもネット用語、サブカル用語が飛び交っている。ネットやサブカルになじみの薄い人だと、そういう雰囲気になじめないかもしれない。しかし森田さんなら、そういった恐れはない。職場にすぐになじめる素養は、少々のスキル面の浅さはカバーできると企業側は判断したようだった。
その数日後、2次面接として、条件面などを話し合ったが、その日のうちに内定が告げられた。驚くほどのスピード内定。これまでの経験とは全く異なるパターン。前を見て階段を上っていったらそこにドアを開けて待っていてくれたというほどのトントン拍子の内定獲得だった。
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