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団塊世代のジレンマ

経営コンサルタント 佐藤 修一

団塊世代の定年(2007年問題)、昭和22年〜24年生まれの団塊世代は約670万人となります。今回は、団塊世代のジレンマについてお伝えしたいと思います。

団塊世代の名付け親、堺屋太一氏によると2007年から始まる団塊世代の大量退職は企業にとって絶好の機会であり、市場には、団塊世代の買い物、洗濯、掃除、ペットの世話などの専門業者ができて、同じ団塊世代がそうした仕事をする。また現状、企業は高齢者向けのマーケットについて無知で、巨大な団塊市場はまだ未開発のままである。これらの人は職業が縁でつながっていた「職業社会」を出て、好みの縁による「好縁社会」で本当の黄金時代が始まると述べています。

この問題に対する認識として、厚生労働省によると、全従業員に占める団塊世代の割合は平均9.2%であり、危機意識を強く感じている製造業全体では30.5%になります。その要因として「意欲のある若年・中堅層の確保が難しい」(63.2%)が最も多く、「技能・ノウハウ等の伝承に時間がかかり、円滑に進まない」(51.1%)となっています。

取組状況では、「必要な者を選抜して雇用延長、嘱託による再雇用をおこない、指導者として活用予定」(40.7%)が最も多く、以下「中途採用を増やす」(21.2%)、「新規若年者の採用を増やす」(19.3%)となります。

対象者へのアンケートでは、60歳を過ぎてからも仕事を持ち続けたい人は80%にのぼり、もう仕事はしないという人は15%。仕事を続けたい理由は「老後の生活費」(61%)、「小遣い稼ぎ」(20%)となり経済的な理由だけでなく、「頭をなまらせないため」(62%)、「やりがいのため」(48%)、「社会に役立ちたいため」(30%)といろいろ考えているようです。

これらを背景として、65歳までの安定した雇用の確保のために延長措置が義務づけられました。(平成18年4月1日より、高齢者雇用安定法)注意する点として、この法律は事業主に継続雇用制度の導入を義務付けているもので、個々の労働者の雇用義務を課したものではないということです。

団塊世代の人が一人退職すると若い人を何人か採用できるかもしれません。就職活動中の学生に「就職活動を一字の漢字でイメージしたら」という調査結果がありました。

  1位 2位 3位 4位 5位
2001年
2006年
縁、苦(同率)


1位を比較すると『苦』と『楽』で正反対に思えますが、『楽』は楽しめたという意味であり、実際楽な就職活動をしている人は少なく、現在もまだかなりの学生が就職活動を続けています。

学生がそのような活動をしている間に、団塊世代の一部は中国に行き、日本企業が長い期間をかけて会得した、貴重な知的ノウハウを提供することになります。一方中国の企業は日本から様々なノウハウを学んでいますが、まだ形だけのものとなっております。それは、人件費が安いために人手をかける事で問題が解決しており、従業員一人一人に本当の意味の変革マインドが浸透していないためです。

最近、採用から解雇、退職にいたるまで、雇用のあらゆる場面についてルールを明確にしようとする議論が、厚生労働省の審議会で進められています。その中で、厚労省が示した検討案の一つに、一定の時間を越えて時間外労働をさせた場合の、割増賃金の割増率の見直しがあります。現在の25%以上から50%以上に引き上げるというもので(残業代の引き上げ)、過労死の防止や少子化対策の観点からと説明しています。背景には、人件費の負担がかさめば、企業も長時間の残業は命じなくなるという計算がある様ですが、経営側は反論しており、高収入を得ようと、かえって残業を望む従業員が増えるといっています。同じ仕事でも残業は不要で、時間内ですますことができる従業員もいることから、能力のある人が報われない制度にならないようにすることが肝要といえます。さらに下請けの企業では突発的な注文がある時は納期も急がされ、残業せざるを得ない。労働側は日本の割増率は低すぎるとそれぞれ主張しています。
残業代を上げれば時間外労働は減るか。本当に従業員の利益となるのか。労働とは何か。考えさせられる問題です。

高度経済成長を支えた団塊世代、現在の社会保障制度は団塊世代が支えてくれました。
では、この世代の老後は誰が支えてくれるのか、生まれてからずっと競争の連続だった団塊世代はこれからも戦い続けなければならないのか………。

厚生労働省の白書「労働経済の分析」によると団塊の世代の定年によって、企業は高い労務コストから開放され、10年間累計で88兆円もの剰余が出てくるとの見通しを発表しました。2007年問題は、これまで技術や知識の継承不安など、マイナスの局面ばかり取り上げられてきた中で、団塊世代の定年をプラスにとらえ、その余剰金を若い世代の積極的な採用や雇用拡大に使うことが不可欠となるでしょう。

佐藤 修一(さとう しゅういち)/経営コンサルタント・シニアカウンセラー

住友ビジネスコンサルティング(現 日本総合研究所)にて人事戦略コンサルティングに従事。経営人事に注視し組織欲求と個人欲求の統合を目指す。
※組織変革、人事労務管理、トータル人事システムの構築、能力開発等。
[ アウトプレースメント会社 ]人事コンサルティング事業の構築、求職へのキャリアマッチング、社内カウンセラーの能力開発、スーパーバイザーを担当/
[ 行政機関・大学 ]キャリアカウンセリング、キャリアデザイン、キャリアディベロップメントの講義

[ 資格 ]経営士、経営情報診断士、帳票管理士、監督士、シニアカウンセラー、販売士養成講師、 余暇生活開発士、余暇生活相談員、心理相談員、東京都中高年齢者福祉推進員、東京都アドバイザリースタッフ等
[ 大学/学会等 ]中小企業大学校、千葉工業大学、千葉商科大学、上武大学各講師 国際TA (交流分析)協会名誉会員、日本産業精神保健学会 認定専門職
  • 探究心旺盛なことから、日本でただ一人いる、フロイトの孫弟子に師事し臨床経験からカウンセリング、カルテ、薬等様々に学ぶ
  • 官公庁及び電力会社など公的企業、大手企業を中心にコンサルテーションを実施する
2006.10.02 update

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