経営にとっての人材・組織・1/2
株式会社クイック ヒューマンキャピタル総合研究所
「経営は人なり」とは、よく言われるところであり、私達はなんら抵抗なく納得しがちなのですが、どのような条件下においてもこのことは本当なのでしょうか? また、経営における「人」と一言で申しましても、その「人」とは経営者なのか社員なのか、それも全ての従業員のことなのかよくわかりません。これから皆様と、経営における「人」とその集合体である「組織」について、企業経営(以下経営)という側面から考えてみたいと思います。
現在のこの厳しい経済環境のなかで、皆様方の企業も多くの問題を抱えておられることでしょう。しかし現在だけではなくかつての高度成長期においてさえ、問題は数多くあったはずです。ただ、経済成長が企業に大きな収益をもたらしていたがゆえに、これらの問題が顕在化しにくかっただけの事なのです。
ではなぜ、経営に問題はつきないのでしょうか。社会環境や経済環境の多様化と変化自体のスピードアップによって、企業にとっては市場構造(顧客と自社、そして競合等との関係)が大きく変わり続けています。これらの変化の中で、皆様方の企業にとっても実施しなければならない事柄があれもこれもと、次から次へと山積していることでしょう。つまり、市場では顧客の支持を得、ライバル企業との競争に勝ち抜くためには、事業としてやらなければならないことに上限がないわけです。そして、これらを実施に移すのは誰でしょうか?
それは、最終的には紛れもなく人材であるわけですが、その人材の特性を考えれば、いくらやることが多いからといっても、機械のように24時間休みも取らず働くわけにはまいりません。つまり、現実的には体制としてやれることには限界があるわけです([図1])。
これらの事柄から、経営に問題がつきないのは「やななければならないことには上限がないが、やれることには限界があるからである」という構成概念を示すことができます。すなわち、経営における問題に対する解決の方向性としては、「あれもこれもではなく、やるべき事を絞り込む」(選択と集中)という事業政策上の課題への対処と、「やれることをいかに増やすか」という体制政策上の課題への対処という、二つの方向性があるわけです。
[図1]