転職お役立ち情報|牧田幸裕のビジネスマンFA宣言|優秀な経営コンサルタントは、優秀な経営者になりえる…

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牧田幸裕のビジネスマンFA宣言

新世紀、転職も自分が企業を指名する“フリーエージェント”の時代に突入した。若くしてコンサルティング会社の副社長に就いた著者が、自身の経験をもとにキャリアの切り開き方、【自分ブランド】の極め方を熱く伝授する。  
優秀な経営コンサルタントは、優秀な経営者になりえるか[2]
 前回は、コンサルティングファームの「突き放し教育」を、その教育を受ける側から分析していきました。そして、僕の結論は、このような教育を受けることで苦しみながらも速いスピードで成長できるというものでした。
 では、この「突き放し教育」は教育する側としてみればどうでしょう。僕は、愛情のない「突き放し教育」は無責任な、リーダーとしての責務を放棄した教育だと考えています。

 リーダーとは、チームの人間にできる限り裁量を持たせ、自由に考えさせ仕事をさせ、そして最後の最後にきちんとけつを拭いてやる人間だと思います。正直、部下に仕事をやらせるよりも自分でやったほうが10倍早くかつ100倍正確にクウォリティの高い仕事ができます。しかし、それをグッと我慢して見守ってやらないと部下は成長しません。しかし、部下が悩み苦しんでいるときには、処方箋を出し助け舟を出す必要があります。この辺のバランスのとり方は難しいです。簡単に処方箋を出せば、部下の自分で考える力は身につかず、処方箋に頼るヤク中になってしまいます。

 しかし、突き放しているだけでは部下は壁にぶち当たり、いずれモチベーションを下げてしまいます。優秀な人材を次から次へと調達できるUPorOUTの組織であれば、そんな部下は要らないということになるのでしょうが、逆にそのような組織ではリーダーたる人間を育成することが難しくなります。処方箋を出したり突き放したりするバランス感覚に悩まず、そのさじ加減を学ばないからです。この辺も、優秀な経営コンサルタントが必ずしも優秀な経営者たりえないという僕の結論の理由でもあります。

 実は僕自身がこの失敗の典型例です。大学講師をしていたとは言え、僕もプロパーの経営コンサルタントのようなものです。最初に刷り込まれた「突き放し教育」が当たり前だと思ったまま、コンサルティングファームのディレクターになりました。そこには様々なバックグラウンドを持った人がいました。戦略コンサルティングのバックグラウンドを持った人、デザインのバックグラウンドを持った人、テクノロジーのバックグラウンドを持った人、バックオフィスの人などです。

 戦略コンサルティングのバックグラウンドを持った人は、ある程度文化の共通認識があるので、僕の「突き放し教育」を理解してくれましたが、その他のバックグラウンドを持った人には理解しようがありません。僕は部下に対して一様に「突き放し教育」を行い、その結果組織のモチベーションを維持・向上させることができませんでした。

 僕も悩みました。部下に自分で考える力を磨いて欲しいと思って、敢えて憎まれ役になって、怒りたくもないのに怒っているのにと考えていました。ただ、それだけではリーダーとして不充分だったのです。当時僕は最年少のディレクターでしたが、10歳以上年上のディレクターと飲みに行った時にいろんな話をしてもらいました。それが、これまで述べてきたさじ加減の話でした。そこで僕は反省し、経営者として自分が身に付けなければならないことを再考しました。

 以上のように、「優秀な経営コンサルタントが、そのまま優秀な経営者たりうる」ということは言えないと僕は考えます。しかし、そのギャップを認識し自分を変革できるのであれば、優秀な経営者になれる可能性は十分にあると思います。今の、僕自身の目標でもあります。
 
 ところで、先日北海道に行ってきました。そこで、僕のよく言うプロフェッショナリズムを考える機会がありました。次回は、プロフェッショナリズムに関して再度お話しようと思います。
ymakita@kairios.co.jp
牧田 幸裕(まきたゆきひろ)
1970年 京都生まれ。京都大学経済学部卒業後、京都大学大学院経済学研究科修了。大学講師を経て、1998年7月アンダーセン コンサルティング(現アクセンチュア)戦略グループに入社。2000年8月、サイエント株式会社マーケティング・ディレクターに就任。日本人最年少のディレクターとして、日本法人立上げに携わる。2001年5月より、ICGコンサルティング副社長。2001年10月、ICGコンサルティングの事業と組織を継承し独立、カイリオスジャパン株式会社取締役副社長に就任。共同創業者。戦略グループ最高責任者。
2001.9.21 update 戻る

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