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社員力向上 − 効果的な社内公募制度

経営コンサルタント 佐藤 修一

新年を迎え主要企業のトップが発表した年頭所感からキーワードを拾いだすと「成長加速」、「足場固め」、「社会と調和」の三つのテーマに大別できます。軌道に乗ってきた成長路線を確かなものにしたいという気持ちが強く出ている一方で、品質問題や不祥事への対応として、足元を見つめ直そうというメッセージも込められているように思われます。多数の経営者がイノベーション(技術革新)をテコに成長を加速させようと訴えるのが今年の特徴です。しかしやはりその原動力は、社員力につながると思われます。
今回は、“社員力向上―効果的な社内公募制度”についてお伝えしたいと思います。

ここ数年、企業が社員に対し、不満を抑制し、モラールの低下を防ぐために、社内公募制度、社内FA制度を人事システムに導入することが増えています。厚生労働省によると、従業員5,000人以上の企業では、六割以上が社内公募制度を導入しています。

社内公募制度とは、企業が必要とするポストや職種の要件をあらかじめ社内に公開し、応募してきた者の中から必要な人材を選抜する仕組みです。

他方、社内FA制度とは、社員が自ら過去の経歴や能力、希望する職種や職務を登録し売り込むもので、その情報をみて、受け入れを希望する部門がその社員と面談し、選抜する仕組みです。

前者は、社員が職場や仕事の内容を選べるような環境が生まれ、社員のやる気を喚起する効果があると思われます。

後者は、前者(組織の人材需要を主体とした求人型)に対して、個人のキャリア志望を重視した求職型の制度であるといえます。成果主義、年棒制度、部門業績連動型賞与が広がる中で、社員がより前向きに仕事に取り組める仕組みとして定着してきたと思われます。

一方、「今の部門が気に入らない」などの消極的な理由で応募したり、「せっかく異動しても結局、やりたい仕事ができない」などと不満を持つ社員もいます。適時・適材・適所の人材配置という目的に添わない応募者も多いことから、各企業とも効果的な運用を模索しており、社内公募制度の適用を厳しくしているのが現状です。

特に、現在の仕事から逃れることを目的に、安易に応募する社員は、異動しても事前に描いていたイメージと実際の仕事の相違を感じ、再度応募する場合が多いと指摘されています。

また、特定部門の人材流出によるモラールの低下も懸念されています。ある管理職は、部下が社内公募に応募しないよう、過大な仕事を与えており、社内の不活性化を招いているとのことです。

そこで、社員は

  1. 社員自身が仕事に対する能力、習熟度などを自己評価する。
  2. その後、上司と面談して評価を修正する。

公募する部門は

  1. 求める最低限の能力を数値で社内に公表する。
  2. これを満たさない社員は異動希望を受け付けない。

などの対応をしています。

面談は、応募する社員が自分の適性を見つめ直し、希望する部門の仕事にむいているかどうか冷静に判断できるようにするのが狙いで、社員は「面談で、自分の希望を通すだけでなく、会社が求める能力と自分をどう適合させるかが大事だとわかった」と振り返ることができる大切な要素となります。

すなわち、仕事のできる人の集団作りこそが、会社と社員双方が幸せになれるキーポイントとなることから、会社は「社員が自己実現する舞台」と位置づけられれば、社員は一層活性化され、生産性向上に結びつきます。

総じて、個人のキャリア形成も含め、より効果的な人材マネジメント戦略をおこない、最低限必要な知識が保持できるよう変革をおこなえば、部門の原動力となる知識を維持することが可能となります。

人事部として、会社全体のバランスを考えて公募制度を効果的に活用することは社員力向上にいたる重要な役割になるでしょう。

佐藤 修一(さとう しゅういち)/経営コンサルタント・シニアカウンセラー

住友ビジネスコンサルティング(現 日本総合研究所)にて人事戦略コンサルティングに従事。経営人事に注視し組織欲求と個人欲求の統合を目指す。
※組織変革、人事労務管理、トータル人事システムの構築、能力開発等。
[ アウトプレースメント会社 ]人事コンサルティング事業の構築、求職へのキャリアマッチング、社内カウンセラーの能力開発、スーパーバイザーを担当/
[ 行政機関・大学 ]キャリアカウンセリング、キャリアデザイン、キャリアディベロップメントの講義

[ 資格 ]経営士、経営情報診断士、帳票管理士、監督士、シニアカウンセラー、販売士養成講師、 余暇生活開発士、余暇生活相談員、心理相談員、東京都中高年齢者福祉推進員、東京都アドバイザリースタッフ等
[ 大学/学会等 ]中小企業大学校、千葉工業大学、千葉商科大学、上武大学各講師 国際TA (交流分析)協会名誉会員、日本産業精神保健学会 認定専門職
  • 探究心旺盛なことから、日本でただ一人いる、フロイトの孫弟子に師事し臨床経験からカウンセリング、カルテ、薬等様々に学ぶ
  • 官公庁及び電力会社など公的企業、大手企業を中心にコンサルテーションを実施する
2007.2.1 update