経営課題のための人材・組織戦略

経営資源としての人材・3/5

株式会社クイック ヒューマンキャピタル総合研究所

人材という資源の特徴

さて、事業政策を適切に遂行するために、体制政策、なかんずく人材についてはどのように考えればよいのでしょうか。そして、経営資源としての人材とはどのような特徴があるのでしょうか。最大の特徴は、経営において「人材とは最も不確定な変数である」ということです。「ヒト・モノ・カネ」といわれる経営資源の中で、資金であれば、自己資金であれ借入金であれ、1億円は1億円としての価値と機能を果たします。モノにあたる設備や商品も、スペックとして明確に示すことができます。

ところが「ヒト」だけはこのように参りません。今まで、営業第一線でバリバリ活躍していた優秀であると思っていた人材が、企画部門に移ったとたんに精彩がなくなったであるとか、同じ仕事であっても部門や上司が変わった途端業務成績が落ちたということはよくあることです。ましてや、転職などで職場や仕事の進め方が変わるということは、今までのキャリアやスキルが従来どおり活かされるという保証は何らありません。

このような経営における「不確定な変数」であるという人材の特徴が、他の経営資源管理に対する、人材マネジメントの難しさということになっています。私は指導先企業やセミナーの場で、常に企業経営者の皆様にこう伺います。―皆様の企業にとって、人材はコストですか?リスクですか?それともリソースですか?

多くの経営者の皆様がキョトンとした顔をされるのは珍しいことではありませんが、皆様も考えてみてください。装置産業や、高度にシステム化をされた業態の企業でない限り、ましてや大半の中小・中堅企業にとって、人件費というものは固定費の約半分、あるいはそれ以上を占めているのではないでしょうか。まさに人材はコストそのものです。

次に、皆様の企業にも優秀な人材がきっとおられることでしょう。その優秀な人材はいつまでもこのまま皆様方の企業で働き続けてくれるという確信はありますか。優秀な人材は、他社から見ても魅力的な人材です。より良い条件に惹かれたり、またご本人のキャリア形成から考えて、積極的に更に効果的な転職先を発見するかもしれません。

この時、皆様方の企業が失うものは、ただ1人の優秀な社員だけではありません。その社員とともに、貴社のノウハウや情報、さらには顧客もともに去っていくということは度々見受けられることです。この社員がライバル企業にでも行こうものなら、辞めたことに対してその損失は二倍になります。まさに人材は、リスクです。

しかしながら、やはり人材はリソース(資源)です。人材のみが拡大再生産の源であり、働いた分だけの経験と学習をつみ、自らの価値と企業への貢献を高めてくれるのです。その意味ではやはりキャピタル(資本)と申した方が適切でしょうか。人材は使った分消耗する他の資源とは異なるのです。

さて、皆様方の企業の人材は、仕事を通した経験と学習から、自らの価値と企業への貢献を高めているでしょうか。もしも否であるならば、どうしてそのようなことになるのでしょうか。

株式会社クイック ヒューマンキャピタル総合研究所
人材・組織コンサルティング事業(人材開発・組織開発・人材課題・組織課題へのソリューション)、制度企画コンサルティング事業、各種組織管理制度の企画・策定・運営をメインに、人材採用から教育開発・最適配置、組織デザインなど人材と組織における経営課題へのトータルソリューションを展開。
URL:http://919.jp/  E-mail:info-jkai@919.jp
2002.05.06 update

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