経営課題のための人材・組織戦略

経営資源としての人材・1/5

株式会社クイック ヒューマンキャピタル総合研究所

「経営は人なり」とは、よく言われるところであり、私達はなんら抵抗なく納得しがちなのですが、どのような条件下においてもこのことは本当なのでしょうか? また、経営における「人」と一言で申しましても、その「人」とは経営者なのか社員なのか、それも全ての従業員のことなのかよくわかりません。これから皆様と、経営における「人」とその集合体である「組織」について、企業経営(以下経営)という側面から考えてみたいと思います。

人材は"ヒューマンキャピタル"

最近では、人材はヒューマンリソース(人的資源)ではなく、ヒューマンキャピタル(人的資本)であるといわれています。しかし、これが成果主義的処遇制度の導入やダウンサイジング(組織の縮小)により、退職を余儀なくされる人の増加という厳しい現実の裏側で、疲弊気味の人材に対して「あなた方は価値の源泉たる人的資本ですよ」などという、単なる耳ざわりのよい言葉によるねぎらいにすぎない、とは思いたくないものです。

人が使えば「消耗」する資源ではなく「資本」であるというならば、そのことにふさわしいだけの人の活用法が示され、実行に移されねばなりません。いま述べた成果主義や、業績連動型報酬(処遇)というものは、以前から景気や企業業績が悪くなると、名を変え姿を変え、必ず出てくるコンサルティングテーマでした。コンサルティング会社にとっては仕事になるのですから、わざわざ否定することもなく指導がなされていましたが、よく考えてみると、このことが組織としての経営力を伸ばすことへの妨げとなってきたともいえます。

結論から申しますと、経営と人材の関係は「人材に期待はしても、依存はしてはならない」ということです。しかしながら「期待もしていない人材に依存している」経営を、圧倒的に多く見ることができます。そして、その結果が「(成果が)駄目だったから(報酬は)これだけしかだせない」という成果主義であり、業績連動型報酬(処遇)に帰結するわけです。

これでは、主体であるべき経営の責任はどこに存在しているのでしょうか。適確な事業政策を明示したうえで、これを「やった(成果を出した)人には、存分に(報酬を)出す」という、真の意味での成果主義は、今日のように事業政策のあり方を模索している状況下での導入は、なかなか困難であるというのが実状なのです。

では、人材に依存しない経営とは何でしょうか。実はこれを考えることが、「経営は人なり」といわれる「人=経営者」の体制政策のテーマなのです。経営において成果を保証するものは、第一義的には事業政策の適確さであり、これを与件(前提)としてのみ、「経営は人なり」の「人=社員」が活かされるのです。

株式会社クイック ヒューマンキャピタル総合研究所
人材・組織コンサルティング事業(人材開発・組織開発・人材課題・組織課題へのソリューション)、制度企画コンサルティング事業、各種組織管理制度の企画・策定・運営をメインに、人材採用から教育開発・最適配置、組織デザインなど人材と組織における経営課題へのトータルソリューションを展開。
URL:http://919.jp/  E-mail:info-jkai@919.jp
2002.05.06 update

[ この記事のバックナンバー ]