転職を重ねるたびに自分の枠をガリガリ広げている佐藤さんにとって、仕事とは何か【注10】聞いてみた。
「仕事をすることで、目標が立てられますよね。それに向かって頑張っていると、おのずと成長できます。それがうれしいですね」
仕事の報酬は成長の実感。確かに自分で成長を感じているときは、仕事は楽しいし、よりやる気も出る。しかし、目標は必ずしも達成できなくてもいいという。
「自分で設定した目標だから、ここまででいいや、っていうふうに、自分で線引きもできるわけですよ。自分で納得できれば。その後は別の目標、別の仕事に変更すればいいだけのことですよね」
一度決めた目標は何が何でも達成しなければならない──。努力、根性、忍耐・・・・・・そんな呪縛からも自由だ。
また、自分が最後までこだわれるのはどんな仕事のどんな目標か。それは、今後どういう人生を送りたいかというテーマと直結している。
「そういう意味で私にとって仕事とは人生の座標軸のようなものです」
仕事選びは人生選びでもあるということだ。
現在の仕事は楽しいですか? との問いには、「元々何かを調べたり、勉強したりして、新しい知識を覚えることが好きな性格なので、経理の仕事は楽しいですよ」。
覚えなきゃいけないことはまだまだ山のようにありますけどね、と笑顔で答えてくれた。
新しい何かを覚えることによって、自分の限界を広げていくことに喜びを見出す佐藤さんにとって、現在の仕事は天職といえるのかもしれない。だがそれは自分自身と真剣に向き合い、血を流しながらつかんだ天職だ。
今、佐藤さんの前にはさらに急な上り坂が続いている。もちろん舗装された道ではない。しかしどんなに歩きにくい道でも、重いザックを背負ったまま、汗を拭き拭き楽しそうに登っていくだろう。自ら決めた頂に向かって。
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