キャリア&転職研究室|キャリレボ|このチャンスを逃しちゃダメだ――直感がささやいた「ピンときて転職」

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キャリレボ
第20回 このチャンス逃しちゃダメだ——直感がささやいた「ピンときて転職」
 
社長との面接。思いがあふれ出た。

「アニメやゲーム産業は、今、日陰の身です。新しいメディアは、旧世代の人たちからなかなか理解されず、何かあるとすぐ批判の対象になります。でも、これからの日本を考えた時、この分野を発展させ伸ばしていくしかないんです。何でもやります。給料はいくらでもいいんです」

「わかった、わかった。もうわかったよ」
もう十分だとばかりに、笑いながら社長はいった。
すぐに内定が、出た。

直感で「これは!」と思った転職だった。

いつか起業したい。第一ステップとして選んだコンサルタント
 
中学の頃から「いつか起業したい」と思うようになったという岡田 大さん(26歳)は、大学3年生の時、同級生たちが司法試験や国家公務員上級試験の準備をしているなか、外資系戦略コンサルティング会社のインターンシップを体験した。「起業のためには、自分の頭で考える力が必要になる」と思ったからだった。体験してみて、「この仕事なら、将来のためのビジネススキルが身に付けられるだろう」と実感した。

就職活動でいくつかの会社を受け、ある外資系コンサルティング会社に入社した。

毎朝8時に出社し、勉強の時間を作った。土日も予定の入っていない日は出社して、積み残した仕事や勉強にあてた。

社会人1年目の終わりから、レポート作成業務だけでなく、どんどん現場に出ることができるようになった。
「社会人2、3年目の人間が、部長の立場にいる人と、会社の問題点や取り組むべき課題について対等にやりあえるなんて、コンサルタントだからできること。現場に出向いてたくさんの人の話を聞き、どこに障害があって、なぜうまく運ばないのかを、それぞれの立場で考えることの大切さも学べた。本当に密度の濃い体験ばかりでした」

しかし——。厳しい、苦しい、悔しいの連続でもあった。
「覚えなきゃいけないことがたくさんある、やらなきゃいけないことも意外と地道、なにより自分の力が全く足りてないと思う瞬間ばかりだった」

力不足の自分が苦しい、悔しい
——それでも、いまの自分にできることを、やるしかない
 
2年目のことだった。あるメーカーのコンサルティングを担当することになった。先輩コンサルタントも一緒にチームを組むものだと思っていた。しかし、一人で担当しなくてはならない事態に陥った。常識でも、前例でも、2年目のコンサルタントが一人で担当するなんて、ありえないのに。

月曜〜木曜まで、担当するメーカーの寮に泊り込み、現場に馴染もうとした。来る日も来る日も、現場の意見を聞いて回った。本当は協力し合わないといけないのに、それができないのはなぜか。いろんな立場のいろんな人たちの本音に、問題の本質は隠されている。もちろん、最初から心なんて開いてなんてくれないけれど、現場主義を貫き通しているうちに、だんだんと「あんな小汚い寮に、よく泊まっているなあ。昔はオレもなあ……」と、距離は縮まっていった。

部課長40人を集めたミーティングは、プレッシャーだった。コンサルタントとしてプロジェクトを請け負っている以上、アドバイスをしなくてはならない。経営者に報告もしなくてはならない。

「でも2年目の人間に、長いキャリアを持つその会社のエース級の部課長たちを納得させられるようなアドバイスなんて、できるわけがないんです。小手先の知識を齧ったところで、すぐ見抜かれてしまいますから」

それでも、コンサルタントとして価値は出さなくてはならないのだ。
窮地に立たされた。
「クライアント企業にしてみれば、今回のコンサルティングに何千万円も支払っているわけで、期待も要求も当然高い。でも、僕ができることなんて、限られている。上司になんとかしてくれと電話しても、『申し訳ない、本当にすまない。でも人を送ることができない』としか、言ってくれない」

朝、起きると、ストレスで目が開けられなくなった。
そんな日が続いた。

逃げ出すか、やるか。選択肢は2つしかない。
「その時点での僕がやれることを、精一杯やるしかなかった」

自分にできること。それは、現場に存在する部署間の目に見えない垣根を取り払うこと。
それぞれの立場の意見、考えを、別の立場の人たちにわかってもらえるように伝え、なんとか協力体制にもっていく。そして、現場の声を上に伝える。

「そこで価値を出すしかない、と思ったんです」

このプロジェクトで、コンサルティングに高いお金を払った分だけの満足を、してもらえたとは思っていない。いい仕事ができたとも、とても思えない。それはとても、苦しいことだ。それでも、相手が怒り出して火を噴くことなく、7カ月に渡るプロジェクトを終えた。

いま、この瞬間を逃しちゃダメだ——直感がささやいた
 
コンサルタントになった3年間、苦しい、悔しい思いをいっぱいしながらも、仕事を辞めたいと思ったことは、一度もなかった。会社に対して不満があったわけでも、ない。

「でも、ピンと来ちゃったんですよ」

転職を考えていた同期がたまたま持っていた求人を、興味本位で見せてもらったその時、「これは!」と思ってしまったのだ。

「いま、この瞬間を逃しちゃダメだ」

ゲーム、アニメ産業に対する思いを切々と語り、内定を得たのは冒頭の通りだ。
しかしなぜそんなにも、ピンと来たのだろう?

「いつかはゲーム、アニメ産業でも、仕事をしてみたいと思っていたんです。ただ、コンサルタントの仕事に満足していたし、毎日が忙しかったから、すっかり忘れていた。でもね、日経新聞のゲーム、アニメ記事を切り抜いていたんですよ、習慣で。その業界に行きたいからじゃなく、僕自身のアンテナが切り抜きをさせていたというか。ほとんど無意識なんですけどね」

そういえば、「日本を良くしたい。そのためにはゲーム、アニメ産業を伸ばさなくては」と、学生時代、真剣に語り合っていた。

「昔膨らませたゲーム、アニメ産業への思い入れが、僕の中のどこかの箱に入っていたんだと思う。ここ数年、その箱は閉じていたけれど、求人を見て突然開いた。そんな感じです」

実現したいことの芽を持ち続ければ、縁は向こうからやってくる
 
コンサルタントになら、いつでも戻れる。「この業界に入り込むなら、いましか、ない」との直感の方が、ずっと大切だとの思いに従った転職となった。コンサルタントに比べたら、一事業会社の一平社員の仕事は、ちょっと物足りなさもある。でも、業界そのものが面白くてたまらない。調べ物をしているだけで、わくわくするし、もっともっと知りたくなる。

入社してまだ1カ月。新しい会社の中でどう噛み合って自分のやれることをやっていけばいいのかなと、肩の力を抜いて考えを巡らせている。この業界に入ると決めた以上は、5年はやってみたいと思う。ゲーム、アニメ業界の人たちとの人間関係をつくっていきたいし、いろんなメディアを使ったプロデュースができるようになって、たくさんのお客さんを喜ばせられるといいなと、期待に胸が膨らんでいる。

ピンと来て、転職。
その秘訣は、何?
「すっかり忘れていたんですが……。学生時代に、こんなイメージをつくってたんです。コンサルティングを3年やって、そのあとはコンテンツ系の仕事に就きたいなあと。思えばこのざっくりとした方向性の通りになったわけですね(笑)。『こんなことを実現したい』という思い入れって、本当に大事だと思います。それさえあれば、縁は向こうから訪れてくれる気がするんですよ」


次回は8月22日配信予定
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取材・文/中村 陽子(編集部)
デザイン/東 聖子(編集部)

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