キャリア&転職研究室|転職する人びと|第35回(後編)私は一体どうすればいいの!?女の戦いに我慢の限…

TOP の中の転職研究室 の中の転職する人びと の中の第35回(後編)私は一体どうすればいいの!?女の戦いに我慢の限界 スキルアップ転職を決意

     
       
 
一年間に転職する人の数、300万人以上。
その一つひとつにドラマがある。
なぜ彼らは転職を決意したのか。そこに生じた心の葛藤は。
どう決断し、どう動いたのか。
そして彼らにとって「働く」とは—。
スーパーマンではなく、我々の隣にいるような普通の人に話を聞いた。
第35回 (後編) 石井真奈美さん(仮名)37歳/経理
私は一体どうすればいいの!?女の戦いに我慢の限界 スキルアップ転職を決意

11年勤めたシステム開発会社を辞め、紆余曲折を経てようやく念願の経理職に就いた石井さん。ところが後から入社してきた女性社員とのささいな行き違いがきっかけで、人間関係が悪化。ついに修復不可能なまでに……。「こんな会社にいても時間のムダ」と見切りをつけ、新たな目標に向かって歩き出した。

経験不足、年齢の壁……
もう正社員はムリなの?
 

 2007年6月、簿記1級の試験は終わった。前回の試験以降、Aさんとのトラブル、残業等でほとんど勉強ができなかったせいもあり、残念ながら合格は果たせなかった。しかし、石井さんは今後も合格目指して挑戦することを決め、いよいよ転職活動をスタートした。

 転職先を選ぶ際にもっとも重視していたのは職種。経理・総務系の仕事であることだった。企業の規模や業種にはこだわらず、しっかりとキャリアを積める場であることを最優先することにしたからだ。経験年数が少ないため、年収にもあまりこだわらなかった。

 まず、ハローワークに足を運び、求人を検索。経理・総務の求人は数が少なく、希望に合う求人はほとんど見当たらなかった。

「いくつかの会社に応募してみましたが、書類選考で落とされてしまいました。年齢の割にキャリアが不足しているのが原因だったんだと思います。正社員として転職するのはもうムリなのかなと不安な気持ちになりました」

 面接のチャンスが来たらしっかり自分をアピールできるようにと、ハローワークで自己PRのセミナーも受けた。しかし、もともと自分を売り込むことが苦手な上、前職で同僚の女性に「あなたはなってない」と言われ続けた石井さんは、胸を張って自分をアピールすることがなかなかできなかった。

 私、ちゃんとやっていけるのかな──。石井さんはすっかり自信を失ってしまった。

「履歴書や職務経歴書もそうなんですが、自分のこれまでの経験について『こんなのたいしたことではないだろう』と思って、つい控え目になってしまうんです。ハローワークのセミナーで、『たいしたことがあるかないかは企業側が判断すること。自分が努力したことや改善できたことは、些細に思えるようななことであってもアピールすべき』と言われてナルホドと思い、その後は細かく記載するようにしました。」

【人材バンクネット】と出会ったとき
可能性が広がる期待感を持った
 

 思うような求人情報が得られず、手詰まりになった石井さんは、7月になってインターネットで転職情報を探し始めた。【人材バンクネット】に出会ったのもそのときだ。さまざまな求人情報を持つ人材バンクが集まるサイトだから、もしかしたらチャンスがあるかもしれない、と期待し登録。サイトの記事を隅から隅まで読み込み(※1)、7月末にキャリアシートを公開した。

「初めにキャリアシートを公開するときが勝負だな、と思いました。人材バンクのコンサルタントはさまざまなキーワードでキャリアシートをチェックしていると思うので、より多くのスカウトメールをもらえるように、自分のキャリアやスキル、アピールしたいことを詳細に書きました」

 その作戦が功を奏したのか、キャリアシートを公開するとすぐに5通のスカウトメールが届いた。石井さんは、各人材バンクのホームページを熟読。そして再度スカウトメールの文面を見直した。経理職を目指すという自分の希望を理解してくれていると感じるスカウトメールに返信した。

 面談に臨むと、「キャリア不足を補うため、正社員にこだわらずに経験を積むことを優先しては?」と提案するコンサルタントもいたが、石井さんのマイナス材料を全く指摘せず、前向きに求人を紹介してくれるコンサルタントもいた。

「コンサルタントによって、意見が異なるので複数の方とお話してよかったと思いました。特に『多少、スキル不足やアピールが苦手だとしても、その会社に合っていると思う方や、その会社の入りたいという強い希望がある方であれば協力にフォローします。弊社は求人企業と強い信頼関係ができているので、自信がなくても大丈夫ですよ』と励ましてもらったときには心強かったですね」

 もしかしたら、うまくいくかも──。僅かではあるが、希望が見えてきた。

スケジュールが空いたお盆休み
何気なく向かった面談が運命を決めた
 

 8月上旬、ある人材バンクから紹介された2社に応募し、一次面接を受けた。
その結果を待つ間に、世間はお盆休みに。石井さんはスケジュールが空いたため、さらにほかの人材バンクの話を聞いてみようかという気持ちになり、スカウトメールをもらっていたコンサルタントに連絡を取った(※2)

 面談に出向くと、ある会計事務所を紹介された。石井さんの経験が生かせるようだったので、興味があると答えると「この近くですから、さっそく話を聞きに行ってみませんか」という話になった。急な提案だったので石井さんはびっくりしたが、実際に会社を見れば雰囲気がわかると思って行ってみることにした。

