2004年11月、派遣社員の事務員として大学に勤め始めて3年半が経とうとするころ、転職を決意した山本さん。狙う職種は引き続き事務職。この3年半で事務処理能力に磨きをかけ、「英語力(※1)」という新しい武器も身に付けた。事務職として新しい可能性を狙うのもいいと思った。今回は業界・業種のこだわりはなかった。
「二つの職場を経験した結果、仕事選びには、業界や扱う製品ではなく具体的な業務内容の向き不向きが大事だと感じたからです。ただ業務内容が自分に合ってるか、やれそうか、だけをポイントに転職先を考えました」
条件面でこだわったのは、まず労働時間。残業を強制する会社は避けようと思った。
「『働くのが当たり前』という考え方や環境は好きじゃないんですよね。でもただ単に残業をしたくないということじゃありません。残業するかどうかは本人の意識の問題。私の場合、それは仕事が面白いかどうかで決まります。最初から残業を前提にされるのは、私の仕事に対する意識を無視されているようで素直に働くという気になれないんですよね」
年収面でも基準を設けた。現在の年収より最低でも100万円はアップさせたい。それ以下なら転職するリスクに見合わない(※2)と思ったからだ。
試しに大手転職サイトが実施している「年収査定」をやってみた。結果は480万円。これまでの年収が200万円台。これならなんとかなるかも。自分の市場価値に自信をもった。
しかしその自信は転職活動開始後、すぐに打ち砕かれる。ネックになっていたのは「経歴」だった。
「今回応募した企業は全部で14社、そのうち10社は書類審査の段階で落とされたんです。中には『派遣期間はキャリアとして認められない』とか、『正社員の経験が○年以上ないとダメ』とか、『大学の経理は特殊だから一般企業の経理としては通用しない』などの理由もあって、とってもショックでした」
やはり自分のキャリアでは一般企業の正社員復帰は無理なのか。心底落ち込み、一時期転職活動も停滞気味になった。しかし山本さんはあきらめなかった。
「条件的に妥協して『入れる会社』に転職しても、絶対また転職したくなりますよね。不安に押しつぶされそうになったときには、絶対私には正社員になれる能力はあるはずと、自分を信じるようにしました」
根拠なき自信だったら最後までもたなかったかもしれない。しかし大学で働いた3年半で身に付けたスキル、磨きをかけた事務処理能力に対する自信は確固たるものになっていた。雇用形態に関わらず、私自身を評価してくれる会社が必ずあるはず。そう信じて、続々届く不採用通知にもめげず、キャリアシートのブラッシュアップを続けた。
そんな中、一通のスカウトメールが届いた。その内容を一読してピンときた。送り主は株式会社 渋谷人材の吉村穣二コンサルタントだった。
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