経理職も選択肢の中に含め、改めて提示された案件は10件。そのうちの6件に応募書類を提出した。会社選びのポイントはただひとつ。自分のキャリア形成に有益な会社か否か。
「目標にたどり着くために有益な仕事が、その会社でできるか、できる規模か、可能性があるかという視点で見ていました。単なるルーティンワークしか想像できない会社は考慮外でした」。目標はあくまでもCFO【注1】。単なる経理ではない。
応募した企業のうち、面接までこぎつけたのが2社。そのうちの一社、カリスマ経営者が指揮を取る大手IT系企業の関連会社に新天地を求めた。2003年も幕を閉じようとする12月のことだった。内定を勝ち取った理由を佐藤さんはこう自己分析する。
「自分を客観的に売り込んだからじゃないでしょうか。できることとできないこと、これまでやってきたことと、これからどうなりたいかを正直に話しました。自分自身をありのままに語り、背伸びをしなかった。【注2】それで結果的に不採用になってもいいと思ってました。今の実力が分かるから【注3】」
面接後も特に手ごたえは感じなかった。「面接は単なる両者のマッチングの問題と考えていました。
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“手ごたえ”というのは私の方に“雇ってほしい”という気持ちがあるときに発生するので、面接後も“どうだったかな?”くらいしか考えませんでした」
さらっと語る佐藤さんだが、この思考・行動を実践するのが困難であることは、実際に転職活動をされた方なら分かるだろう。面接の場ではつい現状よりも自分をよく見せようという意識が働く。また「その会社でこれからどうなりたいか」を明確に答えることも易しいことではない。
「今までやってきた仕事をすべて話し、面接を受けているこの会社なら自分に足りない部分(具体的には連結決算、株式公開など)を身に付けることができる、だからこの会社でなければだめなんだ、というようなことを話しました」
年収交渉はコンサルタントを通しても、直接でも全くしなかった。その理由は「まずは入社してキャリアを積むことが先決」と考えていたから。それも目標に確実に到達するためのひとつの戦略だったのだろう。
しかし内定に至る道のりは決して平坦ではなかった。8月に転職活動をスタートして、内定を獲得したのが12月。かかった期間は5カ月だが、その間も税理士の勉強は継続している。その間、何度か不安に陥ったこともあった。そんなとき、支えてくれたのがイムカ株式会社のコンサルタント・藤崎氏だった。
「不安を感じたときに藤崎さんに電話したら、じゃあ話を聞きましょう、とすぐに会ってくれました。いろいろと相談したら気持ちが楽になりましたね」。その後も藤崎氏は最後までメールや電話で相談に乗ってくれたという。
内定を獲得した2003年冬には、もうひとつの努力が実った。税理士試験【注4】に合格。5年越しの「サクラサク」である。
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