経営課題のための人材・組織戦略

経営資源としての人材・2/5

株式会社クイック ヒューマンキャピタル総合研究所

成果を出すプロセス

[表1] をご覧ください。ここでは「事業政策」を与件として、人材が「遵守した行動を取っているか否か」という視座から、成果を出すプロセスを4つの象限に分類しています。この場合、事業政策が不明確であったり、政策がないなどというのは、経営として論外として考慮しておりません。

まず [ I ]の象限ですが、人材は事業政策を遵守した行動をとり成果を出しているという、企業経営としては本来こうあるべきというポジションです。

次に[ II ]の象限は、一部の事業センスが良く、結果的に成果に結びつく行動(事業政策からは外れているが)をとれた人材が組織をリードし、成果を上げた場合です。まさに人材に依存した経営ともいえるポジションです。あるいは、事業政策や人材の行動に関わらず、単に市場の成長という追い風にのって成果がもたらされたという、バブル期の多くの企業のケースもこのポジションにあたります。

[ III ]の象限は、新規事業等で、事業政策がまだ試行錯誤であったり、市場環境が大きく変わり、事業政策の大幅な見直しを迫られている状況を示しています。この場合、事業政策が適確であるとするならば、一部であっても良い成果を出している人材の思考や行動をベンチマークし、他の人材に、成果を上げるための効果的な方法として示すことが有効です。

最後に[ IV ]ですが、これでは事業政策に問題があるのか、それともとっている行動に問題があるのかが評価できません。まずは行動を事業政策に遵守させ、効果測定をしながら、次に事業政策の問題を探るという手順をとらねばならないことが示唆されています。

日本では最近5年ほど人事分野で流行ともなっているコンピテンシーモデルというのは、ハイパフォマー(高業績者)と他の(高業績でない)人々との取っている行動特性の違いに着目したものです。本来は事業政策を遂行するために必要なコンピテンス(発揮可能性の高い潜在能力)を規定することから始めるべきであり、表1の[ III ]の象限で用いられることが最も有効なのですが、多くは[ II ]の象限の中で、現状のハイパフォーマーに特徴的な行動特性からコンピテンシーモデルを策定しがちです。これが、人材に依存しており、経営としての意志が感じられないことに疑問を感じる所以です。

何度も申しあげるようですが、人材マネジメントや人事や組織に関する諸制度というものは、事業政策を与件(前提)として初めて適切に定められ、運用が可能となるのですが、多くの場合、人事部門や人事コンサルタントは、人事という自らの範囲でのみ、体制政策の核となる人材や人事制度を扱おうとして、失敗してしまうことが起きがちです。


[表1]

株式会社クイック ヒューマンキャピタル総合研究所
人材・組織コンサルティング事業(人材開発・組織開発・人材課題・組織課題へのソリューション)、制度企画コンサルティング事業、各種組織管理制度の企画・策定・運営をメインに、人材採用から教育開発・最適配置、組織デザインなど人材と組織における経営課題へのトータルソリューションを展開。
URL:http://919.jp/  E-mail:info-jkai@919.jp
2002.05.06 update

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