キャリア&転職研究室|キャリレボ|30代オンナの戦略転職 子供を産んでも、働きたい!

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キャリレボ

第21回 30代オンナの戦略転職 子供を産んでも、働きたい!

働く女性には、キャリアに2つの壁がある。
結婚と出産だ。

「寿退社せず、結婚してもそのまま働き続ける」は、この10年の間に「普通」のことになった。そして、「子どもを産んでも働き続けたい」も、女性の意識の中では少しずつ「普通」のことに変わりつつある。

しかし、子どもを産んでも働き続けるためには、女性自身が作戦を練り、壁を乗り越えなくてはならないのが現状だ。誰に預けるか問題。いつ産むか問題。そして、産んでも続けられる職場環境を手に入れる問題……。

「31歳、既婚、女性」。この条件だけで、転職活動をしてもかなりの会社からNOと言われるのではないかと思っていた大澤智美さん(仮名・31歳)は、「いつ産むか問題」がず〜っと頭の片隅にあった一人だ。

社会人になって9年目の今、資格スクールで教務の仕事をしている。講師のスケジュール管理や授業の準備、生徒への各種対応など、スクール運営の黒子役。でも、ここ数年、「もっと外に出て自分で商談を決めてくるような、そんな仕事がしてみたい」と思っていた。

そんな不完全燃焼感があったから、子ども欲しいと思いながらも、つくらずにいたのかもしれない。

ある日、転機が訪れた。
「会社が、合併されたんです。就業規則が変わって、労働時間が1時間長くなった。給料が変わらないのに、納得いかないなあと」

この、ちょっとの不満が背中を押した。
「よし、産む前に転職しちゃおう」

子どもを産んでも働ける会社探し
譲れない条件は「育児休業を取った女性がいること」

子どもも仕事も両立したいと考える女性は、子どもを産む前に「長〜く続けられる仕事・職場を手に入れたい」と思うもの。大澤さんも同じだった。「これが最後の転職になるかも、と思ったから、かなり慎重な転職活動になった」

譲れない条件は、4つ。
・給料が下がらないこと
・土日が休み
・ある程度確立したルート営業の仕事であること
・育児休業を取得した人がいること

上記に4つを満たす会社だけに、応募したつもり。
「子ども産むため転職」の第一ステップは、カンペキだ。

やっと出た内定なのに——「この仕事じゃ、育児休業が取れない!」

しかし、転職活動は難航した。
応募しても、書類選考が通らない。新卒で入社した生命保険会社で1年だけ、営業として働いた経験があった。もちろん、わずか1年の経験が評価されるとは思っていなかったから、「営業未経験者でも可」の求人に応募していたのに。

不採用が続いても、「縁がなかったんだ」と割り切った。「ダメならダメで、今の会社に残って働けばいいんだから」

そんなある日のこと。念願の内定が出た。
応募した会社、すでに25社を超えていた。

外資系巨大IT会社のソフトウエアを、企業にPRする仕事だった。とても魅力的に見えた。身分は、アウトソーシング会社の契約社員だが、抜群に知名度の高いIT会社に派遣され、その中で働ける。仕事内容も、希望している営業に近い。

さんざん迷って、ふと我に返った。
「育児休業が、取れない!」

契約社員は、1年ごとに会社と契約を交わして働く。正社員に比べると、「子どもを産んで休みを取った後」に職場に戻れる保障は低い。そう思って、内定を辞退した。

転職活動が長引いたら、産むタイミングを逃すのでは

転職活動をスタートして丸3カ月が経った時、決めた。
「あと2カ月で希望の仕事で内定が出なかったら、子どもを先に済ませちゃおう」

転職した場合、子どもを産むには少なくとも1年、新しい会社で頑張って働いて、「職場への貢献貯金づくり」の時間が必要。そんな出産カウントダウン計画が、頭の中にある。しかし——いつまでも転職活動が長引いてしまったら、産むタイミングを逃してしまうのではとの懸念から、時間を区切ったのだ。

最後の望みをかけて、「人材バンクネット」に登録した翌日、スカウトメールが届いた。
「あなたにぴったりの仕事です」
職種は、コーディネーター兼ルート営業。

「確かに私に向いていそう。これならできるかな」と、ピンとくるものがあった。

「うちはね、育休取った人がいっぱいいるよ」と言われた社長面接

この会社とは付き合いが長くてね、という60代のコンサルタントからは、「この人の紹介なら、それだけで有利なんじゃないか」と思わせる安心感が漂っていた。仕事内容、会社の雰囲気だけでなく、この会社はこういう求職者を好んでいるからこうすると気に入られる、社長の趣味は……と、レクチャーを受けた。

そして社長面接。こんな会話が交わされた。
「結婚してるんでしょ。子どもが出来ても、仕事続けるつもり?」
「はい。定年まで、働きたいです」
「うちは、7割が女性社員だからね。育休取った人もいっぱいいるよ。あなたも取ってもらって、全然かまわないよ」

そしてスカウトメールが届いた日から1ヵ月後、やりたい仕事と産める職場の両方を手に入れた。

働く元気な女性たちは、出生率の救世主!?

もうすぐ有給消化に入るが、「一日も早く新しい会社で働きたい」と気がはやる。 「休んでる場合じゃないよ〜って。早く職場に馴染んで、早く同僚と仲良くなって……。惜しみなく周りの人の仕事をサポートして、この人がいなくなったら困るなと思ってもらえるようないい関係を築きたい。育児休業→職場復帰がうまくいくかどうかの鍵は、一緒に働いている人たちの理解にあると思うんですよね」と逞しい。

働くオンナの「子ども産むため転職」大作戦。 「ぼちぼち子どもを」と考える既婚女性を受け入れてくれる会社なんて、あるの? と不安に思っている人は少なくないだろう。でも、大丈夫。大澤さんの転職活動では、「育休取得者がいる会社」との条件で探した会社のほとんどが、面接で「育休取っても大丈夫ですよ」と、さらりと言ってくれたという。「子どもは産みたい。産んだ後も働き続けたい」を隠すことなくはっきり伝え、長く続けられそうだと思える仕事が見つかるまで諦めなければいいだけだ。

北欧諸国の出生率の高さは、働く女性の多さに比例している。厚生労働白書(平成17年版)によると、日本でも、30代前半女性の労働力率が高い地域の方が合計特殊出生率も高いとの傾向が、緩やかながら出てきているという。

働く女性、一人ひとりの頑張りが、日本の未来をちょっとずつ変えている。

取材・文/中村 陽子(編集部)
デザイン/東 聖子(編集部)

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