鈴木さんが登録したのはスカウトメールを送ってきた人材バンクばかりではなかった。
スカウトメールだけでなく、毎週送られてくる「新着求人情報」メール【注7】も欠かさず入念にチェックしていた鈴木さんは、その中にあこがれの企業の求人情報を発見。その求人はエンジニアとしてのスキルを求められていたが、ダメ元でキャリアシートを提出した。応募先の人材バンクは「株式会社キヤリアプロセス」といった。いわば攻めの登録。このアクションが転職活動の大きな突破口となる。
キヤリアプロセスを訪れた鈴木さんを待っていたのは、佐藤いづみコンサルタント【注8】。しかしここでも厳しくもありがたい「愛の鞭」が待っていた。
「30過ぎの女性の転職は難しいんですよ」
佐藤氏はいきなり真顔でこう言った。
しかしもう落ち込まなかった。難しいのは自分でも分かっている。逆にどうやって成功させてやろうか。ファイトがわいてきた。これまでの苦しい転職活動の中で、鈴木さんは精神的にも強くなっていた。
「今思えば、この厳しい言葉も佐藤さんの母心だったと感謝しています」
面談では、求人情報の詳しい説明の後、簡単な経歴をヒアリング。結果、この求人は鈴木さんには難しいという結論に達した。
「思った以上に技術的な知識・経験が必要とされる求人だったので、私も納得しました。元々ダメ元での応募でしたし」
しかしそれで終わりではなかった。その直後、佐藤氏は別の求人情報を提示してきた。外資系IT企業でのアカウントマネジメント業務。鈴木さんは目を見張った。
「直接顧客と会ってサポートができる、まさに私の希望ぴったりの求人だったんです!」
佐藤氏は事前に送られてきていたキャリアシート、職務経歴書、履歴書で、鈴木さんのキャリア、適性、志向性に合う求人情報をいくつかピックアップしていたのだ。
さらに幸運なことに、佐藤氏はこの企業に多くの紹介実績があった。長年の付き合いで、人事担当者とはまさにツーカー。企業が求めるスペック、人物像を深く理解していた。
鈴木さんはその場で応募を依頼した。
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