「社長と役員の方がいて私のキャリアや今後の希望などについて、いろいろと話をしました。従業員は10名ほどで、大きな会社ではないけれど、悪い印象はなかったですね」

 その日の晩、石井さんの携帯電話が鳴った。コンサルタントからだった。

「今日、面接した会計事務所ですが、あなたを採用したいと言っています」

「えっ?」

 気楽な気持ちで話を聞いただけのはずが、突然の内定通知(※3)だった。あまりの突然の内定通知に驚いた石井さんは「少し考えさせてください」と言うのが精一杯だった。

「私は自分の市場価値に自信がなかったし、きちんと選考を受けたわけでもなかったので、いきなり採用したいと言われて、とまどいました。1日時間をもらって、いろいろと考えました。選考結果を待っている会社に落ちたら、またイチからやり直し。とにかく、少しでも早く転職したかったし、私を認めてくれたことがうれしかった。担当する会社の経理に全般的に関われるので、勉強になることも多いのではないかという期待もあり、思い切って入社することを決めました」

 内定の知らせを受けてから、5日後に入社。まさに急展開だった。年収は前職よりも下がったが、交渉の末、試用期間が過ぎてからは月数万円上乗せするということが決まった。前職にはなかった残業代も支給されるため、大きな不満はなかった。

もう人間関係には悩まない!
落ち着いてスキルアップにまい進
 

 入社して数カ月。石井さんは精力的に仕事に取り組んでいた。

「仕事は想像していたより、たいへんですね。税務を考慮した経理処理を行わなければならなくなったことでより業務が実務的になったので、勉強になることが多いです」

 新しい職場では、仕事のやり方について同僚と意見を戦わせることもあるが、以前のように人間関係が悪くなることはないという。

「意見をぶつけあったとき、思い切って聞いてみたんです。『私の態度ってダメですか』と。そうしたら、同僚は『仕事をしていく上での議論は構わない』と言ってくれて。安心しましたね」

 人間関係に悩まされることなく仕事に集中できるようになり、石井さんは「転職してよかった」としみじみ実感している。

「本当にやりたい仕事ができるのか、不安にかられた時もありましたが、早く転職先が決まって本当によかったです。今は仕事が忙しいけど、簿記1級と社会保険労務士の取得を目指して勉強を継続していきたいと思っています。自分の時間を作るためにも、いかに仕事を効率的に進めるかを常に考えながら働いています。実際のところはまだまだ難しいですが(笑)」

 経理のプロとして活躍できるよう自分を磨いていきたいという石井さん。コレと決めたらコツコツと努力できる性格だけに、目標を達成する日はそれほど遠くないはずだ。

 
プロフィール
photo

埼玉県在住の38歳。大学卒業後、システム開発会社で情報管理システムの保守などを11年間担当。退職後、1年かけて行政書士とファイナンシャル・プランナー(AFP)、簿記3級の資格を取得。その後、生命保険会社の営業職となるが、半年で退職。派遣社員としてソフトウエア開発会社の事務、リサーチ会社の財務データ収集業務に従事した後、ITコンサルティング会社に入社。総務経理を担当していたが、同僚や経営者との人間関係に行き詰まったのを機に転職を決めた。

石井さんの経歴はこちら
 

サイトの記事を隅から隅まで読み込み(※1)
石井さんは、転職に関するアドバイスやキャリアシートの書き方など、【人材バンクネット】内の記事を丹念に読み込んだという。
「キャリアシートを作成する上でとても参考になりました。ただ、サイトの情報量が多いのですべてを読んでから何かに取りかかろうとすると、どんどん時間が過ぎてしまう。ある程度期間を決めて、いくつかの人材バンクとコンタクトを取りながら進めて行くほうがいいですね」

 

連絡を取った(※2)
「お盆期間は企業も休み。時間が空いてしまうのがもったいなくて、面談してもらえるかどうか、メールで問い合わせました。いつでもどうぞと言われたので、翌日伺いました」

 

突然の内定通知(※3)
石井さん自身「選考を受けた」という自覚がなかったので、内定の知らせをもらったとき、すぐには信じられなかったという。「年収をはじめとする待遇面での条件提示もあったので、本当なんだと思いました」

 
取材を終えて

多くの人が「人間関係」を理由に転職を考えるといいます。仕事や会社を選ぶことはできても、そこで一緒に働く人を選ぶことはできない。それが会社を決める際の難しいところではないでしょうか。

思い切って職場を変える場合、単に現状から逃げるのではなく、石井さんのように自分自身のスキルアップを考慮することが大事だと思いました。

石井さんは自分自身が経験不足というマイナス材料を抱えている上、実家の家業が厳しい状況になったり、ご主人が脱サラを果たしたりと、身の周りのことも考慮しなければなりませんでした。時間的、経済的な制限がある中で希望に近い仕事を見つけ出すのは、かなり難しいことだったと思います。

マイナス材料を克服するため資格取得に挑戦するなど、スキルアップに貪欲なところが転職成功のカギだったような気がします。(田北みずほ)

次回は2月18日配信予定
「転職する人びと」バックナンバー一覧へ
取材・文/田北みずほ

TOP の中の転職研究室 の中の転職する人びと の中の第35回(後編)私は一体どうすればいいの!?女の戦いに我慢の限界 スキルアップ転職を決意