転職お役立ち情報|基礎から解説!転職現場のサクセスヒント|「スピード内定」の功罪 後編

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エキスパートコラム

基礎から解説!転職現場のサクセスヒント森島 典裕
日々転職マーケットに対峙する専門家が、転職活動アドバイスや考え方のヒントを、基礎から解説。 「キャリアは、自分から切り開く努力をすることが大切!」 と考える現役キャリアコンサルタントの筆者が、転職現場のサクセスヒントを紹介します。
森島 典裕

第9回 「スピード内定」の功罪 後編

 このように、内定に対して回答期限を設定する企業は多く存在します。他社の選考が進み、候補者の気が変わってしまう前に、自社に決めてもらおうという狙いがあるようです。他にも、採用成否の目処が早くつく、次期採用計画が考え易いという利点もあるでしょう。

 しかし、返事をする側の事情はまったく逆です。将来を大きく左右する決断を、限られた時間、限られた情報の中で行わなければならないからです。
 不幸にも、人間は自分のことに関して、なかなか決断できない生き物であり、さらにOさんのように、転職も初めて、業界経験もなしとくれば、不安と焦りばかりで無為に一週間を過ごすことになりかねません。結局、噂や断片的な心象だけで、安易に重要な決断をしてしまうことになるのです。
 
   Oさんにとって、今度の転職は人生の大きな岐路だと言えます。納得のいく決断ができるよう、我々はこう提案しました。

「まず、判断基準を決めましょう。我々が初めて会った頃を思い出してみましょう。なぜ、転職しようと考えたのですか?」
「ひとつは業界の将来性、さらには、私の理想の顧客志向の営業スタイルと現実の相違ですね。」
「それでは、”将来性”と”顧客志向の営業スタイル”が大切な判断基準と言えそうですね。業界全体の成長率や、会社の売上伸び率、マーケットシェアなどを考慮すると、客観的にも”将来性”はあると言えそうですね」
「えぇ。けれど、本当に”顧客志向の営業”ができるかどうか…。採用パンフレットや人事の方の話ではそのようなのですが、イマイチ確信が持てませんね。」
「では、現場の営業担当、特にOさんと年齢の近い方とのオフ面談を設定しましょう。そこで、本音や真実を引き出してください。」
「なるほど。現場に聞くのが、最も信頼できそうですね。しかし、他社との相対的な比較も行いたいのですが…」
「そうですね。ただし、一週間という期限があります。正当な理由や説明なく、期限延長を依頼しては相手の心象を害してしまう恐れもあります。その期限内でできることを考えてみましょう。幸い、両社とも今週、面接が予定されていますね。内定が出たことを正直にお伝えして、企業の将来性を語れる方と営業現場の方を面接に同席してもらいましょう。相対的、絶対的な観点から2つの基準で検討してみましょう」
「わかりました。今度は、私が面接官になったつもりで、色々と質問してみます。」
 
   我々がOさんに提案したのは、次の3つです。

  (1) 判断基準を把握すること
  (2) 絶対的(自分自身の中にある尺度)、相対的(選択可能な選択肢との比較)な観点から検討すること
  (3) 信頼できる情報をできるだけたくさん集めること

 この3つを心掛けていれば、どんなケースでも、かなり合理的な結論を導けるはずです。できれば、Oさんのように自ら積極的に情報を集めてもらえれば、その精度も高まることでしょう。
 
 ちなみに、Oさんは内定を辞退し、まだ活動を続けています。やはり、営業スタイルに相違があったようでした。そろそろ、Oさんの新しい転職プランを考えなければ…。これまでの経緯から、より精度が高く納得できる提案ができるでしょう。

森島典裕 (もりしま みちひろ)

総合商社にて約30年間、人事・広報を中心に、管理系全般の業務を経験。その後、専門学校の非常勤講師を続けながら、カウンセリングの研鑽を積む。現在、株式会社パソナキャレントにて、その幅広い経験を活かし、キャリアコンサルサントとして活躍中。【資格:厚生労働省能力評価試験指定キャリアコンサルタント、教育カウンセラー】
2004.07.15 update 戻る

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