シュレッダー事故に思う法則
経営コンサルタント 佐藤 修一
ここ数日間、シュレッダーによる事故が報道されています。
今回は、事故に思う法則についてお伝えしたいと思います。
ご存知とは思いますが、労働災害の発生確率を分析したものとして、米国のハインリッヒ氏がとなえたハインリッヒの法則があります。
これは、一件の重大災害の背景には、29件のかすり傷程度の軽災害があり、その背景には、ケガはないがヒヤッとした300件の体験があるというものです。
ビジネスでは、例えば、1件の大失敗の背景には29件の顧客から寄せられたクレーム、苦情で明らかになった失敗があり、さらにその背景には300件の社員が「しまった」と思っているが、外部からのクレームがないため見逃している。つまり、認識された潜在的失敗が必ず存在することといえます。
失敗の発生率を、致命的な失敗を1、顧客からクレームがくる失敗を29、クレームにはならなかったが、社内の当事者はヒヤッとしたことのある、小さな失敗を300とし、1:29:300の法則と考えます。
問題解決の考え方では、とりわけ、1を発生型(すでに起こって困っている問題)、29を探索型(どうもおかしい、変だ、やりにくいという形で把握される問題)、300を機会開発型(顧客、競争相手など外部環境の変化、企業の内部環境の変化に目を向けて、今後の変化に対応する課題を考える問題)になると思われ、氷山で考えると、海面上(顕在している大きな失敗)1、29の海面下(潜在している様々の小さな失敗)に300が隠れているともいえるでしょう!
さらに大切なことは、社員が失敗だと捉えていない事柄の中にも、顧客の側からみれば失敗と判断される事柄も存在することです。
ある調査によると、不満をもった顧客の96%は企業に対して何もいいません。
顧客は、企業が失敗を感じている以上に、企業の提供物、サービスに対して不満をもっていると考えられます。
人間関係の面から考えると、人間関係が決裂してしまうような大きなトラブルを1とすると、ギクシャクして不仲になってしまうのが29、そして、ヒヤリ・ハットが300ということになります。
300回のヒヤリ・ハットの潜在的な危険をきちんと捉え、その原因を個性の違いやヒューマンリレーション等をふまえて取り除き、29回の軽微な口論や争いを避け、誤解を解いていくことで1の重大なコミュニケーションの決裂には至らないようにしておくことが肝要です。
低迷状況に陥ってしまっている企業に当てはめてみると、やはり、300(日々の小さな失敗―――そのままにしておくと確率的に発生してしまう)を除去しない限り“明日はない?”と考えられます。
経験から、そのような企業の社長は、楽観的で、最悪の場合を想定していなく、社員への思いが伝わっていない。経営管理の基礎を勉強していない。社員は、人のマネばかりして、自分で考えようとする社員が少ない。上司は、部下の能力を公正に判断できない。職場では、汚い場所があっても、誰も見て見ぬ振りをしている。という特徴があります。
この特徴の裏を返せば、成長している企業の特徴になるでしょう!
いかがでしょう?
今回の事故に関して、あるシュレッダーメーカーから、「職場で使用されるものとして考えていたので、幼児に触れられることは、考慮に入れてなかった」とのコメントがありました。しかし、その様にいいきれるでしょうか。“300、29を見過ごした結果、1の重大な事故に至ってしまった”と考えざるをえません。
ハインリッヒの法則は、顧客の不満、クレームをいかに迅速に効率的に察知するということが大切で、それが、顧客の離反を引き起こし、ブランドをキズつけるような重大な失敗を回避するだけでなく、顧客の不満足を満足に変え、顧客維持率を高める上で大変重要なポイントだということが理解できます。
これは、営業マンの営業成績にも当てはまり、1件の契約を成立させるためには、300件の見込み客の開拓と29件の契約を前提とした商談中の顧客が必要と考えられます。
自分の周りの出来事や職場での問題点を、ハインリッヒの法則に当てはめて検証してみると、今まで気づかなかった視点から問題解決の糸口が発見されてくることでしょう。