実は、転職はこれで6回目だ。バブルのときは、不動産業界で活躍。キャリアアップのため、同業他社に転職もした。今ほど転職がポピュラーではなかった時代。上昇志向は、強い方だったかもしれない。
この頃までは、ひとつひとつ階段をのぼっていけば、その延長線上により明るい未来が待っていると信じていた。だが、バブルが崩壊し、不動産業界から流通業界へと異業界へ転職。コツコツと積み上げてきた経験や知識、仕事へのこだわり、描いていた未来……これらのリセットを余儀なくされたとき、はたと気付いた。
「未来が一つのベクトル上に存在するというのは儚い夢。現実は、混沌としているのだ」と。時代の変化の波は、個人のキャリアなど容赦なく呑み込んでいく。
だからといって、投げやりになったわけではない。 流通業界に転身してからの10年間は、いつも「明日はわからない」という危機感を抱きながら、懸命に働いてきた。自分を信じる気持ちは誰よりも強い。
だから今回も、「無謀」とも言われかねない転職に踏み切った。
それでもこの10年、「高くを望まず人並みでいいとさえ割り切れば、そこそこの標準的な未来が保障される」という幻想の中で生きてしまっていたことを、そして「そんな世の中は完全に消滅したのだ」ということを、痛烈に感じた。
予想以上の苦戦に打ちひしがれたものの、会社を辞めたことは後悔していない。この、そこはかとない自信を裏付けるものを、言葉で説明するのは難しい。経験やスキルのような「キャリア」という言葉では片づけられない、長年の社会人経験と5回の転職を経て獲得してきた「何か」--。
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