キャリア&転職研究室|転職する人びと|第3回・後編 上流工程を目指す26歳SEの成長作戦

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普通の人HOTインタビュー 転職する人々
第3回(後編)宮本洋介さん(仮名)26歳/システムエンジニア
未経験のハンデはやる気でカバー 上流工程を目指す26歳SEの成長作戦
やりたい仕事ができる会社へ移りたいが、経験不足がネックになっていた。しかし、信頼できるコンサルタントに出会うことで、一気に状況は好転。選ばれる方から選ぶ方に立場は逆転した。そして宮本さんが選んだのは、なりたい自分になれる会社だった。
人材バンクでいきなりのダメ出し 目からウロコの連続

 転職を決意した宮本さんだったが、SEの本格的な経験がない現状のままでは目指す企業に転職できないことは明白だった。しかも仕事は相変わらずの激務で時間の捻出も難しい。一体どうすれば・・・・・・と悩んでいたところ、購読していたITビジネス系のメールマガジンの広告で【人材バンクネット】の存在を知った。

 広告には、無料で職務経歴書の添削をしてくれたり、面接日、入社日などの日程を企業側と交渉、調整してくれると書かれてあった。

 「これは直接応募よりもかなり楽チンだなと思いました」

 
 

 メルマガのリンクから早速【人材バンクネット】のWebサイトへ飛び、その日に会員登録、キャリアシートを公開した。すると早速その日にスカウトメールが5通も届いた。

「直接応募の転職サイトからは半年で3通くらいしかスカウトメールが来なかっただけに、とてもうれしかったです。今のこんな自分でも会いたいといってくれる人材バンクがあるんだって」

 さらに転職成功談やキャリアシートの書き方などの記事を熟読し、何度もキャリアシートを書き直した。すると更新するたびにスカウトメールは増え続けた。その中でピンときたスカウトメール【注1】約10件に返信。そのうちやってみたいと思う求人情報を送ってきた人材バンク3社に登録に赴いた。

  届いたスカウトメール:60
  返信したスカウトメール:10
  登録した人材バンク:
人材バンクでいきなりのダメ出し 目からウロコの連続
 最初に訪問した人材バンク経由で小規模ソフトハウスのSE職に応募。するといきなりの内定獲得。しかし宮本さんはこれを辞退。技術者を企業に派遣するだけの会社だったからだ。最悪の場合、ソフトハウスからのスタートでもしょうがないと思っていたが、まだ始まったばかり。他にも魅力的な求人を紹介してくれる人材バンクもある。ここは強気に出てもいいと判断した。

 そして2社目の人材バンクへ。ここで再び厳しい現実を突きつけられる。6社に応募して全滅。そのうち3社は面接にすら進めなかった。

「応募先の企業はすべて規模、職種ともに申し分なく、本気で入社したかっただけにかなり落ち込みました」

 やっぱり行きたい会社には行けないのか──。またしても目の前に分厚く高い壁が立ちはだかった。しかし壁を目の前にして立ちすくんでいるひまはない。すぐに気持ちを切り替え、どうして全滅だったのか、その原因を考えたところ、ひとつの答えにたどり着いた。

 「ネットや雑誌で情報収集したり、これまでの過程を思い返したりする作業の中で、人事担当者にやる気や将来性をうまくアピールできていないんじゃないかって気づいたんです」

 でも具体的にどうやってアピールすればいいのだろう。その答えは3社目に訪れた人材バンク「株式会社ファーストキャメルコンサルタント」がもっていた。

 
 
応募:1社
 
面接:1社
内定:1社→辞退
 
応募:6社
 
面接:3社
内定:0社
運命の会社・コンサルタントと邂逅 自動配信メールも見逃すべからず

 スカウトメールの送り主、ファーストキャメルコンサルタントの山田剛コンサルタントとの面談は衝撃的だった。

 山田氏はまず宮本さんの今までの経歴と転職理由、今後目指したいキャリア目標をひととおりヒアリングした後、IT業界の構造を図にして詳しく解説。こんな会社のこんなポジションならこんな経験が積める。目指す目標がここなら、例えばこういうルートで行くのが得策だ。

 宮本さんは視界が急に開けた気がした。

「そんな話をしてくれたのは山田さんが初めてでしたから。おかげでやりたいこと、目指したい道が再確認できました」

 話をしている間にも、「例えばこんな案件もありますよ」と、次々に5〜6件の求人案件を出してきた。そのどれもがやってみたいと思わせる案件だった。

 また、これまでのキャリアと不採用の結果から、すぐさまその原因を指摘。それは宮本さん自身でも感じていた自己アピール能力の欠如。

「山田さんからは、経歴の薄さはポテンシャルと将来性でカバーするしかない。面接時には、これまでやってきたこと、新しい会社に入ってやりたいこと、将来目指す目標を自信をもってはっきり断言するようにとのアドバイスをいただきました」

