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TOP の中の転職研究室 の中の転職する人びと の中の第24回(前編)苦渋の4年間を耐えて41歳で派遣から正社員に 転職は運と縁とタイミング!

     
       
 
一年間に転職する人の数、300万人以上。
その一つひとつにドラマがある。
なぜ彼らは転職を決意したのか。そこに生じた心の葛藤は。
どう決断し、どう動いたのか。
そして彼らにとって「働く」とは—。
スーパーマンではなく、我々の隣にいるような普通の人に話を聞いた。
第22回(前編) 進藤祐樹さん(仮名)32歳/SE
この会社にいたらダメになる——自分の可能性を追い求め 2度の転職でつかんだ最高の職場

とある外資系企業で派遣社員として働いていた望月直子さん(仮名)は悩んでいた。もう41歳。そろそろ正社員になりたいけどこれまで細切れのキャリアしかなく、マネジメント経験もない。かといって手をこまねいているとどんどん正社員への道が険しくなるばかり。いったいどうすれば……。望月さんの悩みは深まるばかりだった。

 (またか……)

 外資系企業で派遣社員として働く望月直子さん(41歳・仮名)はパソコンのモニタを見ながら深いため息をついた。モニタには香港の本社からのメールが表示されていた。

「数字が合わないのはどういうことか。至急確認、報告せよ」

 望月さんの担当は経理。月ごとに本国にレポートを提出するのが主な仕事だった。しかし、その書類の在庫数と売り上げの数字が、微妙に合っていなかった。おそらく本社へ報告するために在庫チェックをした後に、営業部員のだれかが商品を断りなく持ち出したのだろう。

 (また今夜も残業か……)

 望月さんのためいきはますます深くなるばかりだった。

40歳までに6度の転職
 

 望月さんは専門学校を卒業後、外資系の企業へ就職、その後、22年間で7社を渡り歩いてきた。主な職種は経理と総務。ほぼ外資系企業だったが、結婚などの個人的理由や、会社都合などでひとつの企業に長く勤める縁になかなか恵まれなかった。仕事が見つからないときは、派遣社員として働いたりもしていたので、結局40歳に届くころになっても、マネジメントの経験がないままだった。

 既婚女性で40歳目前。そうなると企業の食指もなかなか動かない。そんな中見つけたのが香港資本の会社の経理職の求人だった。

正社員の採用のはずが
いきなり派遣社員に
 

「このときは、業界や業種ではなく、とにかく正社員採用にこだわっていたので、すぐ応募しました」

 マネジメント経験のないまま年齢が高くなれば、それだけ正社員としての採用は難しくなる。派遣社員では、企業が買ってくれるキャリアを積むことも難しいし、契約が更新されなければ仕事を続けることもできなくなる。さらに、年齢が上がれば転職そのものが難しくなる。この次に就く仕事は、10年、20年と続けられるものにすること。これが自分に課した条件だった。

 応募後はとんとん拍子で採用決定。ようやく安心して働くことができるとほっとしたのもつかの間、望月さんは会社からの思わぬ仕打ちに愕然としてしまう。

「いつまで待っても雇用契約書が届かないのです。しびれを切らせて会社に問い合わせたところ、本国からの意向で、正社員としての採用はナシになったいう返事。理由は、単に日本での業績が悪いから。そっけないものでした」

 しかし、会社側は、「とりあえず、派遣社員でどうか。業績が上がれば正社員への昇格もありうる」という。ためらいはあったものの、当時無職だったため、これから新しい仕事を探すのも大変だったし、仕事がないよりはいいだろうと、派遣社員としての採用を承諾したのだった。

とにかく理想的な案件が来るのを
待ちながら仕事を続けよう
 

 入社して実際に業務を始めてみると、思った通り派遣社員でありながら、正社員と同様の仕事が課せられた。特に本国に送る決算レポートの作成では、事細かにチェックされ、何か不備があると即座に問い合わせが来る。その応対はなかなか骨の折れる仕事だった。しかし、こうした仕事に長年の経験がある望月さんにとって、それ自体は苦しいというものではなかった。

 問題は、経理の仕事を通して見える会社の業績だった。

 

「経理部にいたので、会社の業績が悪いのがいやでも見えてしまっていました。私の後から入ってくる人もいましたが、すべて派遣社員。これではいずれ正社員にという約束は、まず無理だろうなと思っていました」

 しかし、だからといって、すぐに次につながる仕事を見つけることもできず、やむなく毎日の業務をこなしていくしかなかった。契約更改。査定。契約の打ち切り。そんな言葉を常に意識しながら仕事をする日々。ちょっとしたミスくらいでは解雇されないであろう正社員たちをうらやましいと、正直思ってしまう。

 そんな中での救いは、以前から登録していた【人材バンクネット】(※1)だった。インターネットにアクセスして自分のメールボックスをチェックする。たったこれだけのことなら、日々仕事をしている中でも簡単にできる。少しでも期待が持てるスカウトメールがくれば、とにかく返信した。応募しても、書類選考の段階で落とされる場合も多かったが、仕事を続けながらの転職活動なので、生活に窮するということはない。

「すぐによい求人案件が来るとは期待していませんでしたが、とにかく負担らしい負担もなく転職活動は続けられていたというわけです。私は派遣社員でしたから、もし辞めようと思えば契約更改時に断るだけで簡単に辞めることができます。つまり、いつどんな求人案件が来ても簡単に対応ができるというわけです。そこで、とにかく気長に、いつかきっといい仕事が見つかるだろう、それまでは今の仕事を精一杯頑張ることにしよう、と思っていました」

 年齢も高く、特別なスキルがあるわけでもないとなると、好条件での転職はあり得ない、しかも在職中なら転職活動に割く時間がないからなおさら難しいと、あきらめてしまう人は多いかもしれない。しかし、【人材バンクネット】に登録してキャリアシートを匿名公開した後は、人材バンクのコンサルタントが自分のキャリアを見てくれて、マッチしそうな求人案件を紹介してくれる。まさに「果報は寝て待て」状態で「転職活動」は続けられる。

 あまりキャリアに自信がなく、在職中だった望月さんが少ない負担で転職活動を続けられた理由もここにある。そしてその「果報」はついにやってきた。

 
プロフィール
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東京都在住の41歳。専門学校を卒業し、外資系の企業に入社。その後、海外留学や結婚などを挟み、転職を重ねる。いずれも外資系の企業で、経理・総務を担当。2002年に入社した会社は、正社員採用の約束が派遣社員としての契約に変更されたが、4年ほど勤める。その間に転職活動を続けた結果、イタリア資本のメーカーの経理部門に正社員として採用が決まり、現在は意欲的に活躍している。

望月さんの経歴はこちら
 

【人材バンクネット】(※1)
「以前、転職活動をしていた際、ハローワークのスタッフに相談していたのですが、そのとき、こんなサイトも参考になるのではと紹介していただいたのが、【人材バンクネット】でした。とにかく案件がたくさんあることがわかり、それからは頻繁に利用していました」。

 
次回は2月26日配信予定
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取材・文/有竹 真(ジャネットインターナショナル)

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