キャリア&転職研究室|転職する人びと|第8回・前編 転職に年齢なんて関係ない!

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一年間に転職する人の数、300万人以上。
その一つひとつにドラマがある。
なぜ彼らは転職を決意したのか。そこに生じた心の葛藤は。
どう決断し、どう動いたのか。
そして彼らにとって「働く」とは—。
スーパーマンではなく、我々の隣にいるような普通の人に話を聞いた。
第8回 前編 花田マサルさん(仮名) 46歳/総務
転職に年齢なんて関係ない!3度目の転職で証明した46歳
これまで2度の転職経験を持つ花田マサルさん(仮名・46歳)。3社目の情報サービス会社では、何の不満もなく働いていた。しかし社長の交代がきっかけで、徐々にキャリアの歯車が狂い始めた。
「もうキミには仕事は頼まない!」
社長のひとことで決断した3度目の転職
 
 

 「花田君、ちょっといいかね」

 徹夜明けでもうろうとしていたある日の午前10時、花田マサルさん(46歳・仮名)は社長に呼ばれた。なんなんだ、このクソ忙しいときに。それにしてもこの歳で徹夜は応える。今日は早めに帰ろう……。

 そんなことを思いながら社長室に入った花田さんだが、社長のひとことに耳を疑った。

 「花田君は、私の求めた結果が出せなかった」

 はぁ? 何を言ってるんだこの人は。これまで明らかにキャパを越える仕事を、血のにじむような思いでこなしてきた。会社のために。今日だって徹夜明けなんだぞ。

 怒鳴りたい気持ちをぐっと押さえ、「しかし、限られた時間の中で、精一杯頑張って、最大限の結果を出してきたつもりです」と反論した。

 しかし社長から帰ってきたのはさらに信じがたい答えだった。

 「もう君に仕事は頼まない!」

 もうこれ以上この人には何を言ってもダメだ……。反論する気すら失せた花田さんは、社長室を後にした。

 「もう、辞めてしまおうか……」

 デスクに着き、ゆっくり目を閉じ、目頭を押さえる。深くついたため息は、デスクの上にあるコーヒーを撫で、大きな波紋ができる。その波はまるで、花田さんの心中を表すようであった。

 ある情報サービス会社で総務部長として7年間勤めてきた花田さんは、これまで大きなトラブルもなく仕事を着実にこなしてきた。そのキャリアは順風満帆だったと言っていい。しかし、昨年起こった社長交代劇から歯車が狂い始めた。

 それまではのんびりとした牧歌的な会社であったが、社長交代とともに超成果主義のピリピリとした雰囲気に一変した。

 「それまで1年に2〜3回しかやらない大きな仕事を、5カ月で3つもやれといわれました。しかも社長命令には必ず結果を出さなくてはいけない……。常識で考えても明らかにキャパを越える仕事量なので、全てに結果を出すことは無理だったんですよね」

 そのとき花田さんが抱えていた仕事は、まず本社の移転業務の総指揮。社員1000名超と、決して小さくない規模なのでそれだけでもかなりの大仕事だ。また、株主総会とその後の株主懇親会の仕切り、さらにISOを取得するプロジェクトも並行して動かしていた。その上、社長直々の特命の業務が立て続けに入ってきていた。

 
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 これらをたった5カ月ですべてこなし、結果を出すことは、やはり正気の沙汰ではなかった。

 しかし、花田さんはそのすべてに全力で取り組み、精力的に仕事をこなしていたが、社長には褒められるどころか、結果が出ていない! と追い立てられるようになっていった。

 そして飛び出した「もう君に仕事は頼まない」発言。これ以上の屈辱はなかった。花田さんは転職を決意した。2004年11月のことだった。

これまで培ってきた総務・法務の経験と実績
だから業種にはこだわらない!
 
