現在今井さんは7社目となる会社で、商品企画部のマネジャーとして、新商品の開発や新規事業のプランニングに心血を注ぐ日々を送っている。
「新しいビジネスモデルを確立する仕事は毎日が試行錯誤の連続。しかも大企業だけに周りは恐ろしく優秀で頭のキレる社員ばかり。量質ともに今までで一番キツいです。だからこそやりがいがあるんですけどね」
今井さんは目を輝かせながらこう語った。今まで経験、蓄積してきた接客、販売促進、仕入れ、商品開発、通販、マーケティングの経験、自然食品の知識、人的ネットークを総動員して、毎日必死で戦っている。
「今まで経験してきた仕事がすべて生きているんです。将来何が役に立つが分からないもんですね」
一見脈絡のないキャリアの積み方のように見えるが、その時々で真剣に自分と向き合った。ファミリーレストランから2社目の高級喫茶店へ移るときは「接客」のスキルと「コーヒー」への興味。3社目のコーヒーの通販会社へは「コーヒー」の知識と「通信販売」への興味。4社目の名産品の通信販売会社へは「通販」の経験と「食品」への興味──というふうに、興味を引かれ、身に付けたスキルを生かせそうな仕事を選んできた。
軌道修正もいとわなかった。「本当に自分はこの仕事をずっと続けたいのか?」 接客業から通販業へ転職した理由は、現状と未来の自分のあり方に疑問を感じたからだった。
その過程で軸になりそうなスキルを見つけ、強化。同時に枝葉となる関連スキルを身に付け、キャリアに付加価値をつけてきた。その結果がすべて「今」につながっている。
モチベーションの原点は、ファミリーレストランの次に勤めた高級喫茶店にあるかもしれないと今井さんは振り返る。薄暗い喫茶店でコーヒーを淹れていた22歳のころ、一杯1000円のコーヒーを飲む客を見ながらいつも思っていた。
いつかはカウンターの向こう側へ行きたい──。
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