キャリア&転職研究室|転職する人びと|第2回・前編 「出会い」で開いた突破口

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普通の人HOTインタビュー 転職する人びと
第2回「出会い」で開いた突破口 希望の職へのエクソダス(前編) Page2
手探りで始めた転職活動 見えない未来に不安は高まる
 激務の間隙を縫って始めた転職活動。しかも本格的な活動は今回が初【注5】。手探りの転職活動、見えない未来。
「とにかく、何から始めたらいいのか全く分かりませんでしたから、お先真っ暗って感じでした」

 一時は派遣社員や契約社員も考えた。特に派遣での技術系顧客サービスの仕事は時給がよかった。しかし弱気の虫が頭をもたげるたび、必死で振り払った。

「派遣社員や契約社員は業績が悪くなると簡単に切られます。ここは苦しくとも妥協せずに正社員にこだわろうと思いました」

 
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転職を決意したものの、悩みは尽きなかった。浮かんでくるのはネガティブな思いばかり。不安と孤独の中、頭を抱えるしかなかった
(写真はイメージ)
 無職になった場合、地方出身者で独身の自分はたちまち困窮してしまう。自立した生活を継続するために、クビを切られるリスクは最小限に抑えたい。また、収入面でも派遣、契約よりも高いのが正社員だった。

 それにも増して強かったのが、一生働いていたいとの思いだった。企業の利益活動のために時間と能力を提供して、企業も個人も利益を得る。そんな社会を動かす経済活動に可能な限り参画していたかった。安定して長く働ける正社員にこだわった最大の理由はここにある。

 一方で最悪のシナリオも頭をよぎった。このまま次の転職先が決まらないまま無職になったら・・・・・・。不安のあまり、貯金と毎月の支出でどれくらいもつかという、キャッシュフローシミュレーションまで行った。

「あの頃は正社員にこだわりたいという思いがありつつも、ネガティブ思考に陥っていました。まるで出口のない真っ暗なトンネルの中をひとりで歩いているような感じでした」

 とりあえず、ネットや新聞で探した求人に片っ端から応募した。しかし「不採用」の連続。私は本当に転職できるのだろうか──。

 孤独と不安の中で鈴木さんは途方にくれるしかなかった。

人間関係の中から見えた一筋の光明 「私は商品なんだ!」意識の転換
 他のみんなはどうやって転職活動をしているんだろう──。

 悩んだ鈴木さんは信頼できる会社の同僚に相談してみた。するとその同僚も転職活動中だった。12月の新しい上司の赴任以来、社内には転職活動者が続出。そんな転職仲間の輪が広がっていった。

「社内にこんなにも転職仲間がいるとは想像もしていませんでした。仲間の中には違う部署の人もいたりして、情報をいろいろとくれました」

 急速に広がる仲間の輪はメーリングリスト(ML)まで生み出した。その名も「エクソダス=脱出」。会社からの、そしてこの閉塞した状況からの脱出。転職仲間のMLにこれほどしっくりくる名前もないだろう。

 この「エクソダス」が鈴木さんに新たな光明をもたらした。メンバーのひとりが困っている鈴木さんに中国人の女性ヘッドハンターを紹介。この出会いで転職に対する意識が180度変わった。

「面談した際に、今のあなたではどんな企業も買ってくれない、商品にならない、市場価値がないなど、ボロカスに言われました。自分は価値がない人間なんだと、家に帰って泣きました」

 彼女は年収1,000万円超クラスのビジネスマンしか相手にしないヘッドハンターだっただけに、その言葉が厳しいのも当然だった。会う人を間違ったのでは・・・と思いがちだが、鈴木さんは逆にこの出会いに感謝している。

「彼女に何ができるの? あなたの売りは何? と聞かれたときに、うまく答えられなかったんです。キャリアの棚卸しから売り込みの方法まですべてが甘かった。私のキャリアがどうこうという以前の問題ですよね。おかげで、転職において自分は"商品"なんだと明確に割り切れました。今思えば彼女との出会いが本当の出発点になったんですね」

 これまでは書類選考や面接に落ちるたびに落ち込んでいた。経験者なら痛いほどわかると思うが、「選ばれなかった」というショックは結構大きい。しかし、自分は商品だと割り切ればいちいち落ち込む必要はない。落ち込むヒマがあったら、売れるように少しでも工夫しよう。

 そう思ったとき、気がついた。自分が商品だとすると、職務経歴書や履歴書は自分を包むパッケージ、もしくはパンフレット【注6】だ。それらが魅力的でないと、だれも商品を購入してみようとは思わない。つまり面接→採用に至りにくいということだ。

 でもどうすれば自分をより魅力的にラッピングできるのだろう・・・・・・。インターネットや求人雑誌とにらめっこしたりして、試行錯誤するもやっぱりよくわからない。そんなある日、転職仲間との雑談中にある友人がこんなことを言った。

「転職サイトもいろいろあるけど、私には【人材バンクネット】が一番ね」

 【人材バンクネット】? なにそれ?

 いつの間にか外からはセミの声が聞こえ始めていた。

(以下次号「後編」に続く)

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【注5】本格的な活動は今回が初

前職のサービス会社から現職への転職は、アルバイト雑誌経由だった。しかも派遣社員からのスタートだったので、ハードルは低く、簡単に移れた。その後9カ月の派遣期間を経て、正社員に昇格した

















































【注6】職務経歴書や履歴書は自分を包むパッケージ、もしくはパンフレット

この考え方は、「行列のできる職務経歴書相談所」小林智明所長の言とほぼ同じ。鈴木さんは誰に教えられることもなく、自分の体験からつかんだ








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