運命の日、3月8日がやってきた。
採用試験は、人事担当者と採用部署であるWeb事業部門の責任者との面接、そして筆記試験という流れ。質問は前職での仕事に集中した。新規事業を一人で立ち上げたこと、商品開発のポイント、その後の売れ行き、あのときの苦労は「実績」という形に変わり、高木さんの口からとうとうと語られた。
「うまくいったかな(※6)」。
終了後、やれるだけのことはやったという充実感が高木さんの胸に広がった。
合否を告げられると思った電話口で、滝山氏から意外な言葉が飛び出た。
「Web事業部門は別の応募者に決まったそうです。でも、ほかの部署での採用を考えたいから、もう一度面接に来てほしいそうです」
残念ながら、Web事業に関するキャリアでは、高木さんを上回る経験の持ち主がいたらしい。しかし、高木さんの実績、はつらつとした人柄に興味を持った企業側が別の職種での採用を検討したいと言ってきたのだ。その職種はオリジナル通販商品を開発するプランナーだ。
「基本的には雑貨中心とのことでしたが、チャンスがあれば食品に携わることもできる。今までの経験が生かせるし、これはやってみるしかないという気持ちでしたね」
そして翌日。高木さんの携帯電話が鳴った。滝山氏からだ。さぁ、いよいよ合否の連絡か? 覚悟を決めて、電話に出た。
「ちょっと、私もビックリしてるんですが……。もう一度、選考を行うそうなんです。今度は面接というよりも、与えられた課題に対してプレゼンテーションを行ってもらうそうです」
「えーっ!プレゼンですかぁ!?(聞いてないよー!)」
思いもよらない展開に、思わず声がうわずった。
課題は20〜30代の女性向けの料理本の企画を3パターン考えるというもの。期間は2週間ほどしかない。実はこのとき、高木さんは愛媛県にある実家に帰省していた。
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