   その後、職務経歴書のブラッシュアップなど、準備万端整えて6社の求人に応募。するとすべての書類審査を通過した。

 このとき2003年1月。目標の年度末まであと3ヶ月を切っていた。

人材バンクでいきなりのダメ出し 目からウロコの連続
 6社の書類選考に通過して自信を回復したが、ここからがたいへんだった。ほぼ同時進行で行われる面接。仕事の合間を縫い、有給休暇を取りながら一日に複数回の面接をこなしていった。ここでも心強い味方となったのが山田氏だ。

「面接時間の設定、ブッキングなど、企業と交渉【注2】し、ベストな日程を組んでいただいて、たいへん助かりました。ひとりではとてもできなかったでしょうね」

 面接前に講じてくれた対策【注3】が効を奏し、結果は全勝。6社すべてからの内定を勝ち取った。

 一時は「お前には市場価値がない」とはっきり言われて落ち込んだ。自分には転職するだけの力がないと弱気になった。それが有能なコンサルタントに出会うことで一転、選ばれる方から選ぶ方になった。そしてこの中から宮本さんが選んだ【注4】のは、設立以来業績を伸ばし続けている中堅システム会社【注5】

「決め手になったのはやりたい仕事ができることと、目標とする職種・ポジションのキャリアパスがはっきり見えたこと。あとは社長の人柄とポリシーに共感したからです。この人についていきたい、そう強く思ったんですよね」

 社長の話で一番心に引っかかったのが「信頼」。宮本さん自身も大切にしている言葉だった。本物の信頼とは、仕事とは何か。社長の熱い語りにいつしか自分の胸の奥も熱を帯びてくる気がした。

 また、会社組織はピラミッド型ではなくフラット型である点も気に入った。 係長や課長などの中間管理職が存在せず、チームはプロジェクトごとに編成され、トップにリーダーがいるだけだ。フラットな組織で、ひとりひとりがプロとして働いている。そんな印象を受けた。ゆえに成果主義も浸透していた。社長の「仕事の対価は"給料"ではなく、"報酬"と考えてくれ」との言葉が端的にそれを表していた。

 ここでまた一から自分を試してみよう。高く険しい山ほど挑戦のしがいがある。そう思うと、胸の高まりを禁じえなかった。

 
 
応募:6社
 
面接:6社
内定:6社
 
 2003年1月某日。小料理屋で宮本さんは直属の上司である係長にこれまでの経緯、今の正直な気持ちをありのままに話した。

「そうか・・・・・・。おまえは会社にとって必要な存在だから、いなくなるのはすごく残念だ。でも、俺個人としては、おまえが日々の仕事に忙殺されてしまうことなく、もっと成長するために外に出てやってみたいという意識をもってくれたのはうれしい。挑戦してみろ。おまえならできる」

 

 係長はこう言って背中を押してくれた。胸が熱くなった。

「申し訳ありません・・・ありがとうございます」

 それからふたりはこれまで一緒に心血を注いできた仕事やお互いの今後について、グラスを傾けながら語り合った。3軒目の店を出るころには夜も白みかけていた。

人材バンクでいきなりのダメ出し 目からウロコの連続
 新天地に旅立って【注6】そろそろ一年が経とうとしている。期待どおりの会社だったのだろうか。

「いや、それが・・・・・・」

 もしかして当初の話と現実が大きくかけ離れていたのだろうか。しかし次の瞬間目を輝かせながらこう言った。

「想像していた以上でした。すばらしい環境でSEとして鍛えてもらってます。社員もみんな意識が高く、いつも仲間と"俺たちの手で、この会社をもっと大きくしていこう"と言いながら仕事をしています」

 やりたい仕事、優秀なベテランSE、将来へのキャリアパス、ここには望んでいたものがすべてある。あとは自分の頑張り次第だ。もちろん仕事は以前にも増してキツく厳しい。プレッシャーもある。しかし今がとても楽しい。

「やはり仕事自体が好きだからでしょうね。睡眠時間が2〜3時間になることもよくありますが、全く苦になりません」

 人は好きなことをやっているときは寝食を忘れて没頭し、絶大なパワーを発揮する。趣味に興じているときにストレスを感じる人はいない。宮本さんに仕事とプライベートの垣根はない。

 そして今、猛烈なスピードで知識、技術を吸収している。社内のIT化を推進していたあのころのように。

 

「転職サイトや情報誌によく"三年後、五年後の自分をイメージしろ"なんて書かれてありますが、私はそうは思いません。最終的にどうなりたいかという目標だけを設定し、身近にいる仕事ができる人、尊敬できる人に追いつき追い越そうとしていれば、確実に成長できます。そういう意味でも今の職場は最高ですね。追い越したい人の宝庫ですから」

 まだ26歳。お楽しみはこれからだ。

 
 
 
   
僕が通っていた高校は偏差値が低かったんです。そんな僕がこの学歴社会の日本で生き残っていくためには、とにかく手に職をつけないとダメだと思っていました。だから電子工学系の専門学校に進学したんです。ちなみに高校時代にはアルバイトでパソコンを買って独学でプログラミングを勉強したり、パソコン教室に通ったりしてました。
仕事とプライベートの垣根はありません。だからこそ好きなこと、やりたいことを仕事にしたいし、そうすればどんなにつらくてもいくらでも頑張れます。そもそも1日は24時間しかなくて、起きている時間は3分の2ちょっとしかないのに、仕事とプライベートを分けるのって、もったいなくないですか?
人から感謝されることですね。感謝されるとまた頑張ろうという気になれます。また、任される仕事の規模がでかければでかいほど燃えてきます。
僕にとっての幸せな人生とは、周りにどれだけ信頼し合える人がいるかで決まります。その信頼できる人間は仕事を通して得るのが一番。仕事にはその人の人間性、人生観がもろに出ますからね。お互いに心のそこから信頼し合える仲間が集まれば会社だって作れるかもしれません。もちろんプライベートだって充実するでしょう。そうなれば人生、楽しいですよね。
コンサルタントより
 株式会社ファーストキャメルコンサルタント
常務取締役コンサルタント 山田剛氏
明確な目標、スタンスが転職成功のポイントです
  最初に宮本さんの経歴を聞いたときは正直難しいと思いました。企業は即戦力を求めていましたから。  
しかしながら内定を勝ち取れたのは、将来的なキャリア目標など自分の考えをしっかりもっており、なおかつそれをはっきりと言葉で伝えられたことだと思います。応募先の社長も現時点ではスキル不足だけど、将来会社にとって有益な人材になると感じたのでしょう。ポテンシャルがスキルを上回ったいい例だと思います。

コミュニケーション力もしっかりしていました。面談時もこちらの話を真剣に聞いて理解し、アドバイスにも素直に応じてくれました。いいことばかりじゃなくて、厳しいことも言ったんですけどね。そんな誠実さや理解力を感じたこともあり、企業に会ってくれるように頼みました。いい結果が出て私もうれしく思っています。

 
プロフィール
photo
昭和53年生まれの26歳。独身。転職回数1回。昨年4月、社内SEからシステム会社のSEとして転職。
宮本さんの経歴はこちら























【注1】ピンときたスカウトメール
「興味を引かれる求人以外に、こんな仕事やってみませんか? とか、ぜひ会いたい、といったような熱意が感じられるメールに返信しました」














































































【注2】企業と交渉

仕事をしながらの転職活動がどれほど大変かは、経験者なら理解できるだろう。なかなか外出できない職種の人はなおらさだ。直接転職の場合、通常、面接は企業の指定した日時に従われなければならないが、紹介転職ではコンサルタントが企業側と交渉してくれる。

【注3】対策
面接前に山田氏は必ず対策を講じてくれた。面接官の人柄、くせ、聞かれる質問、理想的な答えなどのアドバイスに加え、やる気、ポテンシャルを感じさせるようなアピールの仕方を繰り返し練習した。これが効いた。


【注4】選んだ
「内定をくれた別の会社とすごく悩みました。もう一社は今までの経験を生かせて、即戦力として手腕を発揮できる仕事。さらに年収も高かったんです。当初の期限は1週間だったのですが、2週間ほど悩みました。でもそこもコンサルタントの山田さんが、結論を急かすこともなく、企業と入社日の交渉を行ってくれました。また、結論を出すサポートもしてくれました」


【注5】中堅システム会社
面接は一風変わったものだった。一次面接からマンツーマンの社長面接。ここで宮本さんはほとんどしゃべらせてもらえなかった。社長が自身の仕事の哲学、人生観、企業理念などを時間いっぱいとうとうと語ったからだ。そして最後に「今日の私の話を聞いて、それでも入社したいと思ったら二次面接に来なさい」と言われた。二次面接も社長とのマンツーマンだったのだが、わずか20分たらずで終了。その短い時間で宮本さんは特にこれから何をやっていきたいか、目指すところにフォーカスしてアピールした。











【注6】新天地に旅立って

「転職先の会社からは今すぐにでも来てほしいといわれましたが、入社日まで丸2カ月待ってもらいました。引継ぎをおろそかにしてお世話になった人たちに迷惑をかけたくなかったからです。それを正直に伝えたら先方も分かってくれました。結局初出社の前日まで働いていました。気持ちを切り替えるために、全部スーツを買い換えたりしました(笑)」


























 
取材を終えて

最近の睡眠時間は2〜3時間という激務の中、4時間もインタビューに協力してくれた宮本さん。ダーク系のスーツに細身の体をピシっと包んだそのたたずまいは、経営コンサルタントかIT系企業の若手経営陣という印象。今回も写真を掲載できないのが残念でした。

雰囲気や話し方そのものは柔らかく、論理的であるものの、話す内容は熱い熱い。聞いているうちに私自身もかっかと燃えてくるようでした。やはり目標をもって好きな仕事に打ち込んでいる人は強いと改めて感じました。恐るべき26歳。今後がとても楽しみです。


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