成功するシニアの採用

シニアの採用が失敗するケース

森村 学

ニアの採用が進まない理由を書いてきました。
その多くは、シニアに非があるような内容になっています。確かに、若い世代よりはそのような方が比率的に多いのは事実かもしれません。その結果として、「シニアは○○だ」という先入観が蔓延することになります。
しかし、採用する側に非はないのでしょうか。
もちろん、あります。
様々な話を総合すると、

  1. 採用自体に関わる問題(求人内容や選考プロセスを含む)
  2. 社内体制に関わる問題(経営者自身や社員の問題も含む)

この2点に大別できるようです。
むしろ、この2点のほうが、シニア自身のそれに比べると、はるかに大きな問題となってきます。
「シニアの採用が失敗するのは、企業側に問題がある」と言っても過言ではないかもしれません。

特に社内体制というところ。シニアを中途採用した場合、確実に発生する問題として、「年下上司にどう仕える・年上部下をどう使う」が挙げられます。シニアの採用の失敗と言うとき、往々にして当てはまるケースです。

特に中小企業に多いのですが、「能力主義」「実力主義」と言いながら、採用したシニアの方が能力は高い。当然、上司は年下。実務経験だけでなく、マネジメント経験も浅い。その上、判断力も乏しかったりすると、「能力主義」「実力主義」という図式が成り立たないことになります。
すると、お互いに関係がギクシャクしてくるのは当然のこと。周囲はその上司の味方になる人も多く(付き合いが長い分、当たり前の状況ですが)、そうなるとシニアは孤立する…。小さな事が積み重なっていき、結果的に「シニアを採用して失敗した」という結論に行き着く訳です。
これは前述の“2”にあたるケースです。確かに、上司・部下の役回りを演じきれないシニアにも問題はあるかもしれません。しかしながら、経験不足から来るマネジメント力の欠如も重大な問題です。これは単にマネージャーの問題ではなく、トップマネジメントの問題にもなってきます。自分が任命したマネージャーであること、創業間もない頃から頑張ってきてくれた社員であること等々のパワーバランスのもと、あるいは「任せている」という逃げ口実のもと、「腫れ物に触る」かのように、うまくいかない上司・部下の関係を修正しようとしないケースが多く見受けられるのも事実です。
その他の代表的な事例として、「仕方なくシニアを採用した」というケースです。
この場合、本来はもっと若い世代の採用するつもりで求人を出したところ、いつまでたっても採用できず、年齢の幅を広げていった結果として採用したのがシニアだったというもの。若手がやるような仕事ならば、シニアは難なくこなしていける訳ですが、社内の扱いまでが若手と同じという場合も多々あります。シニアでなくとも、それなりの経験をしてきたビジネスマンであれば、面白く感じないのは言うまでもありません。

そもそも中途採用とは、現状の課題を解決することが目的であるもの。人員不足も経験不足も、企業が抱える課題であるという点では同じことです。その課題を解決するために外部から採用する訳です。
どのような課題があり、それを解決するためにはどのような人材が必要か。それを真剣に考えて人選し、その結果として「シニアの存在が不可欠」となれば、「シニアを採用して失敗した」という話が聞こえてくるはずがないのです。

森村 学(もりむら まなぶ)
株式会社ライフデザインコンサルティング プロフェッショナル・マスターズ事業部 事業部長
1966年生まれ。
システムエンジニア、営業職を経て、2000年、人材紹介業界へ転職。ベンチャー・中小企業を中心に担当。

2006年、監査役・顧問・アドバイザーを専門とした人材紹介サービス「プロフェッショナル・マスターズ」の設立に参画。
豊富な経験と知識を持つ「シニア・プロフェッショナル」を成長企業の常勤監査役や課題解決のための顧問・アドバイザー職としての採用実績を重ねている。
2007.10.4 update

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