「頑張って仕事するぞ」という原動力、モチベーションをいかに高めるかは、自分を成長させるうえでかなり大切な要素だ。「できた、わかった、誉められた」の体験もその一つだが、ライバルの存在も、意外と見逃せないのである。
「私は、ライバルがいる環境に身を置くと、想定以上のバイタリティを発揮できるタイプのようです」。田中富美子さん(仮名・31歳)は、27歳のとき転職をした。同じ業界、職種だったのに、自分のこれまでの仕事のやり方では、通用しない会社だった。「入ったばかりだし、だんだんと仕事を覚えていけばいい」なんて気持ちには、とてもなれなかった。その原因は、自分より1つ年下の女性同僚の存在だった。
「自分より社会人経験が少ないはずの彼女と比べて、自分はかなり劣っている」との洗礼を、入社早々に受けたのだ。席が隣というだけでも気になるのに、その年下の同僚とは、いつも同じプロジェクトに放り込まれた。しかも、彼女に任される仕事の量は自分より多い。「とにかく早く、まずは彼女と同じレベルにならなくては」と思った。
「これはまずい」と土日の出勤は当たり前、ちょっとの休みも仕事関連の本を読み漁る。会社にある過去の資料も時間を探して目を通し、先輩や年下同僚の仕事の進め方を観察した。ときどき、プリンターに置かれっぱなしになっていた先輩が作った資料も盗み見た。ちょっとでも得られるものはないかと思ったからだ。「私には、まだまだ足りないものだらけ、とにかく早く追いつきたい」と、気付くと部署の中で、誰よりも長い時間働いていた。
2歳年下の同僚が、大きな仕事を任されたときは、本当に辛かった。先輩に弱音も吐いた。「しょうがないよ。彼女の方がこの会社で2年長く働いているんだから」といわれても、ちっとも慰めにならなかった。
|