7年目に入っても状況は変わらなかったので、転職を考えるようになり、【人材バンクネット】経由で転職活動を開始。50社ほど応募し、ようやくIT企業の経理職の内定を獲得した。しかし、平行して選考が続いていた別の会社(A社)でも1次面接を通過していた。報酬面ではA社の方が断然高かったので、できればA社に入社したいと考えていた。そこで、A社を紹介してくれた某人材バンクのコンサルタントに相談したところ、「A社の場合、これまで1次面接で通った人は全員内定が出ています。だから内定と思っていて間違いないですよ」と言われ、それならばとIT企業の内定は断ってしまったのだった。
しかし、ただの形式といわれていたA社の面接に行ってみると、重役の前で30分ほど自己アピールをするようにといわれた。これといった準備もしてこなかった滝本さんには青天の霹靂で、満足な受け答えもできず、最終的に不採用になってしまった。しかしもうIT企業の内定は辞退してしまっている。結局、この時点ですべては振り出しに戻ってしまったのだった。
そこで、滝本さんは、太鼓判を押してくれたコンサルタントに相談に行った。しかし、その際の対応は冷たいものだった。
「『それはあなた個人の問題ですから、当社の関知するところではありません(※3)』。ただそれだけでした。それならば、あの時のアドバイスは何だったのでしょう。複数の会社を天秤にかけるのはよくあることで、選択違いは仕方ないにしても、一言、最後の面接も気を引き締めていきましょうと言っていただいていれば……。とても悔しい気持ちでしたね」
50社応募してやっと転職できると思ったのに。これまでの苦労は何だったんだ──。怒りと悲しみでいっぱいだったが、かといっていつまでも立ち止まってもいられない。再度IT企業の内定を辞退したコンサルタントに連絡をとり、「何とかもう一度サポートしてくれないか」とお願いしたところ、大手のソフトウェア会社の経理職を紹介してくれた。これまでの経験から、こんな大手ではきっと内定が出ることもないだろうと、ダメ元の気分で応募した。書類は通過、面接に進む。ここからが滝本さんにとっての正念場だった。
「前回の失敗を踏まえ、今度は自己アピールをしてやろうと面接に臨みました。自分の能力も、うそとはいわないまでも、多少誇大して話したかもしれません。御社の即戦力として働きたいと強くアピールしました。そしたら即座に内定が出て、入社が決まったんです。大手企業だから、まずは安泰。当初の給料は、以前とそれほど変わらなかったのですが、それも勤め上げているうちに上がるとのことでした。これで新しい道が開けたと思ったのです」 |