住まいと仕事探しに奮闘する日々 　思い切って東京へ来たものの、安定した仕事も住むところもない。何の伝手もないゼロからのスタートだった。 「ボーナスと退職金もあったので、１ヶ月はのんびりしていたら、食費や交通費だけであっと言う間に余裕がなくなってきてしまって。収入がないと音楽やその他やりたい事にも手を付けられない・・・。そこで、新聞で見つけた週給９万円の営業の仕事に行ってみることにしました」 　話を詳しく聞いてみると仕事は完全出来高制の英語教材等の営業販売で、交通費は自分持ちという悪条件。ところが内山さんは、携帯電話の営業販売の経験を思い出し、チャレンジしてみることにする。 「自分にはできると思ってしまったのですよね。でも、なかなか収入につながらないので、友達にも続けるべきではないと怒られました」 　一時はストレス等で体調を崩してしまうほど悩んだが、知人の紹介で安心して住める場所が見つかってから、不思議と道が開けていく。「安心して住めるところが見つかって、やっと落ち着いて仕事探しをすることが出来るようになりました」という内山さん。無料のパソコンセミナーに惹かれて登録に行った派遣会社で、金融機関の仕事を紹介される。 「パソコンと英語が使える仕事をオーダーしたら、この仕事を紹介してくれました。本当は数字の仕事も苦手だったし、女の子ばかり50人もいる職場というのがちょっと不安だったのですけどね」 　実際に働いてみるとスタッフも社員もいい人ばかり。北海道から出てきて間もない内山さんには、たくさん友人ができたことが何よりも嬉しかった。しかし苦手な数字の仕事も、慣れてしまえば内山さんには簡単すぎる業務。職場の雰囲気が好きで1年間勤務するが、もっとスキルを高められる仕事がしたいという気持ちが募り、転職を決意する。 「１年も同じ仕事をしていると物足りなくなるし、派遣だと残業したくてもさせてもらえません。仕事があってみんながまだ残っているのに、途中で帰らないといけない。任せきってもらえないのが寂しくて。やっぱり社員として働きたいなと思うようになりました」 仕事を任されすぎるくらい充実した毎日 　やりがいのある仕事を求めて転職活動をはじめた内山さんだが、正社員で転職できるのか、あまり自信がなかったという。人材バンクはスキルの高い人でないと相手にしてくれないのではないか？という不安があったので、派遣会社にも登録。派遣と正社員の仕事を平行して探していく。仕事紹介の案内がいくつか来る中で、若手の転職支援を得意としている人材バンク、人材活用センターから現在の会社を紹介するメールが届いた。未経験の総務人事の仕事だ。 「求人情報を見たときに、経験はないけれどぜひやってみたいと思いました。前から社会保険とか給与関係の勉強をしてみたかったので」 　未経験の不安が先立つ内山さんに、担当コンサルタントの豊田さんは「やってみたいと思う気持ちがあるのなら、営業経験もあり条件的には問題ないのでチャレンジしてみませんか」と提案してくれた。会社の雰囲気などを詳しく聞いていくうちに、「これもご縁かな」と感じた内山さん。面接を受けにいき、その後はスムースに話が進んでいった。 「内定が決まってからというもの、周囲の人に『すごいね、どうやって転職先を見つけたの』と聞かれてばかり。この１ヶ月で10回以上説明しました（笑）」と内山さん。責任ある仕事をしたいという意欲が採用担当者に伝わったのだろう。派遣の時に感じた物足りなさは、今の仕事ではまったくない。「これから、もっと任され過ぎそうで、頭が痛いくらい」と、嬉しそうに話してくれた。 2001.09.19　Text by Masako Yamada 　 STEP 18歳 ▼ ▼ ▼ 卒業後、地元の電機設備会社に入社。営業事務を経験 19歳 ▼ ▼ ▼ ガス・灯油等販売会社に転職。営業事務と携帯電話営業販売に従事。３年間、営業成績トップの実績を残す 24歳 ▼ ▼ ▼ 上京して半年間、英語教材の営業販売やライブ・ハウスでウェイトレスのアルバイト等をして生活。その後、大手金融機関に派遣社員として勤務する 26歳 ▼ ▼ ▼ 大手アパレルメーカーに転職。総務・人事業務を担当する。休日にはライブ活動も行い、充実した毎日を送っている