「一日中苦情の電話に対応する日々は私にとっては地獄でしたね。苦情の内容で一番多いのがADSL回線を使ったIP電話の着信不良。激昂して怒鳴り散らす人よりも、静かに理詰めで攻めてくるお客さんの方が大変でした。そんな人はなかなか納得しませんからね」
しかし、そんな仕事のストレスよりも関さんを悩ませたのが給料の安さだった。このときの給料を時給に換算すると1000円以下。勤務時間もそれほど長くはなかったので稼ぐといっても限界がある。月給は手取りで16〜17万円。仕事がないときはそれ以下の月も。まさにギリギリの生活だった。
「就労時間がアルバイトの労働規定よりも長かったので、上司に事情を話した上で交渉して契約社員にしてもらいました」
だからといって特別な手当てが付くわけではなく、給料は時給制のまま。メリットは年金、社会保険への加入のみ。契約社員になればなんとかなると考えていたが、それほど会社というところは甘くはなかった。
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「契約社員といっても実質的にはアルバイトのままなので、仕事がないときは極端に出勤日数が減りました。2、3日くらいならのんびりできていいのですが、1週間を超えると気持ちが焦ってきます。仕事をしていないと『僕は社会に必要とされていないんじゃないか』なんて思っちゃって……」
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関さんは今でもこの状態が一番つらかったと当時を振り返る。なにより極端な薄給は生活を圧迫した。外食できるほどの経済的余裕はなく、レトルトの白米にスーパーで売れ残った惣菜という組み合わせで毎日の飢えをしのいでいた。
「スーパーの惣菜は夜9時を過ぎると安くなるじゃないですか。いつもそれを狙って買いに行くんですけど、そんな毎日が続くとだんだんみじめな気分になってくるんですよね。休みの日も外出するとお金がかかることが多いので、自分の部屋にいることが多かったし。頭に浮かんでくるのはお金のことばかり……。そんな毎日が心底イヤでした」
なんとかこの生活と自分自身を変えたい。でもどうすれば……。悶々とした毎日を送っていた関さんの元に一通のスカウトメールが届いた。未来はここから開けていった。
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