最近ずいぶん暑くなってきましたね。僕は非常に暑がりで、夏にスポーツをやると自分の立っているところに水溜りができるくらい汗をかきます。社会人になって一番苦労したのが、この暑さ対策です。
アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社し、ビジネスマンになりたての頃、8月の暑いさなかに何故シャツを着てネクタイをし、その上にジャケットを羽織らなければならないのか、本当に理解に苦しみました。首周りをネクタイで締め付けているため、体内で発生した蒸気の逃げ場も無く、お昼にランチに行くだけでサウナ状態でした。それだけで毎日体力を大幅に消耗していました。
幸いアンダーセンコンサルティングでは、その後カジュアルサマー制度が導入され、夏はカジュアルな格好が許されるようになりました。僕は、これ幸いとドレスコードを無視し、Tシャツにジーンズや、チノパンといった学生時代と同様の格好で仕事をしていました。
人事部や総務部からドレスコードを注意されても、Tシャツのヘンリーネックを指差し、襟付きだと主張したりして、不良社員のレッテルを早くから貼られることにもなりました。
今、僕は相変わらずカジュアルなスタイルで仕事をしています。しかし、アンダーセンコンサルティング時代のカジュアルスタイルとは全く趣旨を異にします。僕は今、カイリオスという組織の取締役副社長としての立場があります。シャツは必ず襟付きで、ズボンはスラックスパンツ、靴は皮のローファーと決めています。基準は、その格好でフレンチレストランに行っても違和感がないような格好です。組織のリーダーとして、模範となるべく最低限守るべきマナーを遵守します。
このように変わったのは、周囲の自分を見る目と、責任が大きく変化したからです。周囲の社員は、僕を副社長として、また、戦略グループの最高責任者として見ています。僕がだらしない格好をすれば、周囲はカイリオスはそれが認められる文化だと思ってしまいます。また、対外的に僕はカイリオスの顔です。だらしない格好で、カイリオスのブランドイメージを損なうことは許されません。
アンダーセンコンサルティングに入社したとき、髪を伸ばすな、髭を剃れ、シャツは白色以外禁止、ローファーは禁止など、まるで管理教育の中学校のようなルールを定められ、僕は本当に頭に来ました。「そんなくだらないルールが嫌いだから外資系企業を選んだんだ」と叫びたくなりました。僕は、ことごとくそのルールを破り、肩までのロン毛、髭、ホストのような派手なシャツでコンサルティングを行っていました。しかし、入社当時の僕は、コンサルティングの能力も無く、仕事もできず、駄目な奴が格好をつけているだけの状態でした。
もともとコンサルタントという人種は、クライアントから胡散臭く見られがちですが、更に結果を出さない僕は、クライアントから全然信頼されませんでした。
今、僕がクライアント先で仕事をする場合、先ほどお話したカジュアルスタイルで仕事をすることがほとんどです。しかし、クライアントは嫌な顔を全くしません。それはクライアントに対し僕が結果を出し続け、信頼関係をしっかりと築きあげているからです。
思えば、アンダーセンコンサルティングのガチガチのドレスコードも、クライアントとの信頼関係を築く第一歩だったんだと、今は理解できます。
実力がないのに格好だけ良くしようとしても全然魅力的ではありません。今の自分に対する課題でもありますが、周囲の人間に信頼されるような実力を身につければ、周囲の自分に対する認知の仕方も大幅に変わってくるはずです。