中小企業の「強い組織」のつくり方

組織力を把握する

株式会社ヒューマンロジック研究所 代表取締役 古野 俊幸氏

[profile] 関西大学経済学部卒 新聞社、フリージャーナリスト、出版社・教育会社を経て、組織能力開発を専門とする株式会社CDIヒューマンロジックの設立に取締役として参画。小林博士のもとでFFS理論の活用、商品開発、組織変革コンサルティングに従事。これまでFFS理論を三百数十社へ導入、組織の最適化、チームビルディングを担当してきた。著書に「人材の適正配置と最適組織編成マニュアル」(共著)、「組織変革への12ステップ」(組織人事監査協会)その他論文多数。

第1回  組織力を把握する

第一回目は、組織力・人材力について話を進めて行きたいと思います。
組織論の原則は『戦略は組織を規定する』です。つまり、戦略が決まれば、その戦略を遂行する最適な『組織のあり方』が決まるという考え方です。当然、実行部隊が組織であり、人材であるとすれば、一番動きやすい組織の形態や運用方法が決まるのは当たり前のことです。
では、現実問題に目を向けてみましょう。
今、皆さんの会社には、すでに組織があり、人材がいます。ある戦略へ変更しようと思い、戦略を遂行できる「あるべき組織」を明確にしたとします。現実と組織と「あるべき組織」は一致していますか? 一致していませんか? そもそも、そんなことを考えて戦略策定をしていない、とお考えですか?
多くの企業では、戦略は策定するものの、「組織まで考えていない」 もしくは 「考えても、総とっかえできないので、考えても仕方がない」と思いのようです。
その結果、どんなに素晴らしい戦略を立案したとしても、成功確率が上がらないのです。

では、どうすべきなのか?それは、少なくとも現時点の組織力・人材力を把握し、その組織で出来る戦略に、戦略自体を見直すか、その組織で出来る最高の戦術レベルを構築するかなのです。

ただし、戦略でしか勝ち残れないケースも多いですから、その場合は、既存の組織ではなく、新たな組織(戦略的子会社)を構築する必要があります。それは、戦略が違えば、組織のあり方や人材のあり方、人材の活用システムが大きく違うことになり、同じカルチャーでは運用できないからなのです。

戦略策定のための組織体監査

さて、ここまで話をしてきて、何が、抜けているのかがご理解いただけますよね。つまり、現在の組織力・人材力をどう客観的に把握するか、その議論が抜けたままでした。
ここから、どうすれば、客観的な組織力がわかるかです。
「人と組織を把握する」と言えば、総人数、平均年齢、性別、報酬、学歴、職歴、スキル、資格、過去の人事評価を数値化すると思われている人事の方がほとんどです。
輝かしい学歴、職歴、スキルを持っている人材を集めれば、当然高いアウトプットが出る、なんとかなる、と考えているからです。

本当にそうでしょうか?少なくとも我々が組織体監査という手法で、400社ほどの組織の戦力分析をしてきた結果、共通しているのは「スキルや経験の高い人材を集めたからと言って、高いアウトプットは出ていない」 「過去の人事評価が高い人材を登用しても、成功は保障されない」ということです。それよりも、「人間関係という相性がいい組織の方が、高いアウトプットが出ていた」のです。
つまり、一人で業務をしているのであれば、その人の個人的なスキルや能力を把握しておけば具体的な期待値がわかり、結果もほぼその通りなのですが、組織やチームとして組み合わさった状態で業務をしている以上、個々のアウトプットは周りの環境に影響を受けますので、期待値はあっても、その結果がとうなるのかは予想不可能というのが実情のようです。

組織体監査のメリット

我々は、米国海兵隊の最適組織を編成するためのFFS理論を活用して、組織全体の潜在能力を把握する「組織体監査」を実施いたします。
組織を構成しているのが人である以上、組織は「感情を持っている生き物」と言えます。単に、組織図や職位やスキル、過去の人事評価で語るには、あまりに不可思議なものです。A氏はあるチームでは優秀な成績を残したとしても、別のチームに行けば、まったく貢献しないケースもしばしばあるのです。
「コンピテンシーが高ければ、どんな部署でも活躍するよ」。本当にそうでしょうか? 一部の特異稀な人材ではあるかもしれませんが、中小企業ではそんな人材をなかなか集められませんし、集めようとしても、来てくれないかもしれません。

組織体監査とは、今いる人材の可能性を把握するわけですから、組織を 『動態』 として取り扱うことで、潜在力を把握する必要があるのです。
例えば前述のA氏のように「合う−合わない」、「向く−向かない」という配置に起因して、評価が変わるのですから、「潜在力はあるが、今は発揮できない状態だった」ということを把握する必要があります。そして、どの部門・チームへ異動することが潜在力を引き出す方法であるかを認識することが大切なのです。
また、組織をマクロ的に捉える必要もあります。人材が醸し出す組織風土、人材のタイプ傾向、分布。持てる力が発揮されずストレスを溜めている人材は、どこに何人ぐらいいるかということです。

組織全体から見た課題であれば、人材採用や教育手法、評価システム等の組織的な取り組みで解決する必要がありますし、配置や編成に起因する課題であれば、配置や編成で解決していかなければならないのです。
つまり、組織体監査は「現在、組織を構成している人材に着目し、潜在力があるかどうか? あるならば、発揮されているかどうか? 発揮されていないのであれば、何が原因か?」を動態として把握する手法なのです。

組織体監査図

株式会社ヒューマンロジック研究所
コンビネーション・マネジメントのメソッドを活用して、経営支援(組織の最適化、組織変革、チームビルディング、チームマネジメント)、経営代行(労働集約型企業の経営請負)、事業開発(新規事業開発、FC化)を手掛けている
URL:http://www.human-logic.jp/
2003.11.14 update

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