 

 花田さんは業界・業種にはこだわらず、長年携わってきた総務・労務・法務の仕事を希望していた。ひとくちに「総務」と言ってもその業務範囲は様々だ。会社によっては人事、労務、庶務や簡単な経理業務まで含む場合もある。花田さんには、このすべてに対応できる自信があった。

 「金融とか、よほど特殊な業界でなければどこでもいいと思っていましたね。業界は違っても、総務としてやる仕事はあまり変わらないですから。これまで勤めてきた3つの会社で一通り経験して、ある程度の自信もありましたし」

 

 花田さんが勤めた最初の会社は大規模学習塾(※1)だった。弁護士を目指して司法試験の勉強をしていた学生時代からアルバイトの講師としてスタートし、すぐに教室長に。その後30代で取締役兼地区本部長に就任。マーケティングリサーチ、人事採用、研修、契約業務のほか、経営戦略の策定、執行にも携わり、生徒数、売り上げともに倍増させた。

 2社目は、不動産関連会社(※2)。総務全般と人事、さらに訴訟関係、契約書の管理などの法務業務を担当。特に訴訟業務では、自ら調停書を作成して、東京地裁、東京高裁に頻繁に出入り。多いときには同時に6件の訴訟を扱っていたこともあった。

 そして3社目は某大手人材バンク経由で情報サービスの会社に総務部長(※3)として入社。現在に至る。

 確かに豊富な経験とハイレベルなスキルを持つ花田さんだが、しかし、年齢は46歳。一般的に、35歳を過ぎると求人は少なくなる。転職するに当たって不安は感じていたのではないだろうか?

 「それほど不安はありませんでしたね。あまりそういうことを深く考えるタイプではないんです(笑)。確かに、今の年齢で30歳と同じ平社員から始めることはできませんし、家族もいますので、年収の面でも考えるところはありました。でも、マイナスのことばかりを考えても、良い方向には行かないので。それよりもこれまで培ってきた技術や能力を信じて、自分に合う会社、やりたいことができる会社を探すことに集中しました」

 このポジティブな性格が転職を成功させる大きな武器になる。

これまで経験してきた主な業務及び身につけたスキル
   
 総務
  (稟議書管理、株主総会運営、予算管理、社団法人警視庁管内特殊暴力防止対策連合会の担当)
 人事・労務
  (人事・採用制度の構築、社員の勤怠管理など)
 法務
  (国内、海外取引先との契約管理、コンプライアンスを前提にした契約管理、訴訟、調停、東証2部上場準備)
● 経営企画的戦略分析と実施


年齢などネガティブな面をくよくよ考えるより、自分を信じて前向きに転職活動を進めていった花田さん。次号は希望の会社からの内定をどうやって獲得したかに迫ります。
以下次号「後編」に続く

 
プロフィール
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岡山県出身の46歳。大学卒業後、大手学習塾で取締役として経営戦略に携わる→不動産関連会社で総務部長代理としてテナントとの契約業務、訴訟、施設管理、人事採用などを兼務→情報サービス会社で総務部長として株主総会運営、予算管理に加え、法務関連業務などを経験。20数年間一貫して管理畑を歩む。社長交代をきっかけにして転職活動を開始。今年4月から大手設計会社で総務部長候補として入社
花田さんの経歴はこちら
 

※1 学習塾
「学生当時は弁護士を目指し司法試験の勉強をしていました。時間の融通が利くので試験勉強ができて、お金がもらえるという条件にマッチしていたのがこの会社だったんです。最初はアルバイトの講師として働いていたのですが、上司に誘われてそのまま正社員として就職。司法試験の勉強をしていたことが、後の訴訟や法務の仕事にも生きてますね」


※2 不動産関連会社
「辞めた理由は命の危険を感じたから。貸していたテナントがカジノ賭博で捕まってしまったとき、その問題を解決しようとした過程で、裏の世界の方々が出てきまして。変な電話がかかってきたり、向こうが知ってるはずがないような情報を知っていたり、いろいろ身の危険を感じることもあったので、1年半くらい勤務して辞めました」


※3 総務部長
「総務・法務業務以外にも、ホストコンピュータの運営と、開発案件の取り仕切りまで担当していました」

 
 
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