僕は講演の場などで、仕事の話をする時に、よく「目線の高さ」という言葉を使います。では、目線の高さとは何なのでしょう。僕は、自分自身に対する満足度のレベルだと思っています。すなわち自分自身に対して持っている誇りの高さです。
僕は、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)戦略グループにジョインした頃、よく「目線の低い奴だなぁ」と言われてきました。僕は、マネージャーやパートナーが言う、この「目線の高さ」という意味が分からずに、こいつら何言っているんだという気持ちでいました。
「目線の高さ」とは自分の目標とするところであり、自分の満足できるところです。言い換えれば、自分で自分を評価している価値の高さです。自分ならここまではやれる、ここまでやらなければ恥ずかしいと思うような価値の高さです。
当時の僕は、彼らが僕に対して期待しているような価値(=仕事の成果)を提供していなかったので「目線の低い」コンサルタントに見えたのでしょう。できるビジネスマンと、できないビジネスマンの違いはここにあると考えます。すなわち、相手の満足度(=期待度)を超えた価値を提供しなければ恥ずかしいと考え、結果を出すビジネスマンはできるビジネスマンです。相手の満足度(=期待度)を超えた価値を提供できなくても自分で満足してしまうようなビジネスマンはできないビジネスマンです。
今、僕がコンサルティングサービスを提供する時、常に心がけているのがこの「目線の高さ」です。自分の目線の高さを、常にクライアントの目線の高さ以上にすることを心がけています。そうすることで、必ずクライアントの期待値以上のサービスを提供できるからです。
時には、クライアントから「この報告書で十分です」と言われても、さらにバージョンアップしたサービスを提供することがあります。自分で勝手に追加で仕事をするわけですから、お金にはなりませんが、自分の仕事として恥ずかしい仕事はしたくありません。「牧田幸裕の仕事」として自分で満足できない以上は、金が入ろうが入るまいが関係ないのです。自分自身を裏切らない仕事をしたいだけです。
しかし、このように自分の目線の高さにこだわってしまうと、なかなか結果が出ない場合もあります。実は今、次世代ユビキタス環境のビジネスモデルに関して、本を出版するべく仕事の合間に執筆をしているのですが、クウォリティにこだわりすぎるがあまり、遅々として執筆が進まないのです。しかし、そうすると書いている内容が時代の流れの進化から置いてきぼりをくい、どんどん陳腐化していきます。
実際は、「目線の高さ」が重要だと偉そうなことを言いながら、このように僕自身その妥協点には結構苦労しています。そういう意味では、「目線の高さ」を維持しつつ、スピード感も失わないビジネスマンが、さらにできるビジネスマンと言えるのかもしれません。