6社の書類選考に通過して自信を回復したが、ここからがたいへんだった。ほぼ同時進行で行われる面接。仕事の合間を縫い、有給休暇を取りながら一日に複数回の面接をこなしていった。ここでも心強い味方となったのが山田氏だ。
「面接時間の設定、ブッキングなど、企業と交渉【注2】し、ベストな日程を組んでいただいて、たいへん助かりました。ひとりではとてもできなかったでしょうね」
面接前に講じてくれた対策【注3】が効を奏し、結果は全勝。6社すべてからの内定を勝ち取った。
一時は「お前には市場価値がない」とはっきり言われて落ち込んだ。自分には転職するだけの力がないと弱気になった。それが有能なコンサルタントに出会うことで一転、選ばれる方から選ぶ方になった。そしてこの中から宮本さんが選んだ【注4】のは、設立以来業績を伸ばし続けている中堅システム会社【注5】。
「決め手になったのはやりたい仕事ができることと、目標とする職種・ポジションのキャリアパスがはっきり見えたこと。あとは社長の人柄とポリシーに共感したからです。この人についていきたい、そう強く思ったんですよね」
社長の話で一番心に引っかかったのが「信頼」。宮本さん自身も大切にしている言葉だった。本物の信頼とは、仕事とは何か。社長の熱い語りにいつしか自分の胸の奥も熱を帯びてくる気がした。
また、会社組織はピラミッド型ではなくフラット型である点も気に入った。 係長や課長などの中間管理職が存在せず、チームはプロジェクトごとに編成され、トップにリーダーがいるだけだ。フラットな組織で、ひとりひとりがプロとして働いている。そんな印象を受けた。ゆえに成果主義も浸透していた。社長の「仕事の対価は"給料"ではなく、"報酬"と考えてくれ」との言葉が端的にそれを表していた。
ここでまた一から自分を試してみよう。高く険しい山ほど挑戦のしがいがある。そう思うと、胸の高まりを禁じえなかった